表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/42

サファイア賞

いよいよ復帰戦だ。体の調子はすこぶるいいぞ。


盛岡競馬場に来てよかったところは、朝めちゃくちゃ早く起きて輸送する必要が無いところだな。そのまま直で行ける。


サファイア賞は夕方発走みたいなので午前中はゆっくり馬房の中で思い思いに過ごす。


昼にみなちゃん特製の勝負飼いを食べて準備も出来た。


「よーし、行くよ〜」みなちゃんに連れられて馬体重を測りに行く。


そうしてそれが終わるとパドックの近くの装鞍所で馬装が始まる。


相手は特に強そうな馬も居ないし、中央の馬とはちょっと劣るかなって印象だ。


みなちゃんは少し馬装が遅いから大人しく待っておく。


今日は12頭中1番外の12番だしスムーズに行けそうだな。


「リアン大人しいから馬装みんなについていけて安心するよ〜」


まあ可愛い子を困らせるほど暴れたりすることは無いしな。


遠くからじいちゃんが来た。


「よし、リアン。今年の厩舎初重賞はお前で取るからよろしくな」


じいちゃん任せて。ゆっきーにかっこいいところ作ってやるから。


中央競馬の時よりもやる気が出るのは何故だろうか。環境なのかな。まあ今日は絶対負けられない。


時間になりパドックへと向かう。中央競馬と比べてもそんなに引けを取らない綺麗なパドックだ。真ん中には白でOROの文字が書いてある。


パドックでは中央競馬に比べて人は少なく、客層もおじさんが多い。まあ日曜日だから家族連れもそこそこいるけど、ギャンブルの場所って感想だ。


ただ見る目はみんな真剣でこれがプロギャンブラーかと驚かされる。


電光掲示板を見てみると12番の人気は1.1倍。圧倒的だ。2番人気は1つ内の11番クロスオーバーランで12.5倍、3番人気の3番アンサーブレインは21.0倍と俺以外は全く人気になっていない。それどころか5番人気以降は100倍超えている。


これは勝たなきゃ不味いし勝って当たり前だよな。


少し緊張して歩いていると、時間になり騎手が跨る。


「よーしリアン。ファンの人の前で俺らのコンビの強さ見せつけてやろうな」


「楽しみにしてるね〜」


当たり前だよ。みなちゃんにいいとこ見せてやるよ。


「美奈ちゃんにいいとこ見せてやるよ」


全く同じこと言うなよ。まあ息があってると思えばいいか。


返し馬はゆっくりと前へ進んでいく。ちなみに芝は少し長めでめちゃくちゃ走りやすいわけではない。


「そうそう、それでいい。Goodだ」


スタート位置はスタンドの反対側の2コーナー出口位からスタートする。


「裕貴ー、そいつめっちゃ良いな」


「へへっ、俺の愛馬なんで。辻さんには渡さないですよ」


あ、このおっさんが何時ぞやのリーディングジョッキーのつじさんか。


「いいね、ミスったら俺乗せてもらうわ」


「お、じゃあ俺も次乗せてもらおうかな」


「村重さんまで…やめてくださいよ」


こいつの周りはいつも賑やかだな。


さて、コースに戻る。2回坂を登らなきゃ行けないが、まあ坂路で鍛えられてきたからある程度はできる。


時間になり9ヶ月ぶりの実戦を告げるファンファーレが鳴る。初めて聞く音だな。


ふう、やっぱり少し緊張するな。


しかしゆっきーは意外にも落ち着いている。流石なんやかんやプロジョッキーなだけある。


すんなりと他馬はゲートへと入り、ゲートへと入るのは1番最後の俺だけになった。


ゆっくりとゲートに入りスタートが切られた。


好スタートからそのまま前へ行く。


他の馬とはスピードが違うのか追っている内側の馬を見ながらすんなり先頭を取れた。


3コーナーの坂を下って4コーナーへと入る。


「おーい、少しペース落とすぞ」


ゆっきーからの指示もあり、先手は取りきったのでペースを落ち着かせて1回目のスタンド前の坂を登る。スタンドからは歓声が聞こえる。


2番手との距離は3馬身だろうか。


まだ全然キツくないな。2回目はどうかわからないけど。


そうしてなかなか競りかけてこないなと思いながら1コーナーの入り口で少し後ろからプレッシャーをかけてきた馬がいる。クロスオーバーランだ。


その後ろは10馬身くらい空いている。


やっぱ人気は少ししてるだけあって力はあるな。


2コーナー出口のスタート位置まで戻ってくると併せ馬の形になった。


しかし俺らは持ったまんま、相手はムチを入れて気合いを入れながらだ。


手応えはこっちが優勢だ。向正面の中間地点くらいで少し手綱が短くなった。


「よし、少しペースあげて行くぞ」


下り坂にかかる頃にはまた6馬身のリードを付けた。


そのままコーナーを綺麗に曲がることを意識して直線コースに入る。


既に10馬身以上のリードがあり、ゆっきーの手も動いていないが、差を広げるために坂を力強く駆け上がる。


スタンドからは中央程では無いが歓声が上がる。


ゴール板の前でスタンドに向けてゆっきーは指差しをしてゴールした。


「よっしゃ!ナイスレースありがとう!」


首筋をポンポンと叩きながら俺の頑張りを労ってくれている。


人生初勝利か。悪い気分はしないな。最高の気分だ。


すれ違う騎手みんなから「おめでとう」と声をかけられる。終わればノーサイドってこういうことなんだろうな。


「いや本当にありがとう。勝ちまくって中央殴り込みに行こう」


いいね、その意見は賛成だよ。まだ負けた相手たくさんいるしな。


ウイニングランをして引き上げる。チラッと見えた掲示板には2着11番との差のところに大差と書かれていた。その後ろも大差みたいだから、結構バラバラにゴールしたんだな。


まあ当たり前だな。力を出せばこんなもんだよ。にしても突き放して勝つのはやっぱり気持ちがいい。


検量室前に帰るとみなちゃんが待っていた。


「よっしゃー!レコードで勝ったー!2分30秒とかしばらく更新されないでしょ!」


「リアンー!お疲れ様、有言実行で勝っちゃうなんて凄いじゃん〜!それもレコード!裕貴もありがと〜!」


「いや俺じゃなくて馬が強い。でも美奈ちゃんにいいとこ見せられて良かったよ」


笑いながら勝利を喜んでいる。なんだこいつらいい感じじゃねえかよ。イライラするわ。


「こしあん、レコードとは頑張ったな。勝つとは思ってたけど3秒も2着より早いし、19馬身離すとは思ってなかったよ」


みなちゃんで夢中だったがその後ろには、はるきさんが居た。来てたのか。


てか19馬身ってほんとかよ。結構離してたな。それに3秒差ってなかなかないでしょ。


「本当は生産の秋元ご夫妻も来る予定だったんだけどおばあさんの方の体調が悪化して来れなかったんだ」


マジか、おばあちゃん元気か気になってたんだよ。次勝ってるとこ見せてやりたいな。


てか秋元って言うんだ。じゃあ秋元のおじいちゃんと、村上のじいちゃんって分けないとややこしいな。


「まあ何はともあれおめでとう、嬉しかったよ」


はるきさんに撫で回される。


「リアン、ありがとうよく頑張ってくれた。ただここは通過点もっと勝つぞ」と村上のじいちゃんがそれを見て言う。


任せてくれ。俺もそのつもりだ。


そうして勝つと記念写真を撮るみたいで肩にサファイア賞優勝と書かれた青色の優勝レイなるものが掛けられた。


遥輝さん、村上のじいちゃん、みなちゃん、そして馬上のゆっきーの4人で写真を撮った。


勝ったらこんなことも出来るのか幸せかもしれない。


明日は休みだろうし今日は初勝利の余韻にでも浸ろう。

初勝利が22話と遅くてすみません!

とりあえず今日で毎日投稿終わりです。

次は24日0時になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] おお、やっと初勝利だ。 でもまあ実際は1勝するだけでも大変、オープン馬なんか上澄みって世界ですもんねえ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ