ハミと矯正器具
次結果が出なければ去勢と言われてから1か月。季節は真夏になり7月の1番暑い時期になった。この季節汗かくしほんとに嫌いなんだよな。
また千葉のエピックステーブルに放牧に出された。俺の玉が無くなるんじゃないかと思って毎日の調教を真面目にやっている。
過去ここまで真面目だったことは無いだろう。コーナーでの手前を変えるタイミングは今まで無意識でやってきたが意識してやるとなかなか難しい。
そして俺は気がついたんだが若干右手前の方が得意みたいだ。京都のコーナー上手くこなせたのはこれのおかげかな。
大井競馬場は右回りなので俺にはピッタリだしかなりいい。どちらかと言うと盛岡の方が苦手だったのかもな。
あ〜今日も疲れたし、手入れ中に寝るか。まあ筋力も付いてきたし普通に走ればどうせ勝てるだろう。
帰り道にそんなことを考えていると
「場長、前進気勢あるけどなんかハミ受け今ひとつなんですよね。もう少し求めたいのでトライアかユニバーサルにしていいですか?」
と騎乗している若手であろうスタッフが話し出す。俺の併せ馬の相手に乗っているのが場長なんだろうな。
「まあフラットワークから少し舌超過する時あるし、トライア明日から使ってみるか。まあビットガードでもいいけど」
あ、やべ普段準備運動飽きてくるから舌を変な方向にして遊んでいるのバレてるなこれ。
「じゃあ明日からトライア使ってみます。体柔らかいから前進気勢は悪くないんですけどねもう少しあればもっと走りますよこの馬」
「まあもっと走ってもらわなきゃ困るからな。そろそろレースでも本気で走ってくれよ」
わかってるよ、やらなきゃ去勢されちまうんだし次走はガチだよ俺も。
翌日トライアビットに変えるとハミの楽なところは分かりやすい。てかこいつ若いけど乗るのかなり上手いな。
「これで行きましょう。あんまりにもハマりすぎているので乗っててずっと楽しかったです」
「でも使い方ミスると口硬くなるから競馬場でどうなるかだよな。総合やってたお前は綺麗に乗れるから問題ないけど」
「まあみんながみんな上手く使える訳では無いですからね。ただ集中切れやすいのは相変わらずなので次走ブリンカーつけさせたいですよね。競馬行く少し前くらいに付けてみます」
「いいよ、お前は十分に上手いから好きに乗れ」
なんかいいなこんな職場。お互い尊重し合っててこんな感じで生きられたら、俺もやる気出て楽しいんだろうな。
さてと、俺は東京記念に向けて少し集中するとしようか。
放牧に出てから2ヶ月近く経った8月の中旬遂に大井に帰る時が来たようだ。
「おはよ、大井帰ろう。絶対に勝てよ」
俺の調教を付きっきりでやってくれた若いスタッフのたかなしくん。お前にはかなりお世話になったからその分も勝ってやるよ。任せとけ。
馬運車に乗り込み久々の競馬場に向かう。この揺れも久々だな。リラックス出来たしリフレッシュ休暇としてはこれ以上ないメンタルだ。
しばらく走り続け馬運車の扉が開けられる。かまだが俺を馬運車から下ろすともりかわくんが迎えに来ているのが見えた。
「おかえり。今回は色々対策決まったし、東京記念勝つぞ。……いや待って、流石にデカくなりすぎじゃないか?」
久しぶりだな。まあ今回は俺が圧勝して顔立ててやるよ。てかそんな体変わったのか俺。
「やっぱそうだよな、デカすぎる。」
かまだも俺の体の変化に気がついたみたいだ。
帰厩して最初に体重計に乗る。なんと大幅に増えて557kgになっていた。やばい過去最高を大幅更新の新記録すぎる。
あさい調教師も驚きの表情を浮かべている。
「2ヶ月でここまで馬って変わるんだな。でも太め感はそこまで感じないし、これあるぞ」
「いやこれは本格化したと考えていいですよね。」
もりかわくんとあさい調教師の2人がニコニコで話し合ってる。俺やる気はリフレッシュ出来たからだいぶあるし、去勢もさせないから任せてくれよ。
輸送して1日厩舎でのんびりした俺は遂にいつもの日常に帰ってきた。帰厩後初調教だ。今回は顔にメンコという被り物をする。そしてそのメンコには視界を狭くするプラスチックが付いている。
「森川くん、とりあえず育成から聞いていたトライアとブリンカー付けてみてどうか教えて」
「分かりました。とりあえず今日は軽くフラットワークしてキャンター2周して帰ってきます。」
「それでいい、タイムは出さなくていいから。とりあえず感触優先で頼む」
運動を始めると視界が狭まり前しか見えないから余計はなものを見れないから走りに集中するしかない。というか人間の時とほぼ同じ視界の広さだしいいかもしれない。
馬場に入りキャンターをする。いつも通りに走る。特にこれといって特別なことをしていないが集中はできている感じがするし、自分自身調子の良さをひしひしと感じる。
調教を終えて帰るとあさい調教師とかまだくんのお迎えが来ている。
「どう?」
一呼吸を置いて嬉しそうな声で「大正解」と言って次の調教へともりかわくんは向かった。その足取りは今まで見る中で1番軽そうな感じがした。
ハミはかなり重要です。
今回登場したトライアビットとユニバーサルビットはハミ受け改善にはかなり効果が個人的にあると考えています。
トライアビットは競馬場でもよく見かけますが、効果がかなり騎手の技量によって左右され逆に悪くなることもあるので注意が必要です。
ユニバーサルビットは乗馬でも広く使用されていますが、かなり強いハミなので繊細な操作が必要になります。
逆に弱いハミはゴムバミなどがあるので機会があれば登場させたいです。
良ければ競馬場で馬を見る際には体だけではなくハミを見てみてください。様々な種類があって面白いです。




