プロローグ
本日、人物紹介とプロローグ、第1話、の合計3つを更新しています。
このプロローグからお読みください。
「もうすぐブリンちゃんの生誕祭だけど……ねぇ、アリィお姉さま、ソラは今度こそ綺麗って言ってくれるかしら……」
「そうねぇ、言ってくれると良いわね」
「ねぇ、お姉さま、なんか適当に返事していない?」
「そんなこと、ないわよ?」
「そうかしら……真剣に答えてもらえていない気がするわ」
「そう感じるの……では、そうね、本音を言わせてもらえば、マーレはまず、鼻を高く見せるような化粧を研究した方が良いわねぇ」
「ち、ちょっと待ってよ、お姉さま、鼻は関係ないでしょ?」
「そんなことないと思うわ。あなたの鼻が小さくて、少し低いから童顔に見えてしまって、“美人”というよりは“可愛い”という表現になってしまうのではないかしら。だったら『可愛い』と言われたって仕方ないと思うのよ。でも……ちょっと考えてみて。ソラだってあなたのこと、何度も『可愛い』って褒めてくれたでしょ? あんなに一生懸命に顔を赤くして頑張って褒めてくれるのに、それで満足しないのなら、あなたは自分の容姿を変える努力をする必要があるのじゃないかしら?」
「そ、そんな……お姉さま……」
「あなたはソラが大好きでしょう? ソラだってあなたのこと大好きだと思うわ。しかも女の子を褒めるなんて経験などないって、ララ伯母さまが笑いながらおっしゃっていたわ。そんな彼があんなに褒めてくれるのだから、それ以上望むのは贅沢よ、って思うの」
「そ……そうなのかしら……」
「それより、あなたの方もソラを褒めてあげるよう努力をした方が良いのではないかしら。夏に、彼の日本での私服を見たでしょう? 普段あんなに楽そうな格好をしているのに、こちらでの夜会であれほど窮屈な服装を身に着けるのだから、とても頑張っているはずよ。それこそ、いっぱい褒めてあげれば良いのに。自分ばかり受け取ることをねだらずに、相手にも与えてこそのパートナーよ」
「そうね……確かにそうだわね……その通りだわ。私、自分が褒めてもらうことばかり考えていたわ。ソラを褒めることなんて考えてもみなかった。気付かせてくれてありがとう、お姉さま! 私、頑張るわ! それでは、また後でね!」
「……お疲れ様、アリィ」
「まぁ、お父さま、レーヴォ伯父さま、見ていらしたの?」
「ああ。マーレはまだまだ子供だな。夏のマーレの誕生日会でも綺麗な服装を着てご満悦だったし、立ち居振る舞いはずいぶんと洗練されてきたけれど、やはり言動がどこかしらまだ子供っぽいと感じてしまう」
「それを言うなら奏楽の方こそまだまだ子供だよ。あと数日でようやく十六歳だ。この寒いのに自宅のリビングで腹を出して寝ていて蘭々に叱られたり、麗美に抱き着いて嫌がられて落ち込んだりしているよ」
「いやいや、マーレこそ、学校で他者と違うおかしな言動があるとか、いつまでも落ち着かない粗忽さがあると先生から言われてしまっているんだよ」
「そんなことを言ったら奏楽だって、学校の先生から、よくぼうっとしているとか忘れ物が多いとか言われているんだよ」
「でもマーレだって……」
「ねぇ、お父さま、レーヴォ伯父さま、その辺になさったら? マーレやソラが聞いたら気を悪くするわよ」
「いや、でも、本当のことさ」
「そうだな、事実を話しているだけだ」
「ええ、そうなのかも知れないわね。でも、言わずに済むのなら言わない方が、ふたりとも素直に笑顔を見せてくれると思うわよ。子供に疎まれる父親なんて寂しいでしょう?」
「まぁ、そう言われてみればそうだな」
「アリィは大人だな……そう言えば、もう結婚したんだった。我が娘でありながら、もう子供ではないんだったなぁ」
「アル、寂しいかい?」
「そうだな。でもレーヴォ兄さんもすぐにそうなるさ。ソラが結婚すれば」
「その時はマーレも嫁に行くんだぞ」
「……寂しいな」
「そうだなぁ。でも、まだまだ先の話だ」
「確かにまだ先の話だ。彼らが大人になるのはもう少し先だ。できるだけ長くそうであって欲しいな」
「ああ、そうだな」
「でも、子供が育つのはあっという間だ。すぐに大人になってしまうのだろうな」
「そうだろうな……なんだか寂しくなってきた……」
「まぁ、お父さま、レーヴォ伯父さま。今度は一転して子供ロスですか?」
「アリィ、笑わないでくれよ」
「そうだよ、もう少しだけ子供が親離れしないで欲しいと思ったって良いだろう?」
「大丈夫ですよ、おふたりとも。マーレもソラも、まだそんなに早くは飛び立ちませんよ」
「そうだと良いな……」
「そうだな……もう少しだけ、親の羽の下にいて欲しいな……」
引き続き第1話をお楽しみください。




