第7話:ハガニットの代償
屋敷までの道のりは霧の中のように朦朧としていた。体は火照り、耳の奥では自ら放った一撃の残響が鳴り響いている。ユミコの肩を借りて、ようやく足を動かしている状態だった。隣を歩くホタルからは冷気が立ち上り、周囲の空気が刺すような霜に変わるのを肌で感じた。反対側を歩くアマネは、いつになく静かだった。彼女が時折、俺の黒ずんだ血管に向ける不安げな視線が、自分自身への嫌悪感を募らせた。
城の重厚な扉が閉まるやいなや、ユミコは何も言わずに俺を訓練場の方へと引きずっていった。
「ちょっと! 彼をどこへ連れて行くつもりよ?! 調子が悪いのが見えないの?!」
ホタルの鋭い声が廊下に響き渡る。視界の端で、彼女の手の中にエメラルドの炎が灯るのが見えた。ユミコは足取りを緩めず、肩越しに振り返った。その眼差しはホタルの氷よりも冷たかった。
「このままの状態で彼を『休ませ』てごらんなさい。夜明けまでにドラゴンが彼の精神を食い尽くすわ。友人の代わりに、ただの『殻』を手に入れたいなら、そのまま邪魔を続けなさい」
ホタルは硬直した。彼女が奥歯を噛み締め、その場でユミコを灰にしてやりたい衝動と戦っているのが分かったが、結局彼女は手を下げた。俺たちが訓練場に入ると、重いオークの扉が少女たちの目の前で閉ざされた。
「座りなさい、クロナ様」
ユミコは黒曜石の床の中央を指差した。俺は冷たい石の上に崩れ落ちた。全身の筋肉が疼き、首元のハガニットが、今にも脊髄を突き破って成長しそうなほど激しく脈動していた。
ユミコは俺の正面に立ち、ゆっくりとタクティカルグローブを脱ぎ始めた。その動きは、恐ろしいほど優雅だった。
「聞きなさい」彼女の声は乾いていて、厳しかった。「貴方が今日見せたのは、深青色の魔法……それは毒よ。ドラゴンの純粋な意志そのもの。このまま使い続ければ、一週間後には、コーヒーを淹れていたあの少年の影も形も残らない。貴方はただの『屠殺者』になるわ」
俺は彼女を見上げた。目はまだチカチカし、世界が……あまりに鋭敏に見えた。悪魔の生存本能が、さらなる血を求めていた。
「でも、あの力は……通用した。あのリュキエルの野郎を、あと一歩まで追い詰めたんだ」
「ええ、でも貴方は自分自身を失いかけた」ユミコは俺の目の前に跪いた。「貴方の本当の力は、紅黒の炎よ。赤は貴方の血、貴方の命、そして人間の中で育った悪魔としての意志。それは『制御』よ。赤を使う時、貴方はドラゴンに従っているのではない——貴方がドラゴンを『鍛えている』の。分かる? 貴方は彼の怒りを、自分の道具に変えるのよ」
彼女の言葉を咀嚼する暇もなかった。ユミコが突然身を乗り出してきたのだ。彼女の手は鉄のような握力で俺の手首を掴み、その手のひらを自分の胸へと力強く引き寄せた。
世界が爆発した。顔が沸騰しそうなほど熱くなり、誓ってもいいが、自分から蒸気が出ていたと思う。手のひらの下にはトップの柔らかい生地、そしてその向こうには、彼女の肌の焼けるような熱さと、激しく、確かな心臓の鼓動を感じた。
「な……何してるんだよ?!」
手を振りほどこうとしたが、ユミコは微動だにしなかった。自分が救いようのない馬鹿に思えたが、同時に俺の悪魔的な感覚が不意に極限まで研ぎ澄まされた。
「黙って聞きなさい」彼女は赤い瞳で俺を真っ直ぐに見つめ、一喝した。「今の貴方の鼓動は、追い詰められた獣と同じよ。目を閉じて。私の鼓動を感じるの。私が生きていること、ここにいることを感じなさい。貴方の力は命を食らうものではなく、守るためのものであるべきよ。その共鳴を見つけなさい。青を赤に変えるの。今すぐに」
俺は目を閉じた。耐え難かった。ユミコの近さ、鋼とラベンダーの香り、規則正しい彼女の心臓の音……。俺の本能は、逃げ出したい衝動と……自分でもよく分からない別の欲望の間で激しく揺れ動いた。だが奇妙なことに、血管の中の黒くドロドロとした何かが、静まり始めた。俺は重い槌を手に取り、自分の中の白熱した青い闇を打ち据え、そこから命の火花を叩き出す光景を思い浮かべた。
そして突然……温もりを感じた。焼けるような熱さではなく、包み込むような温かさだ。ユミコの胸に押し当てられた俺の拳の周囲に、鮮やかな紅蓮の稲妻が走った。
「……できた」
俺は目を開け、息を吐いた。エネルギーの質が違っていた。それは俺の意志に従っていた。その瞬間、扉の向こうで大きな物音と、ホタルの抑えきれない叫び声が聞こえた。
「よくも……よくもあんな! 私の……じゃなくて、クロナをベタベタ触って?! その扉、今すぐ原子レベルまで分解してやるわ!」
「王女様、静かに! 彼の集中が途切れてしまいます!」
アマネの囁き声が聞こえた。ユミコはゆっくりと俺の手を離して立ち上がった。その顔は相変わらず冷静だったが、瞳の奥に満足げな色がよぎった。彼女は刀を抜き放ち、鋼がランプの光を浴びて猛獣のように煌めいた。
「今のは最初のレッスンよ、クロナ様。次は結果を定着させるわ。貴方は紅の炎だけを使って、私を攻撃しなさい。一筋でも青い火花が見えたら、私は全力で反撃するわ。私を憐れまないこと。立ちなさい」
俺は立ち上がった。新しい、純粋な力が体に満ちていくのを感じた。俺はもう、ただ怪物を宿す器ではない。俺は再び、鍛冶師に戻ったのだ。
「……準備はできてる」
赤い火花が走る拳を握りしめ、俺は言った。「止めてみろよ」
この夜のことは長く覚えているだろう。俺たちは何時間も戦い続けた。倒され、立ち上がり、また倒されたが、そのたびに紅蓮の炎は輝きを増していった。扉の向こうのどこかで、ホタルが嫉妬からエメラルドの雷を撒き散らしていたが、俺は……俺は彼女たち全員を守れる者になるための修行に没頭していた。
朝は最悪だった。目を開けて最初に見たのは、訓練場の天井に描かれた、気が遠くなるほど高い古代ルーンの装飾だった。体はただ疼くだけでなく、全身の筋肉をロードローラーで轢かれた後、上から大槌で数回叩かれたような気分だった。だが、内側は……内側は全く違っていた。
以前は、頭の中で常にホワイトノイズのような、かすかな唸り音が聞こえていた。それを単なる疲れだと思い込んでいたが、今はそれが消えていた。代わりに、恐ろしいほどの明晰さが訪れた。城の地下で水が滴る音が聞こえる。何百メートルも離れた庭園で夜の花が開き、重く甘い香りを放っているのが分かる。世界があまりに大きく、鮮やかに、詳細になりすぎていた。何年も眠っていた悪魔の感覚が、ユミコの訓練を経て解き放たれ、俺はどう対処すればいいのか分からずにいた。
不意に、頬のあたりに冷たいものを感じた。鋭い金属の冷たさに、俺は飛び起きた。
「起きたの、寝坊助くん?」
声は静かで、起きたばかりの時特有のわずかな掠れを含んでいた。俺は顔を向け、固まった。目の前にホタルがしゃがんでいた。だが、それは俺が見慣れた完璧なドレス姿の氷の王女ではなかった。彼女はピンクのパジャマを着ていた——本物の、柔らかそうなネル生地の、小さな白いウサギの柄が散りばめられたパジャマだ。いつもは完璧に整えられた髪は可笑しなほど乱れ、一筋の毛がしつこく彼女の目に掛かっていた。彼女はとても……等身大に見えた。この巨大で冷たいホールの中で、家庭的で無防備に見えた。
彼女は結露した炭酸飲料の缶を差し出してきた。俺が以前の古いアパートの近くにある自販機でいつも買っていた、あのレモンソーダだ。
「ほら、飲みなさい。ユミコが、貴方は昨日で血中の糖分を全部使い果たしたって言ってたわ」
彼女は視線を逸らしたが、頬がわずかに赤らんでいるのが見えた。
「ホタル……」俺は肘をついて起き上がり、彼女を見つめた。「お前、今……すごく可愛いな。そのパジャマ」
彼女は硬直した。手に持っていた缶が、かすかな音を立てて床に当たった。いつもは髪に隠れている彼女の耳が、瞬時に真っ赤になった。
「な、何バカなこと言ってるのよ、朝っぱらから?!」
彼女は厳格な態度を装おうとしたが、全く説得力がなかった。彼女はただ、足を畳んで冷たい黒曜石の上に俺の隣に座った。「これはただの寝巻きよ。動きやすいの。それだけ」
俺も柱に背を預けて隣に座った。不思議なことに、彼女がすぐ近くに来ると、さっきまで俺を怯えさせていた世界の喧騒が、不意に静まり返った。滴る水の音も、遠くの花も聞こえなくなった。残ったのは彼女の匂いだけ——ミントと、何か温かくて居心地の良い香りだ。彼女の隣にいると、俺の内なる悪魔、あのいつも唸っているドラゴンさえも、丸くなって黙り込んだ。
「なあ」俺は缶を開けた。ガスの抜ける音が世界で一番心地よい音に聞こえた。「全部、なんだか変な感じだ」
「何が?」彼女は自分の指先を見つめながら、静かに尋ねた。
「全部だよ。一週間前まで、俺は古いワンルームに住んでた。風呂場の蛇口はいつも水漏れしてたし、冷蔵庫の中身はソーセージ半分と光だけだった。自分を何者でもないと思ってた。ただカフェのシフトをこなして、誰にも邪魔されたくないと思ってる普通の男。孤独が当たり前だったんだ」
俺は一口飲み、自分の手を見た。黒い血管はもうなかったが、皮膚の下で脈打つ力を感じていた。
「それが今は? わずか七日間で、俺が悪魔だってことが分かった。建物すらなぎ倒せるドラゴンが俺の中に住んでる。アマネに出会い、ユミコに出会い……そしてお前にも。全部があまりに早すぎたよ、ホタル。時々、俺はまだあのワンルームで寝ていて、この夢が現実にするにはあまりに良すぎるんじゃないかって思うんだ」
俺は言葉を選びながら黙った。冗談も仮面もなく、こうして誰かに心を開くのは慣れていなかった。
「ドラゴンに食われるのが怖いんじゃない」俺はホールの虚空を見つめて打ち明けた。「この生活、この温もりが……消えてしまうのが怖いんだ。またあの空っぽのアパートに戻って、安い時計の刻む音しか聞こえない場所に戻るのが。お前たちが、俺にとって大切になりすぎた。どんな堕天使よりも、そのことが怖いんだ」
沈黙が流れたが、それは気まずいものではなかった。突然、ホタルが俺の頭を自分の方へそっと引き寄せた。俺の顔は彼女の肩のあたりに来た。パジャマの生地は信じられないほど柔らかく、清潔な匂いがした。
「……バカね、クロナは」彼女は囁いた。
彼女の手が俺の後頭部に置かれた。彼女はゆっくりと、羽のように軽く、俺の髪を撫で始めた。それはあまりに単純な動作だったが、彼女のどんなエメラルドの魔法よりも強い魔力が込められているようだった。昨日からの戦いで蓄積されていた緊張が、完全に解けていくのを感じた。まぶたが重くなる。
「そんなの、どこにも消えたりしないわ」彼女は続け、その声は俺の耳のすぐそばで響いた。「私がここにいる限り、貴方をあの虚無には戻さない。貴方はもう一人じゃないの、分かった? もし逃げ出そうとしたって、貴方を見つけ出すまで世界中を凍らせてやるんだから。だから……ただ私たちを信じなさい。そして、私を」
俺は目を閉じ、彼女の香りを吸い込みながら、頭に置かれた彼女の手の温もりを味わった。この瞬間、訓練場の冷たい床の上で、俺は生まれて初めて、本当に「家にいる」のだと感じた。俺の中のどんな深淵も、この平穏を壊すことはできなかった。
どれくらいそうしていたか分からない。時間は、ホタルが俺の頭を撫でる手の柔らかい動きの中で止まっているかのようだった。内なるドラゴンは、彼女の安らぎに宥められ、完全に静まり返っていた。世界中が、この黒曜石の床の一角と、彼女のパジャマから漂うミントの香りに凝縮されたかのようだった。
だが、この城でそんな平穏が長く続くことはない。
「『主君攻略マニュアル』第十二章によりますと」
不意に、感情を排した平坦な声が頭上から響いた。
「夜明け時の床の上での密接な告白の後、パートナーたちは通常、生物学的再生産のフェーズへと移行します。平たく言えば、子作りに励むということです」
俺とホタルは、電気ショックを受けたかのように同時に飛び上がった。入り口には、ドアの枠に寄りかかり、例のボロボロの漫画を握りしめたユミコが立っていた。彼女の眼差しは極めて真剣で、顔は岩のように無表情だった。
「何言ってるのよ、このバカ女ッ?!」
ホタルが咆哮し、立ち上がった。彼女の顔はリンゴのように真っ赤で、指先からはエメラルドの火花が四方八方に飛び散り、自分のピンクのパジャマを焦がしそうになっていた。
「ユミコ、おい、これはお前が思ってるようなのじゃ全然ないからな!」
俺も立ち上がり、耳が燃えるのを感じた。悪魔的な自制心が完全に機能不全に陥っていた。
「タイムラインと身体の接触位置が、私の推論を裏付けています」ユミコは瞬き一つしなかった。「ですが、再生産を朝食の時間まで延期することにしたのであれば、異論はありません。昨日のトレーニングの消費エネルギーは炭水化物で補う必要があります」
「殺してやる……絶対にいつか凍らせて、庭のスタチューにしてやるんだから……!」
ホタルは乱れた髪を整え、誇り高き王女の姿を取り戻そうと必死に呟いていた。
俺たち三人は食堂へと向かった。そこにはアマネが既に座っており、眠たそうにパンケーキの皿をつついていた。食卓の雰囲気は奇妙なものだった。ホタルは俺を見るのを避けながら朝食を猛烈な勢いで切り刻み、ユミコは相変わらず自分の本を読みふけり、俺は……俺はただ、不意に雷を出すこともなく、普通にフォークを持てる幸せを噛み締めていた。
その静寂を、鋭く振動する音が切り裂いた。テーブルの上に置かれていたホタルの通信用魔石が、不穏な紅い光を放ち始めた。ホタルは瞬時に表情を引き締め、石に触れた。
「ホタル様!」
魔石から、ガラスの割れる音や破壊音にかき消されそうな、苦しげな声が響いた。「……招かれざる客です! カフェ『ハガニット』に!」
俺はパンケーキを口に入れたまま固まった。俺の店が?
「何が起きているの、ゼパル?」ホタルが氷のような声で尋ねた。
「命じられた通り、ウェイターとして働きながら食い止めてはいますが……」激しい爆発音が響き、通信が一瞬途切れた。「……強すぎます! 普通の傭兵や下位の堕天使ではありません。組織的に店を破壊しています! 助けを、姫様! このままでは店が灰になります!」
「今行くわ」ホタルは言い捨て、魔石の接続を切った。
俺は椅子から立ち上がった。内側で再びドラゴンが動き出したのを感じたが、今度の炎は俺の支配下にあった——落ち着いた、紅黒の炎だ。つまり、ホタルは俺がいない間、自分の配下の悪魔たちに俺のカフェを守らせていたのか? 感謝する反面、愛する店が壊されているという事実に胸が締め付けられた。
「アマネ、ユミコ、ついてきなさい!」ホタルが命じると、彼女のパジャマは一瞬にして戦闘装束へと変わった。
出口へと向かって走りながら、俺は廊下でホタルに並んだ。
「なあ、ホタル」走りながら、動揺を隠すようにぼやいた。「カフェの名前、もっと普通のにできなかったのか? 掲示板に『ハガニット』なんてデカデカと出す必要あったかよ?」
ホタルは一瞬足をとられ、俺に鋭い視線を向けた。「何が悪いのよ? 強い名前じゃない!」
「いいか、それじゃ街中に向かって叫んでるようなもんだろ! 『おーい! ここに首に危険なアーティファクト巻いてる奴が住んでるぞー!』ってさ」俺はうめいた。「敵が名前で見つけたに決まってるだろ! いそのことネオンの矢印で『ドラゴンはここ』って書いとけばよかったじゃないか」
「うるさいわね、さっさと走りなさいよ、この鍛冶屋!」彼女は言い返したが、きまりが悪そうに顔を背けるのが見えた。「まずは貴方の喫茶店を救うわ。ネーミングのセンスへの文句はその後よ!」
俺たちは城の門を飛び出した。確信していることが一つあった。俺の『ハガニット』に押し入ったのが誰であろうと、今日、奴らにはきっちり「お会計」をしてもらう。そして、チップは奴らの好みじゃないはずだ。




