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ソラと異国と綺麗な魔法  作者: みんみん
第一章 ソラと異国と綺麗な魔術
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11.魔法はイメージが大事らしい

 翌日から本格的に魔力調整の訓練が始まった。

 毎日朝から夕方までぶっ通しで続けられ、俺はパストラーレの出す課題を無我夢中で、次から次へとこなしていった。

 初日に使用したガラスボールを少し離れた場所に置き、遠隔で魔力を溜める練習をしたり、ガラス玉を複数用意して上下左右ランダムに置かれた玉の全てに同じスピードで魔力を溜めていくなどもしたりした。

 また、ドーナツ状のガラスの穴の中を、魔力を細く出して通してみたり、それを複数置いて一本の魔力の線でつなぎ通したりもした。これはかなり難しく、線が細くなったり太くなったりせず、同じ太さで魔力を出し続けなければならなくて相当苦労した。

 そして四日後。


「ここまで順調に進んでいるね。さすがだよ、ソラ」


「ありがとうございます」


「さて、今日は新しい課題に挑戦しようと思う。まずは僕がやるから見ていてくれ」


 そう言うと、パストラーレは両手を胸の前に差し出し、魔力を練り始めた。手のひらの上でくるくる回ってこねられていた魔力が、やがて水色がかってきて、胸の前で手を組んでいる二十センチメートルほどの女性が形作られた。

 驚いて口を開けて見つめていると、その女性は閉じていた瞳を開き、おもむろに歌い始める。

 柔らかなメロディー。

 他人に優しくしたくなるような、温かく手を差し伸べたくなるような、そんな歌だった。


「どうだい?」


「……すごい! すごいよ、パストさん!」


「ありがとう、自信作だよ。誰かにこの魔法を披露する時には、いつもこの形にしているんだ」


 パストラーレは愛し気な顔でその魔法の女性を見つめる。


 水でできたような青銀色の光を放ち、腰まで伸びたストレートの髪が川の流れにさざめくように揺れている。まとう衣装も同じ水の素材で、(ひざ)下丈のシンプルなワンピースの(すそ)がひらひらと波打っていた。歌い終わるとその女性は再び目を閉じたが、歌っている時の瞳は吸い込まれてしまいそうなくらいきらめいていた。


「まぁ、これは僕が長年工夫して練り上げてきた形だから、おいそれと他人がまねできるようなものじゃないけどね。こうして、自分のイメージを形づくれるようになるのがひとつ、次にそれが音を出せるようになるのがひとつ、最初は水、土、風、炎、の中から自分の得意な魔法を見つけて作り、次に他の魔法でもできるように練習するのがひとつ、最後に、複数の魔法でいくつもの物を作りだし、合奏させてみるのが目標だな。ここまでになるのは難しいぞ」


「え、そんなこと、ほんとにできるのかな……」


「ははは、これはもう、数年単位で練習していくようなものだよ。やっているうちにだんだん形にもこだわりを持ちたくなってくるし、音もただ出せば良いのではなくて、楽器ならイメージ通りの音、歌なら声質、そして強弱や表現力も出したくなってくる。それを合奏までもっていくのは並大抵の努力ではできないぞ。僕も、まだまだこのイメージに合う他の演奏を作るのは練習している最中なんだ」


「ええっ、パストさんでもまだできてないの?」


「そうだね。同時に複数完成させられるほど、僕は器用ではないし、何より、風はまだマシだけど、土と炎の魔法はあまり得意じゃないんだ」


 頭をかいて苦笑するパストラーレに、俺はもう一度、彼の出した水の精霊のような魔法を見つめた。


「でも、これは本当にすてきだよ」


「うん、ありがとう。これは僕にとって最高傑作だと思っているけど、僕もまだまだ修行中の身だということだよ。さぁ、ソラ、きみも何か作りだしてみると良い。はじめは、風か水あたりで、とても単純な形が良いと思うよ。ほとんど丸いものとか、ほとんど四角いものとか。音が出なくても良い。最初は形だけ、まずは想像した物が作れるようになって欲しい。できるかい?」


「うん、やってみる」


 奏楽が両手の中で風をイメージして作りだした丸い物体はサッカーボールであった。床に向かって打ち付けてみると、タン、と跳ね返ってくる。それを膝や胸、つま先やかかとでポンポンと跳ねさせていき、壁に向かって蹴ってみた。跳ね返って戻ってくる魔法のボールは、サッカーボールとは感覚が違って、少しぽよんぽよんとしている感じだった。


「うーん、もうちょっと改良が必要だなぁ」


 ひとりで口をとがらせていると、パストラーレは笑って褒めてくれた。


「いやいや、最初からジャストのイメージどおりに作れる子はいないよ。これだけきちんとしたボールを作れるなら、外で何も持っていない時にボールを出して遊ぶことができるね。良いよ、この魔法」


「そう?」


「うん。それじゃあ、これは後で、ひとりで改良してもらうとして、他のものも作ってみようか。今度は水で。そうだなぁ……何か、水に関係するもので、理想としては、ほんの少しでも音が出せると良いんだけど……」


「水……海、プール、水族館……うーん……」


 奏楽が頭の中でごちゃごちゃと悩みながら魔力を練っていると、なんだか変な形のものができあがってしまった。なんとなく、タツノオトシゴに似ている。口がラッパ状になっていて、そこから「プフゥ」と抜けたような音を出した。


「ありゃ、なんじゃこれ」


 俺の言葉にパストラーレが笑う。


「きちんとイメージしてから作らないと、こういう訳が分からないものができちゃうんだよ。今度はちゃんと頭の中でイメージしてから作ってごらん」


 「うーん」と悩んだ結果。先ほどよりももう少しコミカルな感じでぴょんぴょんと跳ねる、タツノオトシゴを作りだした。口の形がより細く、先端はよりラッパ状になっていて、出てきた音は澄んだトランペットのような音色だった。


「面白いね、ソラの魔法は」


 少しだけ調子の外れた『聖者の行進』を奏でながら頭上をぴょんぴょんと跳ねまわるタツノオトシゴに、俺は思わずにっこりと笑みが出て、パストラーレは手を打って楽しんでくれる。


「図鑑とか見ながら細部まで作り上げたいなぁ。これ、部屋で練習しても良いですか?」


「それはとても良いアイデアだよ。ただこの部屋でならどの魔法も、何の影響力もないけど、普通の部屋で練習すると失敗した時に、水なら辺りをびしょ濡れにするし、炎なら周囲を燃やしてしまうから気をつけてね。風ならその辺の物を倒したり少し傷つけたりする程度だから片付ければ良いし、土ならシートを敷いておいて掃除をすれば良いだけだから、部屋で練習するなら風か土にしてね。あとは、テラスや庭で練習すると、炎以外はたいして問題にならない。大切なのは、きちんと制御できるようになるまでは、炎はこの部屋以外では操らないってこと。良いね?」


「はい、分かりました」


「それでね、もし可能であれば……なんだけど」


 パストラーレが気まずげにこちらに視線を投げかけてきた。怪訝(けげん)に思って首を傾げてみると、彼は苦笑して言葉をつなげた。


「この魔法……マドリガーレがとても得意なんだ。彼女は元々の総魔力が高い上に、各種の魔法力も全般的に平均して扱える。その才能に加えて、彼女はとても努力家だ。幼い頃から魔力向上と調整の仕方を、徹底的に高めてきたからね」

幼い頃に魔法が出てくる物語を読んでわくわくした記憶があります。

そんなお話になれていたら良いな。

3話もマーレが出てこなくて寂しかったです!(私が)

次話はようやくマーレが出てきます、嬉しいな。(私が)


次回更新は3月26日(月)です。

皆様、良い週末をお過ごしください。

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