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最終話 告白

メアリの墓は、小高い丘の上に建っている。

レベッカは挨拶を終えるとすこし後ろに下がった。

    エレノアはひざを折って墓を見つめた。そして改まった口調で語り始めた。

「お母さん、今日はお別れを告げにここに来ました。・・・フローレリアの国で働いている親戚のうちに行く事になりました。どうか道中見守ってください」

そのときノコール氏は丘の下にいたイリーナに自分は教会に一度戻るという言伝を頼んでいたが、エレノアの言葉が聞こえて、顔を上げた。

エレノアが立ち上がると、山々の隙間の向こう側の空が青白くなってきているのが見えた。

「もういいの?」

レベッカが聞いた。エレノアは頷いた。

それから丘を下りて、ノコール氏にここを離れることを告げた。

ノコール氏は黙ってそれを聞いていたが、それはとつぜんのことで衝撃がつよく、何も言い出せなかったからだった。しかし、とうとうエレノアに告げた。

「エレノアさん。もういいです。あなたはこれまで様々な事に耐えてきました。お母様の死や重労働、それからさらに新たに難題がふりかかってくることに私は幼いころからあなたを見てきている身として、こらえる事ができません。

ですからエレノアさん。あなたは教会に来なさい」

しかしエレノアは首を横に振った。

「それはできません」

「なぜですか?」

エレノアは言った。

「父が一人になってしまうからです」

「・・・あなたのお父さんが勝手に決めた旅でしょう?ならば、あなたにも道を選ぶ権利があるはずです」

「これは私の意志です。司祭様」

「・・・ここにいると悲しい気持ちになるからですか?」

エレノアは黙った。ノコール氏は続けた。

「・・・お気持ちは分かります。私も、長年の友人を失って心を深くいためております。あなたはその何倍もの痛みにこらえている事でしょう。・・・しかし、だからといって自分を殺して流れに身を任せるような、そんな真似はしないでください。」

「そういうわけじゃあ、ありません。」エレノアは声を張り上げた。

「・・・あなたの母上は自分で生き方を選ぶように望んでおられました」

「・・・いやなのです。この町にとどまるのが」

ノコール氏はすこし考える。すると、昔の友人の姿が浮かんできた。

「・・・ならば、電報を打って友人に頼みましょう。それなら、あなたはこの町を離れる事ができる。・・・なんなら、お母様の遺骨も移動できるよう手配いたしましょう。・・・とにかく、あなたはもうつらい事を一身に背負う必要はないのです。」

エレノアは手で顔を覆った。

「・・・司祭様。私は、それでよいのでしょうか?」

ノコール氏はほほえみながら言った。

「ええ。・・・あなたはもう耐えなくともよいのです。・・・さぁ涙をお拭きなさい。もうじき夜明けです。」

ハンカチを受け取り、堰を切ったように流れてくる涙を押さえる。

陽が山の隙間から放射状に差込み大空いっぱいに広がった。

暖かい太陽光が町中を照らした。

一人の青年が教会の鐘を鳴らすために起き上がり、長い夜と新しい一日を告げようとするところだった。

了。


ご愛読ありがとうございました。

次回作もご期待ください。



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