第9話:影
俺たちは、塔の尖塔が血のように赤く染まり始めた夕暮れ時に城へと帰還した。
小暖炉の間に身を落ち着けると、薪のはぜる音と古木の香りが心を穏やかにしてくれたが、俺の内側では嵐が吹き荒れていた。俺は三人の連れを見渡した——それぞれが知った顔のはずなのに、実のところ彼女たちのことは何も知らないのだと思い知らされていた。
「……全部話してくれ」ホタルを見つめ、俺は静寂を破った。「自分が何者で、どんな世界に生きているのか、欠片を拾い集めるのはもう疲れた。俺は人間の中での生活しか知らない。だが、それは深淵の上に張った薄い氷のようなものだったんだ」
ホタルはユミコとアマネと視線を交わした。彼女はゆっくりとカップをテーブルに置き、頷いた。
「そうね、クロナ。隠し事をする時間は終わったわ」彼女は切り出した。いつもは冷徹で威厳に満ちた声が、今は真実味を帯びて響く。「現在、魔法の障壁によって隔てられ、並行して存在する四つの世界が確認されているわ。貴方が育った『人間界』。秩序の住まう高き場所『天界』。私たちの故郷『魔界』。そして、追放された者や自ら去った者が集う混沌の地『堕天界』よ」
窓辺に立ち、いつものように刀の切れ味を確かめていたユミコが、その後に続いた。
「天界と魔界の間には、今、危うい平和がある。表立って戦争はしていないが、それは嵐の前の静けさに過ぎないわ。そして、この静けさの最大の理由は『均衡』よ。天使は『秩序』のエネルギーを使い、その魔法は眩い白か黄金色。私たち悪魔は『怒り』や『情熱』から力を引き出し、その炎は通常、赤。これが基礎、土台よ。でも堕天使は……彼らは不安定。その力は、根源的な本質が歪んだことから生まれた、暗くドロドロとした炎なの」
ユミコは俺の方を振り向き、その眼差しを険しくした。
「ホタル様の父君の精鋭部隊にいた頃、私は何百という堕天使を見てきたわ。その多くは、追放の苦しみで理性を失った狂った獣よ。そして、アマネ……」彼女は鞘の先で羽の生えた連れを指した。「私が見た中で、唯一まともな堕天使よ。まあ、彼女が堕ちた理由は、歴史上もっとも馬鹿げたものだけど」
「ちょっと! 馬鹿げてなんかないわよ!」それまで大人しくクッキーをかじっていたアマネが飛び上がり、黒い翼を憤慨したように震わせた。「あれはプライドの問題だったんだから!」
「彼女は天界の地下カジノで遊んでいたのよ」ユミコは俺を見ながら平然と説明した。「聖遺物を賭けて負け、幻惑魔法でイカサマをしようとして、無様に突き落とされたの」
「取り戻したかっただけなんだもん!」アマネは唇を尖らせて叫んだ。「あの熾天使たちは堅物すぎて、ブラフのいろはも知らないんだから! なのに、私の情熱を評価するどころか、光輪を奪って混沌に叩き落とすなんて。私は悪意からじゃなくて、天職のために堕ちたのよ!」
俺は思わず苦笑した。緊迫した場面だというのに、アマネは宇宙の仕組みにさえ不条理な空気を持ち込んでしまう。だが、ホタルが口を開くと、笑いはすぐに消えた。
「アマネは例外よ。今、多くの堕天使が戦争を望む者たちの旗の下に集結している。そしてその理由は……貴方よ、クロナ。正確には、貴方の中にいるもの。現在、三つの世界すべてが大騒ぎになっているわ。伝説的な破壊の化身『黒龍』が再び現れ、人間界に器を選んだという知らせは、野火のように広がった」
ホタルは俺のそばに歩み寄り、肩に手を置いた。
「すぐに、たくさんの『客』がやってくるわ。天使は貴方を封印しようとし、堕天使は取り込もうとし、悪魔たちは……多くが貴方を兵器として利用したがるでしょう。貴方は三つの世界の利害が激突する、特異点なのよ」
俺は眉をひそめ、情報を反芻した。
「でも、人間はどうして気づかないんだ? カフェで戦った時だって、魔法や翼や炎を見てるはずだろ」
「人間は、自分の理性が許すものしか見ないのよ」ホタルは答えた。「私たちはそれを『ヴェール』と呼んでいるわ。魔法は、彼らの知覚にとっては周波数が高すぎる。普通の人間にしてみれば、カフェの戦闘はガス爆発か、あるいは柄の悪い連中の乱闘にしか見えない。紅蓮の炎も黒い翼も見えない。脳が『不可能』を『論理的』な何かに置き換えてしまうの。天使や悪魔の血が少しでも流れている者だけが、真実を見ることができるわ」
俺は椅子の背もたれに体を預けた。
「……分かった。世界、魔法、ヴェール。それは理解した。でも、俺の一族についてはどうなんだ? 『ハガネヤ』について」俺はホタルの目を見つめた。「誰が全員を殺したんだ? なぜ俺だけが残った?」
ホタルの顔が曇った。彼女は視線を逸らし、部屋の温度が下がったのを感じた。
「ハガネヤ一族については、恐ろしいほど分かっていないのよ、クロナ。父のアーカイブにすら、断片的な情報しかない。彼らは魔界の境界、ハガニット鉱石が採掘される深い坑道に住んでいた偉大なる鍛冶師の一族だったと言われているわ。あまりに強力で独立していたため、魔王ですらその意志を押し付けることができなかった。彼らの特異な血こそが、黒龍の力を何世紀も抑え込むことを可能にしていたと信じられていたの。でも、ある日……彼らは消えた。一晩で一族が根絶やしにされた。誰がやったのかは不明よ。痕跡も死体もなく、ただ灰と廃墟だけが残されたわ」
「子供の頃の記憶、本当に何もないの?」ユミコが静かに尋ねた。「両親の顔も、家も?」
俺は頭を抱えた。記憶がこめかみに鋭く刺さるような痛みとなって応えた。
「……何もない。暗闇、寒さ。人間界の薄汚れた地下室で目覚めた時のことしか覚えてない。七歳くらいの時だ。自分の名前も知らず、ただ首のこのアーティファクトが肌を焼いていた。それ以前のことは……大きな消しゴムで消されたみたいだ」
突然、頭の痛みが耐え難いものになり、城の暖炉の間が安っぽいセットのように溶け落ちた。俺は再び、あの灰と壊れた家と、永遠の紅蓮の空が広がる世界に立っていた。
「またここか……」俺は辺りを見回して掠れた声を出した。
「ここだけがお前が存在できる唯一の現実だ、小僧」周囲の壁の残骸を震わせる声が響いた。「それ以外はすべて、お前が正気を保つために必死にしがみついている幻想に過ぎん」
黒い霧の中から、鉤爪のある足で重く足音を立て、奴が現れた。黒龍。その鱗は流出した石油のようにぎらつき、黄金の瞳がはるか高みから俺を見下ろしていた。そこには永劫の退屈が刻まれていた。
「説教はやめろ!」俺は内側から沸き上がる怒りを感じながら、一歩踏み出した。「あいつらから全部聞いた。四つの世界、均衡、そしてお前が唯一の黒龍だってこともな。お前の言うことなんて聞く必要はない!」
ドラゴンは金属を擦り合わせるような音を立てた。笑っているのだ。
「『一匹の龍』? 『唯一』? ほう、悪魔どもというのは、自分たちが世界の仕組みを知っていると思い込むのがよほど好きらしいな。もし私がお前と同じ種族の中で唯一無二だと思っているなら、お前は見た目以上に愚かだ。龍は数多く存在するのだ、クロナ。私たちはこの世界の裏側を支える根源的な力だ」
奴は俺の周りをゆっくりと回り始め、その一歩ごとに灰の中から火花が散った。
「永遠の嵐を司る青龍——アオノカミ。存在の根源を貫く力を持つ緑龍——ミドリ。さらには、凡人の希望を糧とする桃龍——夢の龍。それぞれに役割があり、属性があり、鎖がある。だが、私は……」
「当ててやろうか」俺は腕を組み、言葉を遮った。「どうせ、自分こそが最高で、最強で、世界の中心だとか言うんだろ? また自慢話かよ。うんざりだ。せめて名前くらい教えろ!」
ドラゴンは動きを止め、巨大な顔を俺の目の前まで下ろした。鼻孔からオゾンと焼けた鋼の臭いがする黒い煙が噴き出した。
「小僧、真の恐怖を前にしても、なおその向こう見ずな勇気を保っているか。気に入った。お前の人間の舌で発音できるような名前は持たぬ。だが、古の者たちは私をこう呼んだ——クラヤミ。闇。この世界が最初の息を吸い込む前から存在していた、あの『闇』だ」
「クラヤミ……」俺はその名を繰り返した。その響きが胸に重く共鳴した。
「だが知っておけ。私は孤独ではない。私には、その存在が喉に刺さった棘のような、永遠の敵がいる。白龍——シロガネと呼ばれる者だ。私たちは光と影、秩序と混沌。何世紀も戦い続け、私たちの対立はいくつもの世界を焼き尽くしてきた。シロガネはすでにお前の目覚めを感じている、クロナ。『闇』が再び肉体を得たことをな」
ドラゴンはすっくと立ち上がり、その翼で紅蓮の空をすべて覆い隠した。
「そして、私がどこから『来た』のか知りたいというなら、聞け。人間界では、私は『ヴィシャップ』と呼ばれていた。お前の一族が鉄を鍛える術を知る数千年も前、アルメニアの山々でな。そこで私は初めて目撃され、血と石に刻まれた伝説となった。私は偉大なる英雄や恐ろしい暴君の中に宿り、解き放たれるたびに王国を滅ぼしてきた。人々が神と悪魔を同時に呼ぶ時、それは私のことだった。だが……お前も、奴らの誰も、私の真の姿など知らぬ。私にまつわる神話は多いが、そのほとんどは嘘だ」
「伝説なんてどうでもいい!」俺は叫んだ。「そんな神話には興味ない。俺の一族について教えろ! ホタルは、彼らが偉大な鍛冶師で、ハガニットの坑道でお前を抑え込んでいたと言っていた!」
クラヤミは耳をつんざくような咆哮を上げたが、それは嘲笑の咆哮だった。
「『抑え込んでいた』だと? あの矮小な虫けらどもが? 本気でそんな戯言を信じているのか? ハガネヤ一族など、私の爪の下の塵に過ぎん。噂は嘘だ、小僧。四つの世界、どこを探しても、闇をその意志に反して抑え込める者など存在せぬ」
「じゃあ、なぜお前はあそこにいたんだ?! なぜ俺の中に閉じ込められている?!」
ドラゴンは不意に静まり返った。黄金の瞳が新たな力で燃え上がった。
「私が自ら、ハガニットの鉱石の中に留まることを選んだからだ。私は待っていたのだ。何世紀もあの洞窟で眠り続けていたのは、真にふさわしい者が現れる時を感じていたからだ。私の力を、焼け焦げた肉の塊にならずに受け止めることができる者をな。私はお前を待っていたのだ、クロナ。お前は鍛冶師の意志を得た『闇』なのだ」
「……誰が、彼らを殺したんだ?」俺の声は憎しみに満ちた囁きになった。「お前がすべてを見ていたのなら、そこにいたのなら……一晩で俺の一族を皆殺しにしたのは誰だ?! 名前を言え!」
クラヤミはゆっくりと黒い霧の中に溶け始め、そのシルエットは幽霊のように薄れていった。
「まだ早い、小僧。お前はまだあまりに脆い。今名前を教えれば、お前の怒りがお前の理性を焼き尽くすだけだ。成長しろ。自らの力を鍛えろ。答えはお前の中にある……お前自身が閉じ込めた、記憶の断層の中にな」
「待て! 戻れ! 答えろ!」俺は前へ飛び出し、奴の鱗を掴もうとしたが、指は冷たい煙を通り抜けた。
周囲の世界が、音のない閃光と共に爆発した。
俺は勢いよく目を開けた。体は冷や汗でびっしょりになり、呼吸が喉の奥でヒューヒューと鳴った。俺はまだ暖炉の間の椅子に座っていたが、現実はあの灰の世界に比べて、どこか……くすんで見えた。
俺の上を、三つの顔が覗き込んでいた。アマネ、ユミコ、そしてホタル。その瞳には、隠しようのない、鋭い動揺が刻まれていた。
「クロナ! よかった……!」アマネが俺の肩を掴んだ。彼女の黒い翼は神経質に震えていた。「一族のことを聞いてる途中で、急に意識が飛んじゃったのよ! 数分間、どうしても目を覚まさなくて……!」
「大丈夫……大丈夫だ」俺は震える手で顔を拭い、辛うじて体を離した。「ただ……一気にいろんなことがあったからな。立ちくらみがしただけだ」
ホタルを見た。彼女は少し離れたところで腕を組んで立っていたが、彼女の指がどれほど強く握りしめられているかが見えた。彼女は、これが単なる「失神」ではないことを察していた。
「クロナ」ユミコが刀の柄から手を離さずに、静かに言った。「貴方の目……一瞬、完全に黒に染まったわ。そしてアーティファクトから、貴方の足元の絨毯が焦げ始めるほどの熱が放たれた。……奴に会ったのね?」
俺は答えず、ゆっくりと椅子から立ち上がった。俺の内側ではまだ、クラヤミという名前が、そして俺たちを捜しているという白龍シロガネの言葉が響き続けていた。
「少し……整理させてくれ」声が震えないように注意して言った。「世界のこと、一族のこと。教えてくれてありがとう。でも、真実は俺たちが思っていたよりも、ずっと規模が大きいみたいだ」
それから数時間が経った。日は沈みかけていた。クラヤミから聞いたすべての後では、人間界は遠い夢のように、魔界は出口のない悪魔のように感じられた。ドラゴンの言った「幻想」という言葉が、弔いの鐘のように耳に響き続けていた。
俺は高い石造りのバルコニーに立ち、左手には火のついた煙草を挟んでいた。煙草なんて吸ったことがなかった。以前の俺なら、金と健康の無駄遣いだと思っていただろう。だが今は……現実に自分を繋ぎ止めてくれる何かが欲しかった。どんなに泥臭く、人間らしい習慣でもよかった。
ライターをつけた。炎が一瞬、俺の顔を照らした。一口吸い込む。苦く、鼻を突く煙が肺を焼き、俺はむせ返ったが、煙草を捨てはしなかった。くすぶる火を見つめながら、俺は思った。(俺はずっと、怪物のための器に過ぎなかったのか?)
「無様ね、クロナ」
ホタルの声は、意外なほど柔らかく響いた。足音は聞こえなかったが、周囲には瞬時にミントの香りが広がった。俺は振り返らず、遠くを見つめ続けた。
「煙草なんて似合わないわ」彼女が歩み寄ってきた。優雅で白い手が、俺の手の上に重なった。彼女は俺の指から煙草を奪い取ると、見向きもせずにバルコニーの下の深淵へと放り捨てた。「私の城でポイ捨ては許さないわ。それに、早々に自分を殺すこともね」
「ホタル……混乱してるんだ」俺は顔を覆い、手すりに肘をついた。「ドラゴンは、これらすべてが嘘だと言っている。一族は滅ぼされ、犯人はどこかにいて、俺は……俺が本当は何者なのかさえ分からない。悪魔か? 人間か? それともドラゴンのためのただの道具なのか?」
自分の体が震え始めるのを感じた。寒さからではない。自らの無力さを思い知らされたからだ。
不意に、温もりを感じた。ホタルが一歩踏み出し、俺たちの間に残っていたわずかな距離を埋めたのだ。彼女の手が俺の肩に柔らかく置かれ、彼女は俺の背筋を伸ばさせた。彼女の眼差しは驚くほど深かった——そこにはいつもの傲慢さはなく、無限の、ほとんど母性的な静寂だけがあった。
彼女は背伸びをすると、優しく、羽のように軽く、俺の額に唇を触れさせた。そのキスは、俺の頭の中のすべての声を遮断する魔法の盾のようだった。そして彼女は俺を引き寄せ、俺の頭を自分の肩に預けさせた。
「静かに……」彼女は囁き、ゆっくりと俺の髪を撫でた。彼女の指は確かで慈しみに満ち、震えを鎮めていった。「もういいわ。貴方は一人で背負いすぎよ、バカね」
俺は彼女の香りを吸い込み、ドレスの薄い生地越しに彼女の体の温もりを感じながら、固まった。この瞬間の彼女は、わがままな王女ではなく、どんな嵐からも守ってくれる気高い女性のように見えた。
「自分がどこにいるか、忘れないで」彼女は頭を撫で続けながら言った。「貴方は一人じゃない。私がいる。ユミコもアマネもいるわ。貴方を壊させたりしない。あのドラゴンが何を企んでいようと、貴方の一族を殺したのが誰であろうと——私たちが一緒に答えを鍛え上げてあげる。聞こえる? ……私を信じなさい」
俺は目を閉じ、一瞬だけ、弱いままでいることを自分に許した。夜の静寂の中、彼女の守護の下で、俺はようやく「自分の居場所」があるのだと感じていた。
(ユミコ視点)
魔界。魔王リュウザキの城、玉座の間。
黒鉄の巨大な扉が軋みを上げて開いた。私は長いホールを歩き、私の足音は高い天井に反響した。手はいつものように刀の柄に置かれていた——私たちの世界の中心であるここであっても、警戒を怠ることはなかった。
前方、古代の怪物の骨で作られた巨大な玉座に、奴は座っていた。魔王リュウザキ。
茶色の髪はわずかに乱れ、赤い瞳は薄暗がりの中で白熱した炭火のように輝いていた。その唇には、あのトレードマークの笑みが浮かんでいた——穏やかで、ほとんど善良に見えるが、どんな上位悪魔であっても肌が粟立つような笑み。自分よりも自分のことを知っている悪魔の笑みだ。
私は片膝をつき、頭を垂れた。
「陛下。報告に戻りました」
魔王はだるそうに手で頭を支え、その鋭い眼差しを私から逸らさなかった。
「ああ、ユミコ……無事で何よりだ」その声はベルベットのように滑らかだったが、山崩れのような威圧感を秘めていた。「話しなさい。私の『実験』は期待に応えたかな? 七日間というのは、黒龍を御すには短い期間だ。もし少年が失敗していたなら……分かっているね。私の命令は明確だったはずだ。ドラゴンが完全に覚醒する前に、彼の命を絶たねばならなかった」
私は刀の柄を少し強く握りしめた。クロナとの訓練の記憶、彼の紅黒の炎、そしてあの瞳に宿っていた決意が脳裏をよぎった。
「任務完了です、陛下」私は顔を上げ、はっきりと言った。「クロナ・ハガネヤは力を制御下に置きました。彼はもはや器ではありません。彼は自らの炎の『主』となりました」
魔王の笑みが少し深まった。
「ほう? つまり、『鍛冶師』が目覚めたというわけか。殊勝なことだ。娘も、彼を匿うという良い選択をしたな」
私は立ち上がった。私の中で、首が飛ぶかもしれない決断が固まっていた。だが、そうせざるを得なかった。
「陛下……」私の声は、私の刃と同じように硬く響いた。「私は彼のそばに残ります。師としての義務は果たしましたが、武人としての義務は……私が信じるものを守ることにあります。クロナを傷つけさせはしません。天使にも、貴方の政治的な敵にも。私は最後まで彼の剣となります」
私は背を向け、正式な許可を待たずに、毅然として出口へと向かった。踵の音がタイルに鋭く響く。
魔王リュウザキは私の背中を見送った。彼は私の不遜に腹を立てることはなかった。それどころか、彼は静かに笑った——邪悪な笑いではなく、むしろ満足げな笑いだった。
「ユミコ……相変わらず忠実で、強いな」扉が閉まった後、彼は誰もいないホールに囁いた。「よかろう、守るがいい。彼を、そして私の娘を。私の計算が正しければ、遠からず、この世界を深淵への転落から繋ぎ止めるために、貴方のその力のすべてが必要になるだろうからな」
彼は再び玉座の背もたれに身を預けた。その瞳が、さらに明るく燃え上がった。ゲームは、まさに彼が描いた通りに進んでいた。




