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31話「いつまでも幸せに暮らしました」最終話

 私とルシャード様の婚約は、婚約の取り決めから二ヶ月後に正式に発表されました。

 そしてその一年後、私とルシャード様の結婚式が行われることが決まりました。

 父は女王陛下の言いつけを守り、婚約のことを正式な発表があるまで誰にも話しませんでした。

「フィルタ侯爵がアリシアとルシャードの婚約の件を漏らしていたら、もっと早くアリシアの花嫁衣裳が見られたのに」

 女王陛下は残念そうにおっしゃっていた。その話を聞いた父はとても複雑な顔をしていました。

 女王陛下は漏れてもいいことしか、父に話す気はないようです。 

 私とルシャード様の結婚式は親族や友人に祝福され、厳かに行われました。

「愛しているよアリシア」

「私も愛していますルシャード様」

 私はルシャード様と口づけを交わし、永遠の愛を誓いました。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 結婚式を終え、ルシャード様はフィルタ侯爵家に婿入りしてきました。

 王太子のスワイン殿下にはまだお子様がいらっしゃらないので、ルシャード様の王位継承権はそのままです。

 私とルシャード様の子も王位継承権を持つことになります。


 結婚式から三カ月程が経過し、新婚生活を満喫していた頃、女王陛下にお茶会のお招きをいただきました。

 私はルシャード様と共に三カ月振りに宮殿を訪れています。

 お茶会で魔石のことが話題にのぼりました。

「ずっと気になっていたのですが、魔石に映像を録画、再生する機能なんてありましたか?」

 私の素朴な疑問に女王陛下は答えて下さいました。

「十年ほど前から、スコルピオーン王国の魔石の埋蔵量は残り少ないのではないかと疑っていたのよ。それでマイスター王国とグヴォル王国とバオム王国で、魔石に変わる新たなエネルギーを開発したのよ」

 女王陛下は紅茶を一口すすり、ゆったりとした口調で話された。

「魔石に変わるエネルギーですか?」

「そうよ今は魔石の力を借りてるけど、そのうち魔石が無くても魔力だけで発動できるようになるわ」

「そんな便利なものが?」

「魔法文字って知っているかしら?」

「魔法文字、数千年前に使われていたというあの?」

 魔法文字は古代の人々が神様から授かったとも、稀代の天才魔術師が考えたとも言われています。

 現代では資料が失われ、殆ど使われることがありません。

「そうその魔法文字よ。魔石に『記録』の魔法文字を刻み、映像を録画、再生させたの」

「凄いですね!」

「今は魔石に『浄化』の魔法文字を刻んで、井戸水や毒の沼地の浄化を試みているわ」

「毒の沼地の浄化ですか?」

「ええ、今までは十平方メートルの毒の沼地を浄化するのに拳大の魔石が十個必要だったわ。だけど、今後は一つで済むようになるわ。あと五年もすれば魔法文字だけで浄化できるようになるでしょう」

「素晴らしいですね!」

「スコルピオーン王国国王も、魔石に変わるエネルギーを開発するなり、技術者を育てるなり、観光名所を作りなり、もっとやり方はあったはずよ」

 女王陛下がおっしゃった。

「地下資源で得られる富は一時的なものですからね」

 ルシャード様が女王陛下のお言葉を肯定した。

「マイスター王国はスコルピオーン王国のようにならないようにしなくはいけませんね」

「そうだねアリシア」

 ルシャード様が私のお腹をそっと撫でた。私のお腹にはルシャード様の子が宿っている。

「孫の顔が見られるのが楽しみね。アリシア、子が生まれたら、私とあなたと孫の三人でまたお茶会をしましょう」

「はい女王陛下」

「母上! 僕は数に入っていないのですか?」

「あなたは領地経営と商会の経営と魔法文字の研究に没頭しなさい、アリシアと生まれて来た子は私が責任を持って可愛がります」

「あんまりです母上! アリシア、君からも何か言ってやってくれ!」

「ルシャード様、お仕事頑張って下さい」

「アリシア、君も母上と同じ事を言うのか!?」

「冗談です、ルシャード様も一緒にお茶会に参加しましょう」

「アリシアはルシャードに甘いのね」

「大切な旦那様ですから」

「母上、アリシアは僕の妻なんですから、独占しないでくださいね!」

「ふふふっ、分かっていますよ」

 王室の庭園に私達の笑い声が響く。

 そう遠くない未来この笑い声の中に、私とルシャード様の子のはしゃぎ声が交じるのですね。想像しただけで顔が緩んでしまいます。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 マイスター王国とグヴォル王国とバオム王国は魔法文字の研究を続け、魔法文字を完全に使いこなせるようになりました。

 現在は、魔石を媒体にしなくても、魔法を発動させることが可能です。

 それらの国は魔法文字の加護のもと発展しました。

 アリシアとルシャードは三人の子宝に恵まれ、仲睦まじく、幸せに暮らした。


 ——終わり——



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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


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