リプロ 2
少女の顔が青ざめていくのを見て、パーシバルは少し間をあけてから言った。
「ひと月前、武器商をしていたリプロが殺された。退役したばかりの仲間をつかまえて銃を売り、おそらくその相手に撃たれたんだと思う。エカートの事件と同一犯の可能性がある」
動機はまだわからない。
パーシバルは独りごとのようにつぶやき、目線をあげた。
「ヴィー、俺は犯人をつきとめに行く」
「それで、見つけたら?」
ヴィーが恐るおそる尋ねる。
「依頼主は君だ。君はどうしたい」
「私、復讐しようと…… 人間だと思ってた」
彼女は呆然として言う。パーシバルが「リプロでは不都合が?」と訊くと、ただ首を横にふった。
武器屋の裏口の番人は、現れた客を冷めた態度で迎えた。
「あんたもラッキーボーイのお仲間だったんですか。なるほど、よく見れば右がぎこちないですねえ」
パーシバルが「代金は払った。情報をくれ」とだけ返すと、彼女は器用に片目を細め、苦いものを噛んだような表情で言った。
「リプロを手下にする組織なんてないです。あんた方は調教も効かないしあつかいづらい、軍でもないかぎりはね」
そう言いながらパーシバルを無遠慮に観察していた女だが、ふいに「ラッキーボーイは“完了”ですね」と口にした。
彼が鋭い視線をむけると、彼女は初めて怯むそぶりを見せた。
「だって、死ぬことをそう言うんでしょう」
「あれは他者による途絶だ。アロンソは完了の権利を奪われた」
きっぱりと返され、女はドアを支えながら肩をすくめる。
「仇を討つつもりですか。再現体にも絆があるって、証明するとでも?」
彼は答えようとしたが、いま抱いた感覚をうまく言葉にすることができなかった。
「……そうなるのだろうか」
見つめられた女は「知りませんよ」と思いっきり顔をしかめ、ドアを閉めようとした。会話の終わりを悟り、パーシバルは背を返した。
だが、数歩進んだ時。
「お客さん!」
と呼びとめられた。
ふり返った先の相手は、それまでの態度を洗い落とした素直な表情をしていた。パーシバルと視線があうと、彼女は、
「いえ、ほんのついでですが」
と皮肉まじりの笑みでそれをおおい隠した。
「買い換えは結構ですか? 立ち回りするっていうなら、あなたにホーネットは向いてないと思いますよ」
あおり文句でないことを悟り、パーシバルは「どういう理由で?」と尋ねかえす。
「そっちの手はもう効かないんでしょう、となると左で握る。しかし一発撃ってみますと……」
武器屋は自分の手をグリップを握った形にし、架空の引き金にかけた人さし指を「バン!」とたたいた。
「ホーネット系列はスライドの形状に欠陥があって、左撃ちするとここがえぐれちゃうんです、結構な深さで。リプロは痛覚あるんでしたっけ?」
パーシバルはうなずいたが、彼の頭では“左、人さし指、傷”と単語が渦を巻きはじめていた。
「アロンソは、どのリプロにもホーネットを勧めただろうか。最近でも」
「でしょうね。変わらぬ格安モデルで押し売りのハードルも低い。もちろん不具合を知ってたわけですから、おや、ラッキーボーイはとっても人間的だったんですねえ」
彼女はわざと唇をゆがめたが、パーシバルはその笑顔に幸運を見た。




