15
「こんなのおかしい、絶対にずるしてるんだ!!リコールにならないなんて、そんなのっ!」
もはやヒステリーだ。
ばたばたと暴れる蝶徳寺を風紀が取り押さえに掛かる。
「何するんだよ、離せよ!!」
喚く蝶徳寺の両手をそれぞれ押さえつけている風紀に、横に座っていた取り巻きがその手を離すように間に入る。
「みやびに酷いことするのダメ!!」
「お前らなんか、おれが叔父さんに言えば全員退学にだってできるんだからな!」
蝶徳寺の怒鳴り声が上がると、シンと講堂に沈黙が落ちた。
「俺の叔父さんはこの学校の学園長なんだから、その叔父さんに言えば、お前ら全員に罰を与えることが出来るんだぞ!」
固まってしまった風紀の腕から逃れてさらに蝶徳寺はそう続け、壇上の椿木を睨みつけると席から離れて壇上によじ登ろうと駆け寄った。
最前列にいた部長たちがそれを止めようと動きかけるが、佐野が手を振ってそれを止める。
「来い、お前にも話がある」
階段が目に入らなかったのか、ようやくの思いでよじ登った蝶徳寺は、佐野の元へはいかずに真っ直ぐ生徒会役員の前に立つ。
「…雅…?」
不機嫌そうな蝶徳寺の様子に、桜木たちも戸惑ったような様子だ。
「お前らが、こいつをリコールしてオレが書記にしてやるって言ったのに、なんでちゃんとしないんだよ!」
それまで役員たちに囲まれて太陽のような笑顔を向けていたのに、いまの蝶徳寺の表情は全く違う。
「みや、び…」
桜木も野々瀬も呆然としてその様子を見つめる。
「全然役に立たないな!!」
吐き捨てるような口調に小田島が泣きそうに顔を歪めた。
ダンダン!と激しく地団駄を踏みながら喚く蝶徳寺。
目の前で喚かれた生徒会役員たちだけでなく、講堂内の一般生徒達までもが固まったままその様子を見つめる。
「まったく、学習しないヤツだな」
ダンダンと床板を踏み鳴らす音のほか、静まり返ってしまった講堂内に呆れたような口調の低い声が響いた。
蝶徳寺ばかり見ていたので気が付かなかったが、いつの間にか二人の生徒が壇上に上がっていた。
一人は眠そうに見える垂れ目で、天パーなのか髪の毛の先がクリンと巻いている長身で、もう一人は逆に目がぱっちりと開いたショートカットの、ちょっと見るとボーイッシュな女の子に見えなくもない小柄な少年だ。
「蝶名林先輩、蝶野君…」
椿木がその二人を見て目を瞬かせる。
家柄を重要視して入学者が決まるこの学園において、Sクラス生徒の成績が偏差値を上げる重要な存在である。
そのため家柄や容姿などよりも、全国模試の実力を一番の重要とするこのクラスで、家柄を重視するAクラスでもトップレベルの「貴蝶グループ」の血統を持つ二人の存在は特別言ってよかった。
「お前ら…!」
二人を目にした途端に蝶徳寺が顔色を変える。
「アンタに「お前」言われたくないんだけど」
そんな蝶徳寺に蝶野も顔をしかめて吐き捨てるように言った。
「同じ貴蝶グループだって事だって恥ずかしいのに」
「まったくだ」
かわいい顔して口の悪い蝶野に、ムダに声のいい蝶名林もうんうんと同意する。
「言っとくけど、学園長の件は上に報告してるから、理事会や貴蝶グループから馘首を言い渡されるの確実だからね」
「それに、お前の件もな。蝶徳寺には貴蝶グループからのペナルティが課せられる」
「なっ!なんだよ、叔父さんがクビって!!それにペナルティってどういう事だよ!」
「さらに、蝶徳寺雅。お前も退学だ」
「は…っ…はぁぁ?!」
突然の退学宣言に講堂内がザワリと響いた。




