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第十二話 特訓と秘密の共有

第十二話 特訓と秘密の共有



 ここは地獄の三丁目、もとい町はずれのそこそこ広い場所。リスタルに連行された僕は、リスタル式地獄の特訓を受けていた。


「これはどう」

「――うわっ!!」


 リスタルが手にした真剣が縦横斜め、縦横無尽に僕に襲い掛かってくる。

 僕は命を守るために身をひねり、そらせ、距離を取り、時には逆に詰め、彼女の攻撃を回避し続ける。


 人間はあまりに脆弱なので、魔物の攻撃に対して、回避するのが一般的だ。

 一応、冒険者の中にはスキルで自身や防具を強化して攻撃を受け、耐える冒険者もいるらしいが、ケガを負うと出来ることがどんどん減っていくのでなるべくよけたほうがいい。


 そういう意味で理に適っているはず……おそらく。

 彼女の訓練のおかげで、フォレストウルフの群れも倒せたし。


「うん、なかなか。実践を経て、知識と動きがかみ合ってきた感じがいい」

「し、死ぬかと思った」


 何とかリスタルすべての攻撃をよけきり、僕は肩で息をし、やればできるものだと僕は自分を褒めた。


 どんなものですと僕が息を整えリスタルを見ると、彼女はにこりと笑って剣の数を増やした。


「さて、準備体操は終わり」

「はい!?」


 僕は自分の墓を作るのならどこがいいか、真剣に考えた。

 リスタルは楽しそうな笑顔のまま、その銀の髪を揺らし、鋭く構えた。


「それじゃあ、次!」

「ちょ、ちょっと待って――――!?」


 数分後あちらこちらに切り傷を負った僕が出来上がった。


「さ、さすがにこの手数は対応できない」

「なるほど、でも致命傷はすべて避けたのだし及第点。休憩しましょう」

「及第点か……」


 ストーンゴーレムを撃破して身についた自信が粉みじんになった気分だった。

 あちこち痛む箇所をさすり、僕は傷薬を塗った。

 『金緑石の集い』にいたときからこういう訓練を受けていたから、傷薬の扱いには慣れている。

 リステル曰くこれも訓練らしく。傷薬を常備する癖がつき、いざと言う時すぐに使えるようになるから重症のリスクを減らせるらしい。


「そういえば、気になっていたのだけど、あの古い剣なに?」


 休憩中、リスタルが脇に置いてあった僕の鞄を指す。

 ガネットのことだろう。なんて言ったらいいのか決めてなかったので僕は口ごもってしまった。


「あー、あれは――」

「ふフふ、私こそがこの戦いの――」


 突如、自分から様子を見るといっていた、ガネットはその言を破り、言葉を発した。


「――秘密兵器ガネット、ダ! あっ」


 瞬時に僕が止める間もなくリスタルが僕の鞄に接近し、僕の鞄からガネットを引き抜き投げ捨てる。

 絶対魔物か何かだと勘違いしたパターンだ、これ。


「うわああアぁあああ!?」


 くるくると回りながら、ガネットは少し離れた地面に突き刺さった。

 ぶーぶーと抗議の声を上げるガネットにリスタルは剣を構える。


「ひどいジャないか! 剣じゃナかったら死んでいるゾ!」

「……私が見たことない魔物! 何かされる前に倒す」


 流れる動作から一歩踏み出す前に、僕は急いで二人の間に割って入った。


「――ちょっと待った! リスタルストップ! ガネットもいきなりどうしたのさ!」


 きょとんとするリスタルに僕はガネットを拾った事情を話した。

 ガネットに聞くとリスタルになら合成の話をしてもいいとのことだったので包み隠さずすべてだ。

 一体、どういう心境の変化だろうか。


「どうしたんだガネット?」

「リスタルは大丈夫ダ。見てて分からないノか」

「確かに信頼できる人だとは思うよ。でもいきなりじゃないか?」

「アァ、なンか違ウ……」


 なんかしんなりしてしまったので、僕はをガネットを鞄に戻した。


「合成魔術。確かに伝説の剣は数あれど、どういう製法なのかはわかってなかったし、そんな魔術があったのね」

「そんなあっさり……さすがに信じすぎじゃない?」


 目をぱちくりとさせ、リスタルはまっすぐと僕を向いた。


「だってラルドが私に嘘をつく理由がない」


 いや、つく必要はないけど、という野暮な言葉を僕は飲み込んだ。

 せっかく話ができる人が増えるのだ。下手に遠ざけようとしてどうするのか。


「まあ、そういってもらえるのなら嬉しい……かな」

「さっそくだけど、ちょっと見せてもらえる?」

 

 そういってリスタルは僕に一振りの剣を手渡してきた。

 それはヒビの入った彼女の愛剣であった。


「いいの?」

「ラルドやってみロ……同じ剣のよしみだしナ! 彼女もまダまだ戦いたいのだろウ」

「ええ、このままでは何かあったときに何もできない可能性があるから」


 リスタルの承諾を得て、僕は右手に彼女の剣を持ち、左手に予備の剣を持つ


 分解、抽出、再構成―――。

 僕の右手の剣は役割を終えたように砂に帰る。

 手に残るは白濁とした水晶


「よし、あとはこいつを……!」


 加工、結合――――。

 集中し、丁寧に。

 白濁とした水晶を幾何学的な線に加工し、剣に埋め込む。


 わずかな手ごたえを残し、水晶は剣に溶けていく。

 そうして合成の工程は完了した。


「できた」


 僕は早速スキルを確認してみた。


――――――――――――――――――

鉄の剣


スキル

【氷結華】【氷穿ち】【氷結強化】

――――――――――――――――――


 どうやら、問題はなさそうだ。

 僕は合成した剣を彼女に返した。


「合成はうまくいったけど、昔の剣よりもろいかもしれないから気をつけて」

「ありがとう、ラルド。……本当に」


 リスタルは剣を手に取り、スキルを確認した。

 よほどうれしいかったのだろうその顔はどこか優しい笑顔だった。


「次はスキルに怯まないようにスキルありでやる」

「それは確実に死ねる! 死ねるから!!」


 そして彼女は構え、スキルを起動した。

 僕は全身の神経を集中させた。


「当たると死ぬから」

「うわあああああ!?」


 結局その日一日は死と隣り合わせの特訓をひたすらこなすこととなった。


 

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