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第五話 同類

「お前もAか」


男は小さく笑った。


フードを深く被っているが、

隠しきれない。


整いすぎた輪郭。


低い声。


妙な余裕。


……俺より、ずっと“Aランク”に慣れている。


「追われるの、初めてか?」


「……2回目かな」


男は鼻で笑った。


「その感じだと、地下帰りか」


ドキッとする。


なぜわかった?


俺が警戒したのを見て、

男は肩をすくめた。


「安心しろ。俺もだ」


遠くで警報が鳴る。


だが不思議と、

さっきまでより息がしやすかった。


一人じゃない。


それだけで、

こんなにも違うのか。


「こっちだ」


男が細い路地へ走り出す。


俺は迷わず後を追った。


しばらく走ったあと。


男は廃ビルの非常階段に腰を下ろした。


「ここならしばらく大丈夫だ」


俺も隣に座る。


足が震えていた。


男は俺を見る。


「その顔。最近だろ」


「……わかるのか」


「わかるさ」


男は笑う。


「最初はみんなそうだ」


「?」


「鏡ばっか見てる」


思わず言葉に詰まった。


図星だった。


男は続ける。


「女の反応が変わる」


「店員の態度も変わる」


「世界が急に優しく見える」


胸がざわつく。


まるで俺の心を読んでいるみたいだった。


「……お前もそうだったのか?」


「もちろん」


男は即答した。


「だから気を付けろ」


「?」


「その顔に惚れるな」


男は遠くを見る。


「失った時、死にたくなる」


「……」


返す言葉がなかった。


「……腹減ってないか?」


男がコンビニ袋を投げてよこす。


中にはおにぎりが入っていた。


「Aランクは目立つ。昼間は動くな」


「……詳しいんだな」


「長いからな」


男は壁にもたれたまま笑う。


……ああ。


外見が罪になるこの世界で、

俺はまだイケメンとして生き残れているようだ。


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