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第十三話 スキル【ゴーレム】の可能性と決闘当日

第十三話 スキル【ゴーレム】の可能性と決闘当日


 翌日、僕は特訓でできた傷を癒すために一日休むことにした。

 と、いうのはリスタルへの建前で、僕はガネットとともに昨日特訓で利用した広場までやってきていた。

 以前手に入れていたモンスタースキルを試してみるためだ。

 ここなら多少のトラブルがあっても大丈夫だろう。


「さて、それじゃさっそく―――」

「―――さっそくどうするの?」

「ひっ!?」


 モンスタースキルを試すために剣を構えたところで、何者かに音もなく背後を取られた。

 いや、何者かは声で分かる。


「リスタル……さ、ん?」

「まさかとは思ったけど、そのまさかとは。決闘前に彼らに出くわして大けが負わされたらどうするの?」

「い、いえ……その、すみません」


 好奇心に負けましたと僕はリステルに謝罪した。

 確かにそうだ。この決闘は僕だけではなくリスタルの今後もかかっているのだ。

 僕は己の浅さを反省した。


「ガネットも、ラルドを見ていてって頼んだ」

「い、イやァ、ソの、剣にそうイうのは――」

「頼んだ」

「……ごめんナさイ」


 ガネットも論破され、僕たちは小さくなった。

 リスタルはむすっと膨れ、ぽつりとつぶやいた。


「……出かけるなら私にも声をかけてほしかった」

「確かにリスタルにも声をかけるべきだった。ごめん」

「次からはお願い」

「うん、約束するよ」


 さんざん怒られると思ったが、リスタルはあっさりと引き下がった。

 そうしてひと悶着落ち着いたところで、僕はリスタルに何をするのかを話し、改めて剣を構えることにした。


「モンスタースキル。確かに聞いたことがない」

「だからそれを試してみようと思ったんだ―――それじゃ行くよ!」


 僕は持っている剣にモンスタースキル【ゴーレム】の起動を指示する。

 とたんパチンと静電気のようなものが剣から爆ぜ飛び、予期せぬ痛みに僕は思わず剣を手放してしまった。


 手放した剣は地面に突き刺さり、真下の土を取り込み始める。

 徐々に粘土質の土が剣を登って行き、人の形に整えられていった。

 もしかしてこれはモンスターが誕生する瞬間なのかもしれない。


「これは、ゴーレムが生まれるのかな?」

「お、おオお! すごいなラルド! 近づケ! もっと近くで見たいゾ」

「ちょっと、近寄ろうとしない」


 どのような状況なのか詳しく見てみようと一歩踏みだそうとした僕とガネットをリスタルが制止する。

 それはそうだ。いやでも、もしかしたら僕たちはなにか大切なものに立ち会っているのかもしれない、そう思うとその光景から目が離せなかった。


 やがて、そこには一体の土人形が出来上がっていてた。


「女の子……のゴーレム?」


 見れば短い髪にやや幼さを感じる肢体……えーとナニコレ?

 どうすればいいのか戸惑っているとゴーレムは目を見開き僕を見てきた。


「指示ヲ、クダサイ」


 指示とはどういうことだろうか。

 もしかしたらストーンゴーレムみたいなものと戦うことは想定していたけど、こういうことは想定していなかった。


「どうしよう」

「とりあえず、なんでもいいから言ってみたら?」


 リスタルに声をかけると彼女もどうしていいのかわからずといった感じだった。

 とりあえず敵意はなさそうだし、簡単な指示でも出してみようか。


「うーん、じゃあ、ガネットを運んで」

「ド、どうしテ!?」


 すまん、ガネット。

 本当に何も思いつかなかったんだ。


「分カリマシタ、デワ、ガネットヲ、渡シテクダサイ」

「や、ヤメ、ヤメローーー!!」


 ゴーレムにガネットを手渡す。

 受け取ったゴーレムの女の子は二、三回ガネットのサイズを確認すると、両手でぎゅっとガネットを抱きしめた。


「ヌワーー!? 沈む! 沈むゾ!」

「サイズ的に可能ナノデ、格納モードで収納シマス」

「ガネット!?」


 ずぶずぶとゴーレムの女の子は自身の体の中にガネットを埋めていく。

 ややあって、ガネットはすっかり埋まってしまった。

 とりあえず元に戻してもらおう。本当すまないガネット。


「その、ガネットを取り出してくれない?」

「カシコマリ、マシタ」


 僕の指示にゴーレムの女の子はずぼりと自身の体の中に手を突っ込みガネットを引き抜いた。


「プはー……って私、息しなくて良かったんダ、オい、ラルド! 剣じゃナかったら死んでいたゾ!!」

「ごめんごめん」

「特性的には南西のアクロアイトの町でまれに見かけるクレイゴーレムに似てる。でも攻撃してこない。なぜ?」

「それはちょっと分からない」

「指示ヲ、クダサイ」


 みんなであれだこれだと話いるうちに、再びゴーレムが指示待ちになってしまった。

 物は試しにとばかりに、ガネットとリスタルも指示を出してみるが―――。


「次は私の番だナ。ラルドに体当たりダ★」

「指示ヲ、クダサイ」

「歯牙にもかからン!」


「明日の天気を教えて」

「指示ヲ、クダサイ」

「……無理みたい。壊しましょう」


 どうやらスキルを起動した僕の指示しか聞かないようだ。

 どうしたものかと、僕が考え込むと、ガネットが声を上げた。


「ラルド、モう一度、私を収納させテくれ。もしかするトできるかもしれなイ」

「分かったけど、何をするつもり?」

「ゴーレムを乗っ取ってみル」


 本当にできるかはわからないが、失敗したらまた取り出せばいいだけなので、僕は再びゴーレムに指示を出し、ガネットを収納してもらうことにした。

 完全にガネットを飲み込んだゴーレムの女の子は、突然「あー」と声を上げた後、一度目をぱちくりとまばたきをし、手を握ったり開いたりを何度かした後、僕を見上げて口を開いた。


「できたゾ」

「うそ!?」

「器用ね」


 本当にできてしまったらしい。

 僕とリスタルはぽかんとした顔でガネットもといゴーレムの女の子を見た。


「このままだと人間っぽくないナ。色調補正はこんな感じカ」


 そうガネットがつぶやくとゴーレムの女の子は赤い髪、赤い瞳の人間の女の子と寸分たがわぬ色合いに変化した。

 ちょっと見てはいけない感じになってしまったので、僕は思わず目をそらした。

 リスタルもじぃっと僕をにらみつけてくるし、なんだというのか。


「ガネット、君って本当に記憶喪失?」

「ナイナイ、記憶は本当に戻っていなイ。ゴーレムがスキルで動くのなら試してみたがマルチスキルの応用で操れたゾ。」

「そうか、ちなみに町まで歩けそう?」


 ガネットは具合を確かめるように二、三足踏みをした。 

 そこでハッと何か気が付いたような顔をし、僕に深刻そうな声色で伝えてきた。


「ラルド大変だ。服をくレ。このままじゃ町に戻れなイ」


 羞恥心あったのか、ガネット。

 僕はどうしたものかと苦笑いを浮かべ、ガネットに提案した。


「ああ、うん。一度ゴーレムからでようか」

「オお、そうだナ! ラルドお前頭いいナ」


 結局、いろんな事情が落ち着いたら、リスタルが服を用意することで話がまとまり、その日のモンスタースキルの検証を終えることにした。


 検証を終えた僕たちは武器屋で念のため、当日使う剣を点検してもらい、宿に戻った。

 そして何事もなく夜が過ぎ翌日―――ついに決闘の当日となった。


 僕はディアンの指定通り、ガネットとリスタルと共に闘技場まで足を運んでいた。

 そこで『金緑石の集い』のメンバーに通されたのは石造りの通路だった。

 この闘技場は遺跡を再利用して作られたとされていて、壁には近くの遺跡と同じように幾何学的な模様が描いてある。時間があればゆっくり調べてみたいが今はその時ではなかった。


「――――――! ――――――!」

「すごイ、歓声だナ」

「そうだね」

 

 正面を見れば通路の出口、出口からは絶え間なく騒がしい歓声が聞こえてくる。

 ここを進めば、ジェードとの決闘が始まる手筈だ。

 おそらく僕を叩きのめしたところを見せつけるため、多くの冒険者を募ったのだろう。

 あわよくば賭けを用意して、一儲けを狙っているのかもしれない。


「いい、ラルド。彼らはあなたがジェードのスキルを知っていると思っている。何か策を用意するはず」

「そうだよね」

「だから、何があっても、心を乱さず最初の攻撃を回避すること」

「うん、ありがとう」


 リスタルの言葉に僕はうなずく。

 僕が緊張していることを見抜いているのだろう。


 ジェードは攻め気味の性格だと初めから全力で攻撃してくる可能性は十分あり得る。

 リスタルから助言もあるし、最初の攻撃は確実に避けていこうと僕は方針を心に刻んだ。


「ラルド緊張しているナ。その手に持っている剣はスキルなしの奴だゾ」

「あぁ、これは、これでいいんだ」

「訳ガわからン」


 ガネットが指摘した通り僕の装備はスキルのない平凡な鉄の剣だ。

 でも今回の戦いはこれでなければ彼らに勝てない。なぜなら――


「スキルを使ってジェードに勝っても結局それはディアン達を肯定することにしかならないんだ」

「なるほド」


『さあ、今回の闘技場は『金緑石の集い』が主催のスペシャルマッチ! 両雄の入場です!』


 そろそろ時間のようだ。

 僕はガネットとリスタルをそれぞれ見た。

 

「頑張って、ラルド」

「死ぬなヨ、ダモンドに行くまで」


「うん、行ってくる」


 僕は剣の柄を一度握り、具合を確かめたうえで会場へ向かうことにした。


 暗い場所から一気に明るい場所にでて僕はまぶしさから目を細める。

 闘技場中央には会場を盛り上げる声の大きい男と、もう一人――。


「よう、逃げずに来たじゃねぇか。嘘つきラルド!!」

「ジェード……」


 闘技場の会場で待ち受けていたジェードは一昨日見た彼の剣とは違う、見たこともない装飾の剣を肩に担ぎ、僕を待ち構えていた。


「ヒャーハッハッハ! この竜級の伝説の剣、この最強の剣でてめえをぶっ殺してやるぜ!」


 僕は身構えた。

 竜級ということは、以前、彼が使っていた鬼級の二ランク上の剣。

 それこそ実際にドラゴン殺しの伝説が残る剣だ。


 実在する数は本当に数えるほどしかないレア中のレアもの。

 そんな剣をどうして――。


 僕の疑問に答えるようにジェードのの向こう側で男がニタニタと笑っているのが目に入った。

『金緑石の集い』リーダー、ディアン。

 確か彼の剣はパーティ代々伝えられている竜級の剣だったはずだ。


「そうか、彼の戦略か」


 けれどやることは変わらない。

 スキルを使わずジェード勝つ。たとえドラゴンを殺した剣が相手だろうと……!


「それでは試合を開始します! ――――始め!」


 開始の合図が場内に響き渡った。

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