原風景的な学園モノ編‐バスの帰り道で
どこか、どこだったか?
大して頭に残らない場所への、帰り道のバス内にて。
「何か、面白いこと無いか?」
「もこうってサイトが面白いぞ」
「それって”もこう”って奴に従わないと、駄目なんじゃないの?」
「いや、そうでもない」
「ふーん」
隣の席の平野、その手元の液晶パネルを、眺めようとしてやめておいた。
さらに俺の隣に目を向ける、俺はサンドイッチな感じだ、ちなみに平野には窓際を所望したが断られた。
そちらには、ボウッとして、虚空に目を向ける女の子。
彼女は田辺、、なんたら、クラス全体には変人キャラとして名を馳せる、そんな際物系統の女子。
なんか軽度に男女問わず全体的に、苛められ、、いや虐めなど我が校にはない!って感じで、ここは避けられてると表現しようか。
そして、そんな女の子がいつの間にか、俺のほうをジッと見つめているのに気づいた。
意外と円らで、純粋そうな瞳、暫し馬鹿みたいに見つめ合い、俺が抱いた感想は「なんだコイツ可愛いじゃないか」だった。
「友達になろう?」
「はぁ?」
「友達になろう友達になろう友達になろう、なって? 駄目?」
「はぁあ?」
「わたしってさ、人付き合いが面倒くさいというか、嫌いというか、苦手というか、でさ。
一人で頭の中でいろいろ考えてた方が、利益出るというかで、ずっと一人でいる為、変な風気取ってたんだけど。
貴方達二人の会話聞いてたら、そのなんというか、くすってきた、特に貴方は面白い、だか友達になろう?」
酷く胸がキュンとした、これは、まさか恋か?!! いやそれはない、あったとしても吊橋効果的な精神病だ。
「いいよ、なろうなろう」
「いいの? 自分で言っといて難だけど、みんなに変な目で見られるよ?」
「それを承知で言ったんでしょ? そも、俺ならそれを気にしないと」
「うん、なんとなくオーケーしてくれる気がしたの、ありがとう。
これで、私達って友達?」
「さあ、友達同士って認識を確かなモノにしただけで、関係性が其処に飛躍するかどうかは、微妙だな」
「それじゃ、一刻でも早く、友達になりたい、どうすればいいの?」
「早計だな、田辺なんたらさん、友達いないの?」
「いないよ、じゃなきゃ、こんなに友達募集の目、しないでしょ?」
「そんな目してるかな? それじゃ、何時もは何してるの?」
「友達いないからね、タクミも予想通り、家に帰って勉強かオナニーくらいしか、やることないよ」
「ちょっと、その前に待って。
まずは被害の軽微な方から、何でいきなり名前で? あとは言わずもがなでしょ?」
「平野が君をそう呼んでたから、名前呼びの方が、親近感沸くでしょ?
あと後の方は、ぶっちゃけて心の距離を強引に詰め、切り込もうかと。
でもぶっちゃけ過ぎて、いまさら顔が熱くなるほど恥ずかしい、手汗出てきて、気持ち悪くなってきた、車酔いかも」
饒舌に早口で巻くしたてる、いつもそういう話し方でタイプだが、今は更にマシンガントーク力だ。
「引いた?」
「引かないよ、むしろ面白いよ、ぐっジョブ」
「うへへへ、うへ、やばい、なんか笑いが抑えきれないよ」
「もっとあっはっはって笑えばいいと思うんだけど?」
「おなか痛くなるから、その笑い方できない」
「腹筋とかすれば、いいんじゃないかぁ↑?」
「それはいいかもしれないね、その声芸なに?」
「某芸人のモノマネ」
そこで、隣の平野に話を振ってみることにした。
「おい平野、こいつも俺たちの仲間にいれようぜ? 仲間になりたそうな目でこちらを見てるし」
「おいおい、まじ?」
「まじ、この子気に入ったんだ」
「まあ、タクミの好きにすればいい、俺は干渉しない」
「そうか、そういうスタンスね、了解」
「・・・・・」
「なんだその目は、やる気か?」
「ははっ」
それだけ笑い声をあげて、平野は液晶に視線を戻した。
「ねえ」
「なに?」
「お腹すいた、何かお菓子頂戴?」
「まじすか?」
「うん、まじ、いやごめん、うそ冗談」
「そうか、、まあ、許す」
突然田辺は、露骨に距離を詰めてきた、隣合う席だが、肩が密着するくらい。
「どうした? 持病の癪か?」
「不謹慎だよ」
「どのくち、田辺昨日、真珠湾爆撃ぃ~とか言ってた」
「あれは、自分でもやり過ぎたと思ってる、反省してる」
「だったらしょうがないな」
「ごめんね」
「・・・・・・」
「お腹すいた」
「また、それか」
話題の連鎖が途切れたのか、周囲には意味深に距離感の近い男女と映るだろう。
まあ、バス内の視覚効果的に、あんまり目立ってないんだが。
「ねえ、どうすれば距離感縮められる?」
「はぁ? もう十分ちかいがな」
「ちがうちがう、友達に関係性を昇華する話」
「ああ、それ続いてたのか、気づかなかった、ああもう友達だろ、俺たち仲良し的な」
「ぜんぜん、わたしは全然、まだまだ親密になった気がしない。
タクミを見て、ああこの人わたしの友達だぁ~って感覚が薄いから、まだ友達ではないでしょ?」
「ないでしょって、確かに、さきほど友達同士って認識を共有しただけだからな」
「仲良くなろう?」
また例の如くつぶらな瞳で見てくる、これは田辺の得意技なのだろうか? 天然だったらどうしよう。
「まあ、いいけど、どうする? なにする?」
「ジャンケンでもしよう」
「子供か」
「子供だよ、まだ大人の行為もしてないし」
「田辺さん、下ネタ好き?」
「べつに、強引に距離感を縮めようとして、失敗してるの、察してよぉ」
「お、おお」
「それじゃ、ジャンケンぽん」
ギリギリでタイミングを合わせられた、勝敗はあいこ。
「あいこで、ぽん」
無難に出すか、ぐーちょきぱーで行こうか迷った、末普通に出した、一瞬の閃き。
「勝った」
「負けた」
「さて、つまらなかったね、次はなにすればいいのかな?」
「いやいや、そろそろ学校着くから、今はこれくらいにしよう」
「あのさ」
「うん?」
「学校についたからって、逃げないでよね?」
「なに言ってんだか、そこで逃げるくらいなら初めから逃げてる、だいたいもう俺たち友達だろが馬鹿め」
「うん、そうだった、ごめん」
しばらく振りに隣を向いた。
平野は液晶に目線を向けたままだったが、俺が振り返ったのに気づき、視線をこちらに向ける。
「終わったか?」
「ああ、終わった、平野も仲間に入るつもりない? あいつ面白いぞ、割とな」
「ああ、様子見する、まだその時じゃないだろ」
それだけ言って、マイペースに荷物を抱える平野
学校についたバスから下車した。




