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76 学校

 俺が通う城東大学付属高校は、アパートから歩いて15分くらいの場所にある。


 となりには有紗さんが通う城東大学があって、アパートは元々そこの学生を目当てに建てられたものらしいが、最近は大学を挟んで反対側。駅がある方にきれいなワンルームマンションがいくつも建ったせいで、古いアパートはさっぱり人気がなくなり。おかげで家賃が安かったので、俺が入居する事になった訳だ。


 今は千聡によって改装され。周囲でもなにやら工事が行われていて、魔王の拠点化しつつあるらしい。


 それはともかく、新学期の始まりとなる9月1日。執務室に集まったみんなを見て、俺は思わず『おぉ……』と感嘆かんたんの声を漏らした。


 いつもかわいい三人だが、制服姿だとまた新鮮で。千聡は知的な委員長タイプ。潮浬は変装なのか、三つ編みメガネの図書委員タイプ。リーゼはボーイッシュでカッコイイ、運動部の部長タイプだ。


 三者三様にとても魅力的で、正直俺なんかがとなりにいるだけで場違いな感じがしてくる。


 でも俺に求められているのは、あくまで魔王である事なのだ。がんばろう。



「……そうだ。千聡、俺の事『和人君』って呼べるようになった?」


「はい……和人君」


 ――おおう、なんかすっごい破壊力あるな千聡の名前呼び。一瞬クラっときてしまった。


 思わぬ所から対等の恋人同士に一歩近付けた気がして嬉しくなるが、よく見ると千聡は目の下にクマを作っていて、なにやらひどくお疲れの様子だ。

 もしかして、一晩中名前呼びの練習をしていたのだろうか?


 それでちゃんと完璧に仕上げてくるのはさすがだが、名前呼びだけでこんなに苦戦したのだとしたら、対等の恋人同士までどのくらいかかるのだろうか?


 一歩進んだのはいいけど、目的地まで10万歩くらいある気がしてちょっと気が遠くなる……。



 ……気を取り直して、いよいよ学校へ向かう訳だが。今までは自転車で登校していた所、今日はアパートの前で千聡が用意してくれた車に乗せられた。


 黒塗りの高級車で学校に乗り付けるのはさすがに目立ち過ぎるから遠慮したいと言うと、さすが千聡は俺の性格をよく理解してくれているようで、『ご安心ください』と言って、学校から徒歩一分くらいの一軒家に車を入れた。


 どうやらここが千聡達三人の表向きの住所となるらしく、俺達はそこから学校へと向かう。


 千聡達三人と歩くのはそれだけで盛大な注目を集めて緊張するが。知り合いだという情報は公開し、親戚だという設定で押し切る予定らしいので、これは仕方がないだろう。



 学校に着くと。転入生となる千聡達三人と別れて俺は教室に行こうとした……のだが、千聡に懇願こんがんされてなぜか一緒に職員室に行く事になった。


 どうやら千聡達はあくまで俺の護衛であり、離れる事は許されないらしい。


 仕方がないので俺も一緒に担任の先生に挨拶をするが、なにやら三人揃って俺のクラスに転入してくるらしい。


 一学年5クラスもあるのに違和感が半端ないが、まぁ千聡が手を回したのだろう。

 私立学校なので、寄付金とかで融通効きそうだしね。


 担任の先生が俺と千聡達。書類を交互に見ながら『本当に親戚か?』みたいな表情をしていたが、気持ちはよくわかる。


 同い年の親戚が四人というだけで相当珍しいのに。名字が全員違って一人は外国人とくれば、そりゃ疑わしい。


 だがそこはさすが教師なのか、あるいはなにか言い含められているのか。深く追及してくる事はせず、淡々と名前などを確認していく。


 ちなみに千聡は『早川千聡』でそのまま。潮浬は買い取った戸籍で『鈴木栞』。俺が覚えやすいように同じ名前の子を探してくれたらしい。


 リーゼはめいいっぱい近付けようとしたのか、『斎藤理彩さいとう りさ』。日本人の父親とドイツ人の母親という設定らしい。


 簡単な確認が済んだ所で俺は教室に戻りなさいと言われたが、千聡が『初めての学校で心細いので、和人君と一緒がいいです……』と、とても弱々しい声で言ったので、同行が認められた。


 千聡は演技も上手だよね……。



 そんな訳で、朝のホームルームに四人揃って担任と一緒に登場し。転校生三人の紹介と同時に、俺の親戚だという紹介がされる。


 美少女三人の同時転入への驚きに満ちる教室の中で、『本当にお前の親戚か?』というクラスメイトの視線が痛い。


 千聡達の紹介が済むと、そのまま新学期の席替えタイムとなり。クジを引いて、その番号の席への移動となる。


 そしてなぜか、俺の左が千聡、右が潮浬、後ろがリーゼという。まるであらかじめ決められていたかのような配置になった。


 ……まぁ、決められていたんだろうけどね。


「おう和人、また近くだな」


 遠い目をしていた俺にそう声をかけてきたのは、右斜め前の席になった笠井直樹かさい なおき。一学期は50音順の席だったので、俺のすぐ前の席にいた男だ。


 転校が多かったせいであまり友達作りが上手くなかった俺に積極的に話しかけてくれた、一番仲のいい友達でもある。


 もっとも、一番と言っても一緒に昼食を食べたり休み時間に雑談をする程度で、夏休みや休日に一緒に遊んだりするほどの仲ではない。


 たしか若槻潮浬っていうアイドルの大ファンで、追っかけをしていると言っていた気がする……ん、若槻潮浬?



 俺は視線をゆっくりと、右斜め前から右隣りへとわずかにズラす。


 そこにいる今は三つ編みメガネに変装した女の子が、たしかそんな名前だったような気が……。




 現時点での世界統一進行度……0.24%

・日本の魔族勢力を全て配下に

・魔族の小勢力三つ

・イリスルビーレ公爵を正式に配下に


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%→

※誤字報告をくださった方ありがとうございます。こっそり修正しておきました。

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