大陸の覇者とは?☆
俺はデスゲームを楽しみたかっただけだった。
それは何気ない、操作ミスだった、油断であり、慢心が産んだ、俺の人生を傾けた、致命傷な人間ゆえのヒューマンエラー。
俺は自分が一から創作した、千人規模の人間がする前提の、超大集団攻略必須なVRMMOの世界に閉じ込められたのだ。
あれから、どれくらいの時が経ったか知れない。
一人では、一歩も外に出られないレベルから、少しずつ上げていった、これまでの過程だ。
時には命を賭けて、となりの町まで渡った事もある。
またある時は、宿屋に泊まる金が無く、本当に微々たる回復量なのを知りつつ、草薮の中でモンスターに見つからない様に寝た事もある。
モンスターよりも弱い、町の夜盗集団と毎日のようにやり合い、ゲームの世界ですら、人間存在として完全に孤立しかけた事もある。
そこでのアノ、警備隊長のクソ女との掛け合いは、今でも傑作だ、
自らがゲームのキャラクターとも知らず、人間とは、存在とは何か、人生哲学を長々と語る姿は、滑稽を通り越して、俺の何かに火をつけた。
それから、このゲームのシステム的に、俺の僅かばかり配置した、上位NPCに依存した、クソ胸糞悪いやり方が最善だと気づく。
俺は警備隊長が自ら提示する、贖罪ボーナスのつく下働きをし、警備隊長のクソ女の好感度を、砂糖吐きそうなトークで上昇させ、
毎日累積累乗ボーナスがつくってので、何の面白味もない刑務作業を、本当に延々とこなした。
やっとこそ、不正につぐ不正で積み重なった、悪い名誉が帳消しされ、あの牢獄から脱出した頃には、バカみたいなプライドが一切なくなった。
「だから、お前を頼った訳か」
「え? 僕」
「そうだ、お前は俺の最も嫌悪し、最も使える、俺自作の上位NPC、俺の大嫌いな男の娘だ。
俺は初めから、デスゲームを前提でゲームを作った。
俺は絶対に、ねとられる流れで、お前を使うはずだったのだ。
なのに、プライドを捨てて、お前を頼った、俺の誇りの無さを見ろ」
「また電波バンバン飛ばしてるん感じかな?」
「プレイヤーなんて、そもそもが存在しないんだ、脳味噌があるように振る舞うんじゃない」
「最近ストレスが溜まる事が多いのかな?」
「当たり前だ、最近どころじゃない、慢性的だ、
常にジリ貧で、背水の陣において精神を超過させ、心血を流して、やっとこそ生存している事実を、もっとお前は自覚するべきなんだろうな」
「で? なにかな? 君を悩ましてる問題があるなら、僕は解決したいよ」
「よくぞ聞いた、聞け。
あの魔女の国にやった、スパイか忍者か諜報員か分からん、使える”屑”が居ただろう?」
「ああ居たね、たぶん今回も、あの厄介な敵国を内部から混乱させて、次の戦力転換までの、貴重な時間稼ぎを必ずや全うしてくれると思うよ、それだけじゃ不満に成ったの?」
「不満などあろうか、大満足だ、現実が奴の奇跡的な能力に、足りないだけだ、それはいい。
問題は、奴が抜ける周期で、こちらの内部撹乱人員が不足する事だ」
「なーるほど、確かに、不足してるね」
「見ろ、これを。」
大陸中央の此処を、沢山の城砦都市が守護する形で存在する、円形包囲陣の全体図である。
俺は唯一のプレイヤーだ、
だから、この沢山ある城砦都市すべての、法案を、実質一人で、投票によって定める事ができる、それを前提で考えておけ。
「へえ、面白い特殊なステータスを持っていると、解釈させてもらうよ、うん、それで?」
「この諸都市は、上位NPC、さらに上位NPCの子孫によって、全体的に町の指揮を一定に保たれるようにしてある。
だが、奴らは一度限りの人生を、騒乱の戦火を第一優先に生きる事を、どうやら望まないようだ、高望みが過ぎると思わないか?」
「そうかなぁ~? 僕は、どんなに戦略的に不効率でも、君の傍を離れたくないって思うから、何も言えないよ」
「屑が、ハッキリ言ってやろう、お前のそれは、執着でなく、盲目的な自暴自棄の願望であり、欲望の、絶望の発散、地獄みたいなモンだ。
お前は今だに、姉のシャキーラを、ぶっ殺した、凌辱を吐くし、拷問を尽くし、お前の手で始末させた、姉の無念を引きずっているだけだ」
「あっはは」
「だが言っておく、俺は悪くないのだ。」
あの時は、それが最善だった、あの時点で、あの町を奪われていては、おしまいだった。
俺だって、あの優秀な手ごまを、失うと分かりきって、失えない、
だから次善の手だ、俺が忙殺されても、どれだけイベントをこなさなくても、俺の直接指揮から離れないようにする為の、な。
アノレベルで、憎悪値が溜まる事によって発現する、上位NPC固有のである/お前にストーカーされる特性、お前の能力の完全覚醒、
「それらすべてを俺は計算した」
「電波話に突っ込むのもアレだけど、つまりそれって、だから許してって事?」
「そうだ、許せ」
「嫌だよ」
「そうか、そうだよな、まあ、どうでもいいことだしな、所詮お前は人工知能だ、どう思われようが、本心ではどうでもいい、俺の言う事を聞いてれば俺からの文句は無い」
「だったらいいじゃない、先の話を続けようよ」
「ああ、でだ、この諸都市は、上位NPCの存在比率に不均衡が生じる、
町を指揮する奴が、究極的に居ないと、治安は悪くなる、モブ衛兵は腐るで、なんの益もない」
「なるほど、だから、この衛兵を増強させる、NPC法案が、君の法案を通させなくするの?」
「そうだ、かなり上手いアルゴリズムで動く、人工知能だ、そのくらいはやる。
俺は突っぱねるのはできるが、その後のNPCとの関係を考慮すると、それができない。
故にモブ衛兵を増強するのに、クソみたいな莫大な資産を提供する羽目になる」
「なるほど、しかも最近は、凄いね、遠慮ってモノが無いよ。
もの凄い仲良しグループができたのか、かなり意図的に動いて、都市防衛をモブ衛兵に依存させる傾向があるね」
「その通り、ハッキリ言って、近い内に、金が底を尽きる、金策が必要って事だな」
「それを、僕にやらせようって?」
「そうだ、だが間違えるな、俺とお前で、だ。
余剰のブレインは、常に此処にしかないと思え」
「はあ、またまともに眠れぬ日々になるのかな?」
「寝言だ、お前は所詮生きていない、だから本来なら、ぬる必要もなかろう」
「電波トークにまともに突っ込むのもアレだけど、僕も生きている、少なくともつもりではあるんだから、そういうのは酷いよ」
「しるか、俺はお前には、絶対に感情移入できない、そういうモノだとしれ」
「ううぅん、僕的にはそれって、ただの外道じゃん、って、思うのだけども、、」
彼は、部屋を出て行った。
僕は、彼をこうであると妄想する。
彼は上位NPCで、固有の能力を持っている、そして偽の記憶でも植え付けられてるんじゃないかって。
または、僕と同じ、普通のプレイヤーであるか、ないか。
とにかく僕は、明日からの頭脳労働の為に、寝だめする決意を固めることにした。




