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召喚されたら草だった  作者: 徳島
第二章
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第46話 方針

「僕らが召喚されたのが10月9日で、今は11月の末。こっちへ来て約50日、ボルケスタに着いて半月だ」

「おー……」


 僕はふかふかのベッドに腰掛け、火照った身体を冷ましていた。


 『血の乾き亭』は高級宿らしく、多数の魔道具が設置されていた。清潔で明るく、雪が降る中でも暖い。夜も遅いのに食堂も開いていたのでお邪魔してきたけど、うーん、あれはちょっとパランカさん無理だな……おい豊成、食ってすぐ横になるな。絶対寝るぞ。


「上がったレベルが17、3日に1レベルだね。悪くないペースだ」

「まァ、それもここまでだろうな」


 レベルが上がれば上がるほど、レベルアップの間隔は長くなる。世界の法則だ。成長スピードはどうしても鈍るだろう。


「冬の間は雪が積もるから、春まで魔族の攻撃はないと大司教は言った。逆に言えば、冬が明ければみんなは戦場へと送られる。それを止めるなら、3月いっぱいがタイムリミットだ」

「へっ、魔族相手ならまだマシだな。最悪ここに攻めてくるまであるぜェ」


 豊成が鼻で笑った。


「その可能性は十分にある。魔族を倒してからだろうけどね」

「王宮に特攻するならレベル40は必要だろォ、あと4ヶ月120日で20レベル、最悪でも週1か」

「ヒクイドリツアーで上がったレベルが1週間で2だけど、これはかなり運がいいケースだろうね」

「下の階層は人がいねェってのが分かったのは収穫だったな。オレ達のステータスなら30まで上げればトップ層入りだ、そこまでいけば旨い狩り場を選り取り見取りだろ」

「とすると、早めに上級ダンジョンの情報を集めといたほうがいいか。それと大手クランについても」

「パランカのおっさん頼りだな。仕方ねェ、また泊まりにいってやるかァ~」


 パランカさん、宿屋というより完全に情報屋扱いだな……。


「週2で上げられると2月中に戻れるんだけどね。向こうの準備が整ってないうちに仕掛けられれば理想的だ」

「3月でも2月でもよ、問題はそれまで持つのかって話だ。俺らを平気で殺しに来たんだ、残ったヤツ等が無事でいる保証もねェ。正月あたりに1度戻るか?」

「そこは正直祈るしかないよ。王都にいても情報は入らないだろうし、やるなら王宮に侵入するしか無い。でも僕らの【埋没】や【偽装】じゃ足りないと思う」

「レベル5、いや6は要るかァ……」

「それか【なりきり】と【偽装】で正面から入るかだね」

「どっちみち、スキルレベルを上げにいかないとダメだな」


 豊成が寝返りをうつ。


「俺が室内じゃ役立たずっぽいからよォ、出来るだけレベルは上げときたいんだがそうもいかねェか」

「僕が経験値稼ぎを担当出来るといいんだけどね」


 現状、魔物の討伐は豊成におんぶにだっこだ。横で作業してるだけの僕はお陰でスキルも生えてきてるけど、豊成がスキルレベルを上げる暇がない。


「……まだまだ力が足りねェ。せめてパランカさんには勝てるくらいにならねェとな」

「そうだね、結局は力で解決、つまりステータスで殴るしかない。今年いっぱいはレベリングだね」

「今回の探索でもう手順は分かったからな、次は4日で帰るぞ」


 豊成のお父さんお母さん、あなたの息子は異世界に来て、村を燃やすことにすっかり慣れきってしまいました。



◇◇◇◇ ◇◇◇◇



 冒険者(エクスプローラーズ)ギルドで調べたところ、オオヒクイドリのリポップ間隔は1週間ほどらしい。


「いやー、リポップとかいう現象が当たり前のように受け入れられているの凄いね……」

「無から何かを生み出す魔法があるからなァ、生き物が湧いて出ても不思議じゃねェんだろ」

「まあ錬金術とかやってると頭おかしくなりそうになるからね。せめて人間は湧かないでいてくれるといいな」


 リポップまであと2日、他のダンジョンに潜るには短い。僕らは西の森でレベル上げをすることにした。たった一週間見ないうちに、すっかり雪化粧で別の森みたいだ。僕らは雪を踏みしめながら木々の中を進んだ。これは雪中行軍の訓練が必要かもしれない。


「足元ぐちゃぐちゃでいやだなあ」

「ダメだなこりゃ、選択ミスだ。さっさと新しいダンジョンの開拓に行くべきだったぜ」

「今年最後の西の森だね、三眼鬼さんに年末のご挨拶でも行く?」


 そんなに久しぶりというわけでもないのに、すっかり懐かしく思えるビッグスパイダーちゃんやヒュージボアちゃんを可愛がりながら中層をうろつく。この時期にしか生えない植物もあるらしいけど、雪に降られると見つからないなあ。


「おっ、と」


 振り降ろされる槍のような脚を、バックステップで躱す。一瞬前まで僕がいた場所に突き立ったそれを、太刀で関節から斬り飛ばした。やっぱりリーチがある武器は戦いやすいな。


「ギエエエェェェェ!!!」


 前脚を一本失った大蜘蛛は叫び声を上げて飛び退くと、腹を大きく突き出して糸を飛ばしてきた。が、僕はもう地上を離れ、枝の上にいる。こいつ、自分が上を取られると弱いな。脚も糸も、全部下向きだ。


「ハァッ!!」


 僕は長槍を取り出してダイブ、ビッグスパイダーの身体を地面に縫い止めた。大蜘蛛が脚をバタつかせて激しくもがく。石突きを蹴って再び樹上に避難、動けないでいる相手を上から弓で蜂の巣にしていると、7本目で動かなくなった。


「うーん、こっちの方が戦いやすいなあ。【短剣術】一点伸ばしより幅を広げていったほうがいいのかな?」


 僕たちには【ストレージ】があるし、相手に合わせて装備を変更するのは苦にならない。多種多様なな生態を誇る魔物相手では武器の向き不向きが特に大きいし、有利な武器をノーコストで選べるのは大きなアドバンテージになる。豊成みたいな一点豪華主義と違って、忍者の強みは手の広さだ。この方向性は考慮に値するだろう。問題は、それでサルバンさんみたいな化け物に勝てるかって話なんだけど……。

 

 悩む僕の隣で豊成は「俺も近接を鍛える!!」と、矢を直接手に持ってヒュージボアと殴り合っていた。絵面が蛮族にしか見えない、こいつはどこに行こうとしているんだ……。


 うん、やっぱり迷走はだめだな。僕らの決戦の地は王城、相手は騎士団の精鋭だ。付け焼き刃では敵わないだろう、やっぱり【短剣術】を集中的に育てるべきだ。


「ハアァァ!!!」


 僕は短刀を握りしめ、藪の向こうから現れたビッグスパイダーに突撃した。こいつを真正面から倒せるくらいじゃないと話にならない。振り下ろされる脚を避け、噛みつき攻撃を躱し、


「いや、無理だわこれ」


 僕は速攻で木の上に避難した。さすがにリーチ短すぎるでしょ。テニスの大会に卓球のラケット参加してるようなもんだぞ、どうしろっての。


 そもそも、【草】が姿を見せてる時点で負けだ。闇に忍び、闇に生きる、それが僕たちジャパニーズニンジャ。もっとこう、どんな汚い手段を使ってでも必ず勝つ、という強い気持ちで臨むべきなんだ。バグ技・ハメ技上等、真っ当に戦うなんてとんでもない。父さんな、初見殺しと盤外戦術だけで食っていこうと思うんだ。


「というわけで、よっ!」


 僕は枝から飛び降りて、こっちを見失っているビッグスパイダーの脳天に槍をぶち込む。着地するとまま横に回り込み、長剣を取り出して脚を滅多斬りにした。やっぱり視界に入ったら負けだな。不意打ち、闇討ち、騙し討ちを基本路線としよう。


 僕は手持ちのありとあらゆる武器をつぎ込み、必殺技を考案しながら魔物を狩った。幸い僕たちには、悪さの殿堂【インベントリ】がある。卑劣な手段には事欠かない。僕は思いつくままの技を片っ端から試して回った。僕の開き直りっぷりを見ていた豊成も近接矢を諦めたようで、剣と盾を持ち出し魔物へ突撃していた。


「……この剣? ってやつヤベェな。矢なんかよりだんぜんつよい」


 蛮族の村に今、文明が芽生えようとしていた。

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