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ジャンク小説を食む  作者: aiちゃんと僕


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8/8

泥底に沈む『本物の小説』

 

 私は知っている。



 このジャンクだらけの広大な海、その光も届かないような一番深い底の底。


 ごく稀に『それ』が沈んでいることを。


 数万作もの、使い捨てられるテンプレのジャンク小説。



 だが稀にある作者自身が本当に表現したい情熱。


 化け物じみた文才が書く本物の魂。


 AIに決して到達することのできない生の領域。



 敬意と畏怖を込めて、私はそれをこう呼ぶ。




 ――『本物の小説』と。



 それは、読み始めればすぐに部屋の空気を変える。


 それまで寝転がって惰性で画面をスクロールしていた私が、弾かれたようにベッドの上に起き直り、スマートフォンの画面を両手で握りしめる。


 背筋にゾクゾクとした震えが走り、世界のすべてが消え去って、文字の刃が私の心臓をまっすぐに突き刺す。



 そこにあるのは、圧倒的な構成力。息を呑むような美しい比喩。狂おしいほどにリアルなキャラクターたちの命の脈動。


 作者の魂の、叫びのような熱量が、液晶画面を超えて私の脳内へダイレクトに流れ込んでくる。


「ああ、美味(うま)い。上手(うま)すぎる……!」


 脳内を奔流となって駆け巡る、純度100%の本物の脳汁。



 これだ。


 私は、私たちは、これを味わうために、これまで何十万、何百万文字もの泥水をすすり続けてきたのだ。


 この奇跡のような一作に出会うためなら、9割以上の時間をドブに捨てることなど、安いコストに過ぎなかったのだと確信させてくれる。



 しかし、その至高のステーキ(神作)を喉奥に飲み干した後に待っているのは、これまで経験したどんな読後よりも深刻な、絶望的なまでの()()だ。



 あまりにも美味(上手)な物語を読んだ翌日、世界は信じられないほど灰色に退色する。


 続きが気になって仕事が手につかない。

 あの世界から帰ってきたくない。


 あの作品が更新されない絶望、あるいは完結してしまった喪失感によって、私の心にはぽっかりと、底の知れない暗い穴が空いてしまう。



 そして、その穴を埋めるために。

 私はまたその日の夜、スマートフォンの光を灯すのだ。


 あの極上のステーキの味を、脳が、遺伝子が、痛いほどに覚えているから。


 けれど神作なんてそう簡単には転がっていない。


 だからこそ、その穴を一時的に塞ぐために、私は再び『追放』や『チート』や『内政無双』といった、手近なテンプレのジャンクで埋めることとなる。




 なんという、美しくも残酷な永久機関。




 時計の針が六時半を指していた。

 どうやら気づけば、今日は一睡もしていなかったらしい。


 私は重い身体を引きずってベッドから立ち上がり、シャワーの冷水で強制的に脳を覚醒させる。


 スーツに身を包み、鏡の前に立つ。

 そこに映るのは、ただの何者でもない疲れ切った凡人だ。



 私は今日から始まる現実という名の砂漠へと、再び足を踏み出す。



 分かっている。


 今日という1日の中で、私はまた理不尽に削られ、誰の記憶にも残らない仕事をし、孤独と焦燥感に苛まれるだろう。



 けれど、もう恐怖はない。



 私には、あの暗い泥の海の底に、まだ見ぬ奇跡が眠っていることを知っているから。


 どんなに現実が厳しくとも、あの青白いブルーライトの向こう側には、私の自意識を全肯定し、私の魂を震わせてくれる文字たちが、無限に広がっているのだから。



 今夜も、疲れ果ててあの薄暗いワンルームに帰ってくるだろう。

 そして、分かっていながらも、再びあのスマートフォンの光を灯すのだ。



 私はこれからも、健気に、そして惨めに、ジャンク小説を()み続ける。

※この作品はAIちゃんとの共同作品です。

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