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異世界征服物語  作者: COCO
第二章 道中編
14/23

#14 野心と忠誠

移動2日目の朝である。


人間領において、中央から辺境まで大きな街道が整備されている。

宿場町が街道沿いに形成されており、そこに泊まりながら、みな街道を行き来するのだ。


セーマたちも今日の宿泊予定の宿場町まで移動しなければならない。

みな出発の準備で忙しそうだった。


そしてここは、セーマの部屋。

セーマとシルビアも出発の準備をしていた。


「セーマさま、これをお召しください」

「セーマさま、サイズは大丈夫ですか?」

「セーマさま、お腹は空いてませんか?」

「セーマさま、お顔は洗いましたか?」


などなど、朝からシルビアはセーマの世話を嬉々としてこなしていた。


完全に世話女房である。


セーマもセーマで、シルビアと目が合えば、キスをし、側に寄れば、身体を撫で回した。

昨日あれからも抱き続け、朝起きてからも1度抱いていた。

一度抱けば、しばらくはスッキリしているのだが、30分も経たないうちにセーマの性欲は元に戻ってしまう。

しかももうすぐ部屋を出なければならない。

そうなれば、また2人きりになれるまで、こうできなくなるのだ。

そう考えると否が応にも性欲が高まってしまう。

セーマは、出発のため着替えを始めたシルビアを後ろから抱きしめた。


「だめですよ。あと少しで集合時間なんですから・・・」


シルビアは、口ではセーマを拒否した。

しかし身体の方は全く無抵抗で、セーマに為されるがままだった。


拒絶されてないとわかると、セーマはさらに大胆になった。

キスをし、そのままベッドに一緒に倒れこんだ。


「シルビア、我慢できない・・・」


「もう、朝はこれで最後ですよ」


ベッドに寝かされ、右手でセーマの頬をなでるシルビア。


それを合図にセーマはシルビアを貪りだした・・・





集合時間ギリギリにセーマとシルビアは、集合場所にバタバタと駆け込んだ。


シルビアは魔導士のあのフード付きコートを着ず、白いブラウスにジャケットを着、スカートをはいて髪を結い上げていた。

22歳の女性としては普通の格好である。

しかし、彼女が着ると普通では済まないのだ。

その豊満な胸、しまった腰、大きなお尻。

身体の線がそのまま現れてしまう。

顔もかわいく、ちらっと覗いたうなじもセクシーである。

まるで彼女は、一夜にして、別人に生まれ変わったようであった。

この突然の変化に周囲の人たちは一様に驚いたが、隣にいるのがセーマだとわかると何もいわなかった。


誰もが《昨晩なんかあったな》と、わかったからだ。


スカーレットもそれを見ていた。

当然彼女も2人が怪しいと感づいた。

なんだか心の底からもやもやした気持ちが湧きあがってくる。

そのあたりは女の子である。


ちなみにイワンの配慮で、シルビアとグロリアがセーマの夜の警護係であることはスカーレットには伏せられていた。


(なんだ、あの魔導士は!魔導士の服も着ないで、あんな服を着て!いやらしい!)


服装の規定として、魔導士が必ず魔導着を着なければいけないという決まりはない。

なぜ着るかといえば、それで魔導士とわかるからである。

丁度、セーマの元いた世界で、理系の人間が白衣を着るようなもんである。


そして今のシルビアの服装は、女性の仕事着としてはいたってノーマルなものである。


しかし、急に女っぽくなり、セーマと手をつないで歩くシルビアを見るとムカムカくるのだった・・・



そしてその変化に注目する人物がもうひとりいた。


エリックである。


(フッ、計算ど~うり!あの頑なだったシルビアのあの変わりよう!男の味を覚えたメスそのものだ!これは思った以上に落としやすくなったわ!丁度、今晩はセーマの相手はグロリアで、シルビアはあの火照った身体で一晩、男なしで過ごさなくちゃならない。こりゃ、ちょっと甘い香りをかがせれば簡単に落ちるわ!)


そう考えるとエリックの下半身はこれまでにないほど膨張していた。


(策も練ってある。彼女は必ず乗ってくる!断るはずがない!)


そう確信すると、魔導通信を使い、次の宿場町の高級宿で1番見晴らしのいい部屋を予約するのだった。





セーマ、シルビアは馬車に乗り込んだ。

すでに、エリック、グロリアは乗り込んでいた。


まず、エリックがシルビアの変わり様に驚いた。


「おいおい、一晩で変わりすぎじゃないかい?シルビア」


「別に~。これただのオフィス着ですよ~。ね~セーマさま~」


そういうとシルビアは隣のセーマの腕に絡みつく。


「そうか?雰囲気が見違えったぞ!なあ、グロリア!」


エリックがグロリアに話を振る。


「ええ、私も、明日から別の服にしようかしら?」


そういいながら、静かに微笑んだ。



セーマ&シルビア(明らかにおかしい)



いつものグロリアなら、エリックなど無視して、速射砲のようにシルビアに文句を叩きつけているだろう。

シルビアへの対抗意識はハンパではないのだ。


・昨日セーマと寝てる。

・朝からセーマとベタベタ。

・服装まで変えて、他の男たちへも女をアピール。


(これだけやって、あんな薄い反応?ありえない!)


シルビアはグロリアの反応から、セーマの勘が正しいと確信したのだった。





馬車は予定どおりに進んだ。

今日は昨日のように襲撃されることもなく、ここまで順調である。

シルビアは昼休憩のときを見計らってグロリアに接近した。


「ねえ、グロリア、昨日はありがとう。あなたの言ったとおりにやったら、セーマさま、すごく喜んでくれたわ」


シルビアはグロリアにこっそり打ち明けた。


「え?ええ?なんのこと」


すっとぼけるグロリア。


「なんのことって・・・。セーマさまの夜のお相手のことよ。あなたに言われた裸にエプロン、あれやったらすごく喜んでくれたのよ!今晩はあなたの番よ。当然あなたもやるんでしょう?」


「そ、そうだったわね。そうなんだ、そんなに喜んでくれたんだ。ならあたしも頑張らなくちゃ!」


「じゃあ、がんばってね」


そういうとそそくさとシルビアは去っていった。



シルビアが完全に立ち去ったのを確認し、周りに人気がないことを確認してから、グロリアは笑い出した。


(ふっふっふっ、こりゃ手間が省けたわい。どうやって奴に怪しまれずに近づこうか考えとったところだが・・・。術をかけるに最高の状況をあっちから用意してくれるなんて)


そう考えるのはグロリアである。

いや、正確に言えばグロリアの中の別人の意識である。

グロリアの意識は別の男に乗っ取られていた。


乗っ取っているのは、十三人会よりセーマの暗殺を依頼された男、アルゴンゾである。


彼は、アル・アーシェフと名乗り、グロリアに近づき彼女を手なずけていた。

そして、彼女の心の隙をついて意識を乗っ取ったのだ。


アルゴンゾの得意とする魔術は、幻覚、マインドコントロールである。

相手を、何らかの方法(お香、ドラッグ、SEXなど)で、トランス状態におき、術にかかりやすくしてから、相手の意識の中に入り込み、幻覚を見せたり、相手をコントロールするのが得意である。

特に女性を操り、ハニートラップを仕掛け、行為中に隙を見て相手を殺す手法は、アルゴンゾの十八番おはこであった。


(奴は、昨日の戦いぶりからして、武器を持つ者に対して、異常に防御本能が働くと見た。だから、奴の近くで武器類は一切持てない。そうなると、ここは裸の女の姿で近づき、油断させ、我が必殺のマインドバニッシュメントと喰らわすしかない!)


恐らくグロリアは《かっこいい彼氏が欲しい》という願望が心の隙間となり、そこに付け入られたのだろう。


(見ておれ、十三人会の若造どもめ。わしがあの化け物を始末するところを!)


アルゴンゾは、グロリアの意識の中で、大声で笑っていた。





ここは、昼休憩のために立ち寄った茶屋の別室。

スカーレット、イワンが食事をしていた。

そこへエリックとセーマが来訪したのだ。


「殿下、突然ですがセーマ殿をお連れしました。まだ正式なご挨拶ができてなかったとのことで、心苦しく思っていたとの。その胸中を察し、突然の失礼を承知の上でお連れいたしました。どうか殿下、広い心でお許し下さいますよう、心より御願い奉りまする」


エリックが、言葉丁寧にスカーレットがセーマと面会することを要求してきた。


突然のことに急に顔が赤くなるスカーレット。


イワンが席を立ち、エリックを叱責しようとした瞬間、スカーレットの静止が入った。


「わかった。私も、セーマ殿に少し尋ねたいことがあったのだ。目通りを許す」


その言葉に驚くイワン。


「殿下、大丈夫なのですか?」


「いずれは会わねばならないと思っていた。いい機会だ」


そういうとイワンは一礼し後ろに下がった。


そして、エリックに促され、セーマがスカーレットの前に現れた。


一礼し跪き、臣下の礼をとる。


「セーマ・ジュウモンジと申します。殿下に拝謁の栄を賜り恐悦至極です。これからはセーマとお呼び下さい。殿下の恩為とあらば、このセーマどんな苦労も厭いませぬ」


これにはエリック、イワン、スカーレットの全員が驚いた。

セーマは賓客の待遇で中央へ向かっているのだ。

現在の立場は、名目的には護衛隊長のスカーレットは客人のセーマより下であるはずなのだ。

そのセーマがスカーレッットに臣下の礼をとったのだ。


これは、この稀代の英雄を味方につけたということなのである。


王位継承競争の真っ只中のスカーレット陣営にとって、これ以上にない援軍なのだ。


「そ、それは、今後もスカーレットさまに忠誠を尽くして下さるという意味ですかな?」


イワンがセーマに訊ねる。


「そう取ってもらって構いません」


そういうとセーマはスカーレットに微笑んだ。


それを見た瞬間、赤くなるスカーレット。


「セ、セーマ殿、貴公の忠誠、真にかたじけなく思います。しかし、わたしは側室の娘で継承権第3位、しかも今は亡き母アグライアは、魔族と通じていたと、あらぬ噂と立てらるような女です。そんなわたしについても、報われるとは限りませんよ」


スカーレットはセーマに正直に現状を語った。

セーマのストレートな忠誠の表明に戸惑ったのだ。


(そんな気弱なことを言われては困る。せっかく強力な味方が手に入ろうとしているのに!)


イワンは、スカーレットにそれ以上弱気な発言をしないよう注意しようとした。


が、それより早くセーマがそれに返答した。



「そんなことは問題ではありません。なぜなら私が殿下を気に入ったからです。殿下、やるなら必ず勝ちましょう」



そういってまたセーマはスカーレットに微笑んだ。


次の瞬間、部屋の外で物音がした。

数名の隊員が戸口から倒れこんできたのだ。

みんな部屋の会話を盗み聞きしていたのだ。


「こら、盗み聞きするやつがあるか!」


イワンが隊員たちに一喝する。


しかし、みんな一様に喜んでいた。

部屋の外では、隊員たちが万歳をしている。


あのセーマが味方してくれるなら、スカーレットは勝つ!


みんながそう思ったのだ。

なんだか、いつの間にか、みんな泣いていた。

エリックもイワンもスカーレットも隊員たちも。

うれし涙が伝染していた。


(面白くなってきた。面白くなってきたぞ!このまままともに進めば、順位の差をひっくり返せず、殿下は負けると思っていた。だがこれで全くわからなくなった。セーマを辺境から連れ出して正解だった!)


エリックは自分の目に間違いがなかったことが、素直にうれしかった。


(セーマ、お前はどこまで俺を楽しませてくれるんだ・・・)


エリックは、自分がだんだんセーマに魅了されてきていることにまだ気づいていなかった・・・





「セーマ殿、ちょっと・・・」


みんなが盛り上がっている隙に、スカーレットはセーマに話しかけた。


スカーレットは、ようやく、倒れることもなく、赤面してまともに話せなくなることもなくなった。


「内密に聞きたいことがあるのだが、いいかな?」


「はあ、どんなことでしょうか?」


「ここではちょっと言えないんだ。次の宿泊所に着いたら、そなたの部屋に行ってもいいだろうか?」


「別に構いませんよ」


「そ、そうか!わかった!ではまた!」


そういうとうれしそうにその場をはなれた。


あの話は、イワンには口止めされている。


彼のそばでその話はできなかったのだ。


(これであのモヤモヤを消せるかもしれない)


そう思いつつ、また後でセーマに会えることがうれしくてたまらないスカーレットだった。





昼休憩も終わり、セーマは馬車へと戻ろうとしていた。

するとシルビアが話しかけてきた。


「セーマさま、おいいつけどおり、グロリアちゃんにいっときましたよ」


そういって微笑むシルビア。


「ありがとう。で、もうひとつのほうは?」


「それも、知り合いの魔導士に頼みました。丁度旦那さまを追って、この近くに来ていたとのことで、2つ返事でOKしてくれました」


「そう、で、君はどの辺に潜んでいると思う?」


「わたしもセーマさまと同じ考えです。時間的に最初の宿場町のどこかの宿が怪しいです」


「はやく捜さないと。グロリアが危ない・・・」


セーマの顔には少し焦りの色が見えた。





「シルビア」


エリックがシルビアを呼び止める。


「エリック、なにか用?」


「今日はセーマ殿の当番じゃないだろ?飲まないか?」


「結構です。今日は気になることがあるので、そんな気分じゃないんです」


「気になることってのは、グロリアのことかい?」


「まあ、そういうことです・・・」


少し元気なく応えるシルビア。


「あいつもいい女だからな。セーマ殿がうらやましいぜ」


そういうエリックをキッと睨みつけるシルビア。


「そんな怖い顔するなよ。本当は君にひとつ有益な提案をしに来たんだ」


「提案?」


「今晩2人で、セーマ殿とグロリアを監視しないか?」


2人でセーマの部屋を覗こうとの提案である。

さすがにちょっと強引だったかなと、今になって思うエリックだった。

だが、シルビアを一夜でここまで変えたセーマである。

そのセーマが、今晩は別の女性と一緒なのだ。


シルビアははたしてそれを許せるのか?


それを考えると、エリック的にはシルビアはそれを許せずこの自分の提案に乗ってくるだろう、と考えてしまうのだ。


「いいですよ」


「えっ?」


「だから、いいですよ。今晩一緒に監視しましょう」


シルビアが、エリック待望の返事をしてきた。


(キターーーーーーーーーーー)


内心、狂喜乱舞のエリック。


(ついにシルビアを落とす日が来た!このチャンス、絶対モノにするぜ!)


内心、ガッツポーズで涙を流すエリック。


これまで何度のなく振られ続けたシルビアから、やっとチャンスがもらえたのである。


興奮するのも無理はなかった・・・




こうして、様々な人々の想いが交錯する中、2日目の夜が始まろうとしていた・・・



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