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召喚されたら草だった  作者: 徳島
第二章
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第38話 西の森

やったー勝ったー

 中層でも問題なく戦えることを確認した僕たちは、ひとまずダンジョン攻略を止め、西の森に通うことにした。冒険者登録して1週間もすれば、初心者ダンジョンをクリアしても目立たないだろう。それまでは森でレベル上げだ。


 宿を引き払い、薬草採取の依頼を受けて西門を出発。1泊2日の完徹コースだけど、【ストレス耐性】のお陰で1日くらいは寝なくても問題ない。時間は取れるし宿代も浮く、一石二鳥の強行軍だ。

 僕らは【鍛冶師】森山君に貰ったり訓練場からパクったりした武具があるので、一般の冒険者みたいに装備にお金をかけなくていい。それでもこれから数ヶ月はここで過ごす予定なのだ、節約は大事だし金策も必要だ。西の森では、換金性の高い薬草の採取も目的の1つだった。


「ほいよォ……っと」


 豊成の放った矢がビッグスパイダーの顔面を正確に射抜く。大蜘蛛はしばらく長い脚をバタバタと動かしていたが、やがて沈黙した。


()()()もんだなァ、こんなんでよ」

「ただ、効率は上がらないね」


 インベントリに収納しておいたオークの死体(ジャンケンで僕が負けた)を餌に魔物をおびき寄せ、豊成が遠距離から射殺す。安全でお手軽だが待ちの狩りだ、どうしても速度は出ない。ビッグスパイダーを《ウィンドカッター》でバラし、魔石を回収しながら豊成が言った。


「狩り場増やすかァ? 2箇所くらいならいけるだろ」

「どうせなら輪作にしよう」


 死体(えさ)を数カ所に設置し、ぐるぐると回っては掛かっている魔物を狩る。移動中に遭遇した魔物も倒し、必要ならば餌も補充。新システムの導入で、レベル上げの効率は大幅に向上した。が、


「いかん、飽きてきたぜ」

「完全に作業だからね……」


 警戒していた乱入者も現れず、狩り場で餌をむしゃむしゃしている魔物に遠くから矢を放つだけだ。さすがに数時間もやってると注意力も散漫になる。それでも敵を倒している豊成はともかく、僕なんか野営の警備とやってることが変わらない。レベル上げとは辛く苦しいものだ、それは真理だ。だが人間は、理屈だけを食べて生きてはいけない。僕らは限界だった。


「……やるか?」

「ヤるかァ!」


 僕らは剣を抜き、暗い森を全力で疾走した。見つけた、獲物だ!!


「(オオオォォォ!!!!)」

「(キエエエェェェェ!!!!)」


【埋没】と【迷彩】を発動した僕らに、魔物は全く気づいていない。美味しそうにオークのもつを頬張るヒュージボアを背後から襲撃、ジャンプ一番その延髄に短刀を叩き込む。豊成の大振りした長剣が左の後ろ足を切り飛ばす。大猪はごろんと地面に転がり足を泳がせてもがいたが、すぐに動かなくなった。


「……いけない、一時の感情に任せて無駄な殺生を……いや、無駄じゃないけど」

「死ねばみな仏よォ、3回まで許してくれるだろ」

「普通は残機3つもないんじゃないですかね……」

「餌にするからも一つ減るか」


 殺して感謝、食べて成仏のジャパニーズMOTTAINAI精神で、ありがたくその身を利用させてもらおう。それが、俺らにできる最高の供養だ!!


「身勝手が過ぎる」

「しゃーない、ちとでけェけどインベントリにつっこんで、後で美味しくいただくかァ」


 豊成はボアの足をまとめて縛るとむんずと掴み


「ぬおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 顔を真赤にして持ち上げ


「【インベントリ】!!」


 インベントリに収納した。


「ハァハァハァ、帰りに水辺に寄って解体しようぜェ」

「それはいいけど、いまの叫び声でお客さんいっぱい来てるよ」


 僕らの周囲に、足音もなく忍び寄る影が幾つも広がっていた。森の狩人、フォレストウルフだ。


「ヤベェ、20匹はいるぞ」

「囲まれてるね」


 狼の群れは統率の取れた動きで、じりじりと包囲網を狭めてくる。


「登る?」

「登るかァ」


 僕は手近な木の下に素早く駆け寄る。豊成が僕の肩を蹴って飛び上がり、更に木の幹を2、3歩走って枝に登った。僕も続いて木を駆け上る。


「イエーイ、フォレストウルフちゃん見てる~?」


 安全圏に退避した豊成が群れを煽りまくった。


「いいから射ちなよ」


 僕は弓を取り出して矢をつがえた。


「何匹か潰したら撤退してくんねェか……なッ!!」


 豊成の速射が一番手前の狼に突き立つ。群れは一瞬でいきり立ち、速度を上げて僕らの回りをぐるぐると回り始めた。僕は豊成と逆を向き、狙いを定めて矢を放つ。


「……フッ! クソ、外した!」

「ボスはどこだ? こっち側にはいねェ……よッ!!」


 ギャウン! 背後でと鳴き声が上がる。


「……こっちだね、あの茂みの後ろのやつか……ッ!! あークソ、また外れた!」

「フンッ! どうする? 変わるか……ほッ!!」

「じゃあそれで。3、2、1……シッ!! よし一匹!」

「フン! ……おお、あれか。やるぜ」

「任せ……たッ!」


 駄目だ、弓は全然当たんないや。僕は諦めて【投擲】にシフト、上段からの投げ下ろしで狼を狙う。お、こっちは命中するな。威力は出ないけど、追い払うには十分だ。


「【集中】【チャージ】……フンッ!!」


 ドシャッ、と背後でひときわ大きな音が上がった。


「よし、多分仕留めたぜェ!」

「群れの動きが悪くなってきた! 一気に畳み掛けよう」


 群れのボスを失い、明らかに戸惑いを見せている狼たち。これなら僕の弓でも当たるな。


 僕らは樹上から雨あられと矢を降らせ、次々とフォレストウルフを討ち取った。群れは7割ほどを失って壊滅、生き残りは散り散りに逃げ去っていった。安全を確認後、地上に降り立ち一息つく。辺り一面、フォレストウルフの死体だ。


「どうする、これ?」

「放置しとくと面倒なことになりそうじゃねェか? 容量余ってるし収納してどっかに捨てよう」

「討伐証明部位が右上の牙だっけ? いちおう貰っとこう」


 僕らは牙とまだ使えそうな矢を回収しながら、フォレストウルフの死体を収納して回った。


「やっぱκフォーメーションは強ェな」

「特定の相手には絶大な効果があるね」


 κ(カッパ)フォーメーション――森林階層で鍛えた対狼地形ハメ専用フォーメーション、日本名「河童の木登り」だ。システムは簡単、背の高い木に登り頭上から矢を放つだけ。狼やら犬やら兎やら四足歩行の魔獣はもちろん、大した遠距離攻撃を持たないゴブリンやトレントなんかを一方的に虐殺できる、非常に強力な陣形だ。弱点は”ヌシ”みたいな巨大質量の相手に突撃されると、幹ごとふっとばされて多大なダメージを負うことである。あれはやばかったなあ。

 ちなみに、崖下から一方的に矢を放つθ(シータ)フォーメーション、相手の足元を狙いまくるρ(ロー)フォーメーション、めちゃくちゃ臭い匂い袋を投げつけるξ(クサイ)フォーメーションもある。


「オークは武器を投げてくるし、ヒュージボアは木をなぎ倒すし、大蜘蛛は登ってくるし遠距離攻撃あるし、中層だとあんまり使い所ないけどね」

「地形ハメでらくらくレベルアップとはいかねェか」

「人間、楽しようとばかり考えちゃだめだよ。やっぱりコツコツいかないと」


 その後、少しの休憩を挟んで狩りを再開した僕らは、輪作システムでコツコツと魔物をハメ殺して回り、レベルを15まで上げた。


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