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異世界征服物語  作者: COCO
第二章 道中編
12/23

#12 スカーレット

セーマはエリックを伴ってイワンを訪ねた。

スカーレットにまだキチンと挨拶をしてないので、取次ぎをお願いしに来たのだ。

イワンもそのことを気にしていた。

だが、スカーレットが、今、まともにセーマと接せられるかどうかわからない。

キチンと準備して対面させないと、またヘナヘナ倒れられてしまう。

イワンが彼女の部屋に行って、この件をどうするか訊ねたが


「今は困る」


この一言のみであった。

仕方なくセーマには「朝から多忙を極め疲れたゆえ、今日これからは無理」と伝え、帰ってもらうことにした。

本来なら、このようなときは「無理をしてでも会わなければならない」といさめなければならないところである。

だが、スカーレットの守り役として幼少時より仕え、その成長を見守ってきたイワンには、彼女が今どんな心境か手に取るようにわかった。

そのため、無理に会わせる訳には行かなかった。


イワンは、彼女が不憫ふびんでならなかった。

元々彼女は、こんな騎士の真似事などする娘ではなかった。

だが、2年前のあの日を境に彼女を取り巻く環境は一変した。


そう、あの日、彼女の母、アグライアが殺害されてから・・・




ここはスカーレットの部屋。

彼女は今、ベッドに横になり、あの時のあの男のことを思い出していた。


(やっぱり似ている、セーマ殿に)


あの顔、あの声、あの後姿、忘れるわけがない。

何度思い返しても、セーマにしかみえない。

今朝、会った時から、ずっと思っていた。


(あの時、私たちを救ってくれたのはセーマ殿だ)


その想いがどんどんスカーレットの中で大きくなっていった。





2年前、スカーレットは母アグライアとともに視察のため、辺境地区を廻っていた。

護衛としてイワンも同行していた。

視察とは名ばかりで、実質、母子での旅行であった。

父である国王アーサーは仕事があり、王太子であるリチャードは病弱で出歩けない。

周囲の目もあり、国王や王太子を置き去りに遊び歩くことなどできぬ。

そのため王宮に閉じこもりっぱなしのアグライアとスカーレットにアーサーが、気を利かせたのだ。


だが、本当はどうもそれだけではなかった。


アグライアはどうやらひとつだけ、アーサーからの頼みごとを聞いていたようだった。


なにを頼まれたのかは、スカーレットもイワンも知らない。

だが、恐らくそれが事件の発端となったのであろう。


あの日の夜、突然アグライアが


「あなたの遠い親戚にあたる方々とお会いしに行きましょう」


そういって、スカーレットを宿から連れ出そうとした。


それが普通でないことがスカーレットにはすぐにわかった。

いつもなら必ずイワンが側にいるはずなのに、それがないからだ。


「お母様、イワンは来ないの?」


そう聞くスカーレット。


「2人だけで行くのよ、お父様のご命令なの」


父の名前を持ち出されると、スカーレットは従わざろうえない。


仕方なく、母に連れられ外に出るスカーレット。


2人は宿場町の外れの屋敷に入っていった。


そこの屋敷は人気ひとけがなく、母がいなければ、とてもじゃないが、スカーレットが入れるところではなかった。


その屋敷の2階に上がると、一部屋から明かりがこぼれていた。


アグライアは事前にわかっていたようで、部屋をノックし名前を告げると、スカーレットを連れ、部屋に入った。


中には、40歳前後の、肌の浅黒い、だが、凛とした落ち着きのある男と、同じく肌の浅黒い、自分と同じ位の歳の女の子がいた。


「はじめまして、このたび、こちらの招きに応じて下さり、感謝の念にたえません」


そういうとその男はアグライアに最敬礼した。


「こちらこそ、きちんとお約束をお守り下さり、ありがとうございます」


そういうとアグライアも最敬礼した。


「ここでしばらく歓談したいところですが、お互いそうもいきませんな。さっそく本題に入りましょう」


そういうと、アグライアとその男は、スカーレットとその女の子を、隣の部屋に移動させ、話が済むまで待っているように命じた。


隣の部屋から声が聞こえる・・・


「こんなことを公表して本当に大丈夫なのでしょうか?・・・」


「しかし、そうせねば、お互いの憎しみは増すばかり・・・どこかで断ち切らねば・・・」



一体なにを話しているのだろう。

スカーレットには全くわからなかった。

ふと振り返ると、その女の子と目が合った。

スカーレットを見て微笑む。


「はじめまして、あたしスカーレット、あなたは?」


「あたしはリリスよ」


そう名乗る彼女にスカーレットはまた質問をした。


「あの男の方は?」


「父上なの。王様なのよ。偉いのよ!」


そう誇らしげに答えるリリス。


「へぇ~そうなんだ。あたしの父上も国王なのよ」


そう答えるスカーレット。


「じゃあ、一緒だね!」


「ね!」


2人はあっという間に意気投合した。


それから短い間だが、2人は色々と身の回りのことを話し合った。


お互い王女という立場、同じ悩みを抱えていたのだ。


時間が瞬く間に過ぎていく。


だが、その時間も突然の物音であっけなく終了してしまう。


隣の部屋が襲撃されたのだ。





隣の部屋から声が聞こえた。


「奥方、早くお逃げに・・・」


リリスの父の大きな声が突然し、途絶えた。


「スカーレット、逃げて!」


アグライアの叫び声が聞こえた。


だがそれ以上の声はしなかった。


一瞬、静まる屋敷。


スカーレットとリリスは突然の出来事に動転していた。


だが、本能的にわかった。

自分たちが今、命の危機に晒されていることを。


突然、スカーレットたちがいる部屋のドアが開いた。


「いたぞ」


そういいながら、覆面をした剣士、魔導士らしき暗殺者たちがゾロゾロ入ってきた。

恐らく、部屋の外にはまだ大勢いるのだろう。


「恨みはないが、死んでもらう」


そういうと、先頭の剣士がすぐさま剣を振りかぶる。


あまりの恐怖に身動きできないスカーレット。


だが、リリスは違った。


気丈にも、腰の短剣を抜き剣士に挑もうとした。


「よくも父上を」


目の涙を堪え、剣士を睨みつけるリリス。


だが、剣士のひと蹴りで、吹っ飛ぶ。


「リリスちゃん!」


スカーレットが叫ぶ。


床に転がり、身動きできないリリス。


そんなリリスに、無言で近づき止めを刺そうとする剣士。


剣を振りかぶり、リリスを斬ろうとした瞬間、リリスもスカーレットも目を背けた。



だが一向に何も起こらない。



「ばたっ」



何かが倒れる音がした。


恐る恐る目を開け、前を見るスカーレットとリリス。


そこには真っ二つに切り倒された剣士と、剣を片手に、2人を背に、暗殺者たちと対峙するひとりの黒髪の剣士の姿があった。



「弱いものイジメとは許せないな・・・」



その黒髪の剣士がボソッと呟く。


暗殺者たちが一斉に、黒髪の剣士に襲い掛かる。


だが、次の瞬間、スカーレットもリリスも信じられない光景を目の当たりにする。


暗殺者らが血しぶきをあげ、刻まれた身体が左右に散っていくのだ。


飛び散った肉片が、部屋の壁にべたべた張り付く。


彼らは一方的に刻まれていった。


全く、抵抗もせず。


見ている側にはそのようにしか見えなかった。


だが、実際は、黒髪の剣士が早すぎて全く反応できていないのだ。


彼らは、ほとんど気づくこともできずに、刻まれていたのだ。


あっという間に、部屋に入ってきた暗殺者たちは切り刻まれた。


それが済むと、黒髪の剣士は部屋を出ていった。


そして、数分もしないうちに、部屋に戻ってきた。



「大丈夫?」



そういうと、黒髪の剣士は、スカーレットとリリスに微笑みかけた。


その顔を見た瞬間、突然の恐怖から開放された2人は、彼に抱きつき泣きじゃくった。


黒髪の剣士は2人を抱きしめ、落ち着くよう、やさしく背中をさすった。


しばらくすると、外があわただしくなった。


異変に気づいたイワンたちが駆けつけてきたのだ。


すると黒髪の剣士は


「もう大丈夫だよ」


そういい、2人を放した。


「僕はそろそろ行かなきゃいけないみたいだ。頭の中でうるさくてね」


そういいながら笑う黒髪の剣士。


「それじゃあね。元気を出してね。2人とも」


そういうと光の粒と化し、消えてしまった。


その光景を2人はずっと見ていた。


最後、彼が一体なにを言っていたのかはわからない。


だが、2人にとってこの出来事はまぎれもない真実だった。





スカーレットはその後、イワンに保護され、リリスと分かれた。

リリスとはそれっきりだった。

次にリリスの名前を聞いたのは、しばらく後のことだ。

魔界の王たる、パンツァークロウ王国の王、アダムス・パンツァークロウが謎の死を遂げ、その後を継いだのが、スカーレットと同じ15歳の少女、というニュースであった。



その名をリリス・パンツァークロウ



そのかわいらしさで、たちまち魔界のアイドルとなったらしい。



聖パンゲア王国としても、この件は大事件だった、はずだった。

だが、実際には、アグライアは視察中の事故死とされ、イワンも護衛しきれなかったとして責任をとらされ降格。

更に自身の領地も一部、王国に返却せざろうえなかった。※


※イワンは王国の貴族であり、有力諸侯のひとりでもある。スカーレットの外戚で、後ろ盾である。



あの時、死んだ男は、魔界の先王アダムス、一緒にいた女の子は、現女王リリス、そしてあの時、アダムスと母アグライアが何事かについて話し合っていたこと、これら全てを、スカーレットはイワンに問いただしたことがある。

だが、イワンはそれについてはなにも答えなかった。

それどころか、その件に関しては、2度と触れてはいけないとさとされたのだった。

こうして、あの事件は闇へと葬られた。


そして、ここからスカーレットの茨の道が始まったのだった。





この件で、スカーレット、リチャードの後ろ盾であるイワンの力が大きく削がれてしまい、王太子の母たるアグライアも死んでしまった。

これに乗じて、正室であるエリザベスの母ロザンナが、勢いを増したのだ。

ロザンナが男子を生まなかったために、側室であるアグライアの生んだ男子、リチャードが王太子として遇されていた。


だが、どこから流れたのか、アグライアは魔族と通じていたという噂が王宮中を駆け巡った。


王国は、建前上は、魔族とは、攻められない限り交戦しない、ということになっている。

それは魔族側も同じで、お互い不可侵というのが、大昔からの暗黙の了解であった。

だが、魔族を嫌悪する気持ちはどの人にもあり、魔族討伐すべし、と内心思っている人も少なからずいた。


この噂は、そういった人々の心を煽った。


そのような母親から生まれた男子を、王太子としてたてまつるのはいかがなものか?


そんな考えが人々の心に芽生えた。

そうなると、イワン側についていた諸侯も徐々に離反していった。


《王太子を廃嫡し、王位継承権第二位のエリザベズ殿下に婿をとらせ、女王として王座につかせる》


そんな考えを持つ諸侯が増えていった。


(このままでは、リチャードが王位につけない)


そうスカーレットは思った。


だが、あの事件に関しては、何か知っているはずの父王アーサーもイワンも、何も語らない。

2人の助けは得られない。

当のリチャードはまだ5歳。

しかも病弱で、外にもなかなか出れない状態だ。

そうなると残る手段はひとつ。



(あたしが頑張るしかない)



スカーレットは頭をひねった。





ある日、王宮の中庭。

ここはアグライアがお気に入りの場所でもあった。

そこでスカーレットは、イワンにこう言った。


「イワン、あたし、騎士になる。武勲を立てて、弟を守りたいの」


スカーレットのいうことをイワンはすぐに理解した。

自分も王位継承競争に名乗りを上げようということを。

王位は継承順位だけで決まるものではない。

王たる資格を持った者に決まるのである。

その資格とは、様々である。

武力、財力、人気などなど、目に見えるもの見えないもの、あらゆるものが優ったものが勝つのである。


そのために自ら騎士となり、武勲を立ててエリザベスに対抗しようというのだ。

イワンの力が落ち、リチャードをすんなり王位につけられるか怪しい現在、王女たるスカーレットが騎士として活躍してくれれば、どれほどの援軍となるか。

母親似の美人と評判のスカーレットである、国中の注目の的になるのは間違いない。

それは、王室がただの飾りのように扱われている現状にも、明るい希望となろう。

そして、スカーレットが頑張る限り、エリザベスは王位につけない。

それは弟リチャードの王位を守ることにもなるのだ。


「ダメ?やっぱり無理かな?」


そんなイワンの思いをよそに、不安を吐露するスカーレット。


その顔が、幼き日のアグライアと被る。


アグライアはイワンの従兄妹であり、彼にとっては妹同然であった。


遥かな昔、彼女と将来を約束した日が、イワンの脳裏に蘇る。


イワンは無意識にスカーレットを抱きしめていた。


「そんなことはありません。すばらしいお考えです!このイワン、どこまでも、殿下に付いていきますぞ!」


「ちょ、イワン、苦しいよ」


その言葉で、スカーレットを放すイワン。


だが今度はスカーレットの両肩を軽く持ち、言う。


「わかりました。このイワン、全力で殿下のために精鋭騎士団を作って見せますぞ。国中から精鋭を集め、殿下が武勲をお立てなるのをお手伝いいたします」


その言葉を聞いて、急に明るい顔をするスカーレット。


その顔がまたアグライアと被ってみえるイワン。


再びスカーレットを抱きしめる。


少し痛いが、自分が愛されているとわかるので、スカーレットは我慢した。


少しして、イワンはスカーレットを放し、話を続けた。


「殿下、必ずエリザベス殿下に勝ちましょう」


「うん」


「そうと決まれば、さっそく明日からトレーニング開始です。朝6時からランニングですぞ」






「え~~~~~。そんなのムリ~~~~~~」






「殿下~~~~~。そんなんじゃ、武勲なんてムリですぞ~~~~」



さっそく泣きが入るイワン。


2人の行く先は険しい。


しかし、もう後戻りはできない。



これが後のスカーレット隊誕生の瞬間だった・・・・


登場人物紹介


アーサー

T172

聖パンゲア王国、現国王。

スカーレット、エリザベス、リチャードの父親。

正室がロザンナ、側室がアグライア。

イワンとは年齢が近く、幼馴染でもある。

アグライアを取り合った。

政略上、やむを得ず彼女を正室にできなかったことを悔やんでいた。


リチャード

7歳

聖パンゲア王国の王太子

アグライアの生んだ長男。

スカーレットの実弟。

病弱だが、前に比べて、だいぶ元気になってきた。

姉であるスカーレットが大好き。

今の彼にとって、スカーレットは母親同然なのだろう。

彼女の風呂にもベッドにもすぐ潜り込んでくる。

やんちゃ盛りの坊やである。


アグライア

T160

スカーレット、リチャードの母。

アーサーの側室。

イワンの従兄妹であり、妹のような存在だった。

彼と将来を約束していたが、貴族の娘としての運命を受け入れ、アーサーの元に嫁いだ。

今回の会談に、アーサーの名代として出席するも、突然の凶事に命を落とす。


ロザンナ

T156

エリザベスの母。

アーサーの正室。

王国有数の貴族の娘。

そのため、アグライアより上の正室の座につく。

しかし実際には自分よりアグライアの方が愛されていたことに気づいており、そのことで傷ついている。

ただ、そのことでエリザベスがスカーレットと争っていることを快く思っていない。

彼女もまた、貴族の娘としての運命を受け入れただけなのだ。


エリザベス

T165 B88(Ecup) W57 H90 19歳

ロザンナの長女。

スカーレットの腹違いの姉。

王位継承権第二位。

典型的な高飛車お嬢様。

王女としての生活に飽き飽きしている。

王位継承も、彼女の取り巻きが必死になってるだけで、彼女自身はどうでもいいと思っている。

ただ、スカーレットをからかうのが面白いだけである。


アダムス・パンツァークロウ

T183

魔界の筆頭国、パンツァークロウ王国の先代国王。

リリスの父親。

突然の凶事に倒れる。

最近の、人間界、魔界双方の対決ムードを苦慮し、双方の存在に関する、とある事実の公表を画策。

その会談を極秘にアーサー王に打診した。

事が重大なため、会談自体も極秘に行わねばならず、お互いを信用するために、国王本人かその名代、そしてお互いの娘を連れてくること、それ以外は誰も連れて来てはいけない、という非常に厳しく危険な条件の上に会談は行われた。

会談はうまくいき、あとは時期を見て公表すれば、情勢は一気に変わるはずだった。

だが、その公表を嫌がるとある組織に嗅ぎ付けられ、あと少しというところで、会談は水泡に帰してしまった。


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