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不死身探偵フェニックス  作者: 猫月猫日猫曜日


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34/34

ある晴れた朝、突然に

〜婚礼の朝

刑事若嶋津が白いタイを直していた

鏡の前に立つその顔は、区悪犯を追う時よりも、ずっと緊張していた

今日、彼は結婚する

相手は私立探偵、品川ナイス

刑事と探偵 水と油と言われ続けた二人だったが、不思議と並ぶとしっくりきた

式場には、若嶋津の同僚刑事、品川の依頼人たち、そして二人に助けられた人々まで集まっていた

祝福のざわめきに満ちた会場で、ただ一人だけ、硬い表情を崩さない男がいた

古い知人を名乗る、黒いスーツの男だった


〜異変の影

誓いの言葉を交わそうとした、その時だった

突然、会場の灯りが落ちた

短い悲鳴

グラスの割れる音

そして、重いものが倒れる鈍い響き

数秒後、非常灯が赤くともる

出入口付近の床に倒れていたのは、式の司会を務めるはずの男だった

胸には、銀のケーキナイフが突き立っている

招待客は凍りついた

鳥子が叫びながら、辺りを見回す

「どなたか、医療関係者の方はいませんか!」

美咲刑事が進み出る

「私は刑事になる前は看護師だった!止血なら出来るわ」

美咲が懸命に止血を始め、鳥子も補助していく

そして、若嶋津は即座に叫んだ

「出口を塞げ」

その隣で、純白のドレスをまとった品川ナイスが静かに目を細める

「ずいぶん趣味の悪い祝辞ね」


〜犯人の糸

招待客の中の同僚の刑事達が初動捜査を開始した

若嶋津は現場を守り、ナイスは招待客の表情を見ていた

泣き崩れる者 青ざめる者 目をそらす者

その中で、ただ一人、黒いスーツの男だけが死体を見ていなかった

ナイスは足元を見た

男の革靴に、白いクリームがついている

ウェディングケーキのものだ

だが停電の直前、ケーキのそばにいたのは司会者だけのはずだった

「若嶋津さん あの人、灯りが消える前に動いている」

若嶋津は小さくうなずいた

さらに、司会者の倒れた位置が不自然だった

刺されたにしては、ステージから遠すぎる

つまり刺されたあと、自分で歩いたのではない

誰かが倒れる場所をずらしたのだ


その時、石川六衛門のカンガルーパーカーの中から、猫が飛び出して被害者に近づき、ポケットから白い紙を引っ張り出す

ナイスは猫の頭を撫ぜながら、白い紙のメモを読む


〜真相

やがて、ナイスは、招待客達の前に立った

純白の花嫁が、まるで法廷の検事のように口を開く

「犯人は、あなたです」

黒いスーツの男が笑う

「証拠は」

「あります!あなたは停電の直前、ケーキ台の下に隠していた配線を切った!その時クリームが落ちて靴に付いた!さらに暗闇で司会者を刺し、出口近くへ運んで外部犯行に見せかけた!でも計算違いがあった」


ナイスは白い紙を広げた

「被害者はあなたの本名を知っていた…昔、あなたが起こした詐欺事件を警察関係者が多く集まる今日ここで、全部ばらすつもりだった!このメモに何もかもが書かれている!」

男の顔から笑みが消える

逃げようとする男


「???」


しかし、まるで透明な手に掴まれた様に動けなくなる

若嶋津が一歩前に出た

「もう終わりだ」

その声は、刑事のものだった


だが次にナイスへ向けた視線は、ひどく優しかった


〜嵐の後

「任せろ」

佐藤係長と田中刑事が犯人を連行していった

被害者である司会者も急所は外れた様で、救急車で運ばれていった

騒然としていた会場に静けさが戻った

式は中止かと思われたが、品川ナイスはドレスの裾を払い、若嶋津を見た

「ねえ刑事さん!事件があっても、予定は予定よ」

若嶋津は苦笑した

「君らしいな」

割れたグラスは片づけられ、花はそのまま残された

非常灯ではなく、あらためて灯されたシャンデリアの下で、二人はもう一度向かい合う


今度は誰にも邪魔されない

血の匂いが消えたあとに残ったのは、長い捜査の果てにようやくたどりついた二人分の未来だった

そして参列者が見守る中、刑事若嶋津と探偵品川ナイスは、何事も無かった様に誓いのキスを交わした


拍手は先ほどまでの動揺を洗い流すように、今度は心からの祝福となって式場を満たしていく

今日という日はきっと、誰にとっても忘れられない日になる

大きな窓からは、初夏の眩い光が優しく差し、まるで、ここまで続いた不可思議な難事件を洗い流すようだった


晴れ渡った空に平和の鳩が舞い上がった



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