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75 新学期

 玉藻さんに招待された宴席からアパートに帰着し、ひと眠りした8月31日の昼下がり。初恋から海外旅行に魔族との対面まで。本当に色々あった夏休みも、いよいよ今日でお終いだ。


 明日からの新学期を前に、俺はずっと気になっていた事を訊いてみる。


「ねぇ、千聡学校どうするの? たしか東京だよね?」


「魔王様と同じ学校に通うべく、すでに転入手続きを済ませてあります」


 おおう、やはりか。引っ越してくるくらいだからそんな気はしていたけど、帰ってしまわないのが嬉しい反面、転校までしてくるのはちょっとストーカーの気配も感じる。


 ……まぁ、俺が千聡をストーカーしたら事案不可避だろうけど。千聡が俺をストーカーしてもなにも問題にならないという、世界の不思議の一端を垣間見られる案件だ……『え、陛下学校に通われるのですか!?』


 そんな事を考えていると、潮浬が横で驚いたような声を出す。


「いや、そりゃそうだよ。俺高校生なんだから」


「――ですが、そんな必要ないではありませんか。生活ならわたしが一生面倒を見ますし、いざとなったら千聡もリーゼちゃんもいるのです。学位が必要なら、どこかの大学から名誉博士号でも出させるとか……」


 うん、なんか妙な事を言いはじめた。

 潮浬は俺を専業主夫か、ニートにでもしたいのだろうか?


我儘わがままを言うのではありません。魔王様の記憶が戻るまでは今の生活を最大限尊重し、迷惑をおかけしない条件で我々はおそばに置いて頂いているのです。お傍を離れたくないというのであれば、三人分の転入手続きを済ませてありますから、貴女も学校にお供しなさい」


 潮浬にどう返事をしようか迷っていたら、千聡が仲裁ちゅうさいに入ってくれた……仲裁かこれ?


 そして、とても気になる問題がある。


「ちょっと待って。千聡はたしか同級生だって聞いたけど、潮浬は中学二年生で、リーゼは17歳って言ってなかった?」


「はい。ですが二人分の戸籍くらいは何とでもなりますので」


「なんとでもって……もしかして戸籍を偽造したりしたの?」


「いえ、偽装は手間もリスクも大きいですから、今回は手早く実在のものを買い取りました」


「……いや、買い取りましたって。戸籍なんて買えないでしょ?」


「それは交渉次第です。世の中には高校一年生相当の引きこもりなどいくらでもいますから、彼女達に生涯の生活保障と引き換えに戸籍を譲ってもらいました。先方はこの先もずっと今の生活を続ける事ができ、こちらは目的のものが手に入る。互いに利のある良い取引だったと思っております」


「それは……そうかもしれないけどさ」


 千聡の言う通りなら確かに誰も損はしていないし、むしろ引きこもりの少女二人の人生が救われたのかもしれない。


 社会復帰の可能性は閉ざされてしまっただろうが、必ずしも復帰できたとは限らないしね……。


「……一応、もし戸籍を返して欲しいって言ってきた時には対応してあげてね」


「承知いたしました。返すか新しいものを用意するかは状況によるでしょうが、悪いようにはしないとお約束いたします」


「うん」


 千聡の言葉に安心して話を終え。周囲を見ると、潮浬はなにやら懸命にスマホをポチポチやっている。


 明日以降の予定を調整しているのだろうけど、大丈夫なのだろうか?


 潮浬はアイドルの仕事もあるし、中学二年から高校一年に編入となると勉強も大変そうだ。


 うちの学校はレベル高くはないが、低くもない中間所だけど……まぁ、いざとなれば留年しても年齢的には問題ないから平気かな?


 変装してくるだろうし名前も違うから、アイドルとしての潮浬の名前に傷がつく事もないだろうしね。


 よく考えるとリーゼも、外国人だから読み書きとかどうなのかちょっと心配だが。千聡は頭良さそうだから、教えてもらえばなんとかなる気がする。


 四人共学校に行くとシバが一人でお留守番になってしまうが、こっちは賢いから大丈夫だろう。


 あとの心配は……。


「一応言っておくけど、みんな学校で『魔王』とか呼ばないでね」


「心得ております。そもそも魔族の存在は人間に対しては秘すのが原則ですから、そこはぬかりありません」


 千聡が自信満々に言うが、どこか不安を拭いきれないのは気のせいだろうか?


「……試しに学校モードで呼んでみてくれる?」


「はい。『ご主人様』」

「だんな様」

あるじ様!」


 ……うん、ダメだこれ。


 順番に千聡・潮浬・リーゼだが、俺をどんな扱いにしたいのだろうか?


「えっと、学校での俺達の関係って知り合いになるんだよね?」


「そうして頂ければ光栄に存じます」


「だったら普通に名前を呼び捨てか。せめて君付けで呼んでくれるとありがたいんだけど?」


「……魔王様がそうお望みでしたら、そのように致しましょう」


 千聡はそう返事をするが、なんか微妙に不安が残る。


「試しに呼んでみてくれる?」


「……かず……和人……君」

「和人君」

「和人君」


 うん。潮浬とリーゼは問題ないが、千聡だけとんでもなくぎこちない。


「千聡は、もうちょっと練習した方がいいかもね」


「……はい、申し訳ありません。明日までには必ずご意向に沿うようにいたします」


「う、うん。頑張ってね……」


 なんか無理をさせているようで申し訳ない気持ちになってくるが、冷静に考えてみると戸籍を買い取るよりも一万倍くらい簡単だと思う。


 でも千聡に名前を呼んでもらうのは初めてなので、ちょっと嬉しかった。



 ……ともあれ、これで明日の備えは万全となったはずだ。


 それでもまだ一抹いちまつの不安を残しつつ。俺も新学期に備えての準備を整えるのだった……。




 現時点での世界統一進行度……0.24%

・日本の魔族勢力を全て配下に

・魔族の小勢力三つ

・イリスルビーレ公爵を正式に配下に


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%↑ カンスト『魔王様のお求めに十全じゅうぜんの結果を出せないとは、この身のなんと愚鈍ぐどんな事か……。不出来な臣下を見捨てずに時間をお与え下さる事、慈悲じひ深く本当にありがたい……』忠誠度上昇

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