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突然の退学宣言に講堂内がザワリと響いた。


「蝶名林…先輩。それはどういう事ですか」


流石の会長も、年上であり貴蝶グループである蝶名林を呼び捨てにすることもできない。

あれだけ罵倒されながらも尚かばうように前に出た野々瀬も、戸惑ったように雅の肩に手をかけた小田島もじっと二人を見つめる。



「どうもこうも、単純に出席日数をみても編入して一度も授業を受けていない、また先日の試験も正当な理由もなく受けていないなら、当たり前だろう?高校は学業に勤しむ場所だ。スポーツ特待生であっても、その基本は変わらないのに、その基本的な事すら果たしていないなら逆にほかの生徒に迷惑となるから、退学ってのは当然の事だろう」

「ばっかだよね。会長達は免除特権があるけど、ただのSクラス生徒である雅にはないのに」


「そんなっ!Sクラスにも特権があるって!」


「ええ、有りますよ。ただし、授業免除とサボリはまた別でしょ?」

この学園の中で一番特権があるのは生徒会役員と特待生だ。もちろんその特権の内容は異なるが。

そしてSクラス生徒にも、つねに全国平均を上回ることを義務付けられているかわり、特待生ほどではないが様々な恩恵・特権があるのだ。


「Sクラスでの授業免除は、例えば公的資格への受験によるとかです。あんた、何も受けてないじゃない」

「生徒会役員の授業免除も、生徒会の仕事をするための免除特権だからな」

蝶名林がそういって、スッと脇に視線を走らせる。

壇上の脇からゆっくりと歩いてきたのは、初老の人物。

ニコニコと人の好さそうな笑みを浮かべている、通称「てっつん」こと古森鉄次生徒会顧問だ。



「つまり、ここ一月の生徒会役員達の授業免除は却下されて、必要単位不足と職員会議で決定しました」

好々爺に見える笑みを浮かべたままそう告げた。


「ついでに、素行不良という事で一月の停学と、生徒会業務の放棄及び特権濫用により、強制失職です」


どっと、講堂内がざわめく。

強制失職は生徒同士でリコールするよりもなお対面が悪い。

教師から、不適格の烙印を押されたも同然なのだ。



「理由はわかりますね。教師もバカではないのですよ」



ニコニコ笑顔は変わらないはずなのに、桜木はぐっと重圧が増したような感じを受けた。



「大企業である家の看板があれば、教師が何でもいう事を聞くと思ったら大間違いですよ。事の経緯は各家に資料を添えて報告してあります。桜木、野々瀬、小田島の其々の家からは止む無しの返事をいただいてますので、家の力を使おうとしても無駄です」



ざっと血の気が引いたように真っ白な顔色になった三人を順番に見つめていく。



「今日はただの反論集会の予定だったんですが、前生徒会役員からも可及的速やかに滞っている業務の改善を願い出られていましたし、週末の職員会議でも決定したことなので、今日に便乗させていただきますよ」


「…は…。じゃぁ、最初から俺たちの強制執行は決まってたんじゃねぇか」

桜木が悔しそうにつぶやく。

「でもありません。この反論集会で、大人しく自分たちの非を認めれば、停学だけですますつもりでした」


学園内であればまだやり直すことも「勉強」の一つだ。

社会に出て取り返しのつかない事態になるよりも、傷は浅くすむはずだった。


「お前らの自業自得って事だ」


おそらくこの中で唯一話を聞いていたのだろう、風紀委員長である佐野が肩をすくめる。

同じ壇上にいながら椿木も予想外の展開に目をパチクリとしている。




「取りあえず、夏休みの前に新しい役員を決める選挙を行わないといけませんが、それまでの間は前生徒会役員に業務を行ってもらいます。事後承諾になりますが、お願いしますよ、蝶名林君」



前生徒会役員の内、生徒会長は今年の春に卒業してしまったが、副会長だった蝶名林と会計だったもう一人は三年に在籍している。

のこる書記は、現在の桜木会長だ。



「Sクラスの人間を生徒会に入れる事になった経緯を忘れんな」

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