相棒と能力試験
新天地盛岡競馬場に来た俺は早速調教を始めていた。
しかし追い切りだと、併せられる馬がいないので単走だ。
どうやら再来週に能力検査というものがあるらしくそれに合格しないと、ここで競走馬として走ることが出来ないらしい。
それに向けてペースを上げて走っている。
「いやー!やっぱこの馬すごいですね先生」
馬上から話すのはじいちゃんの厩舎所属の騎手であるさくらおか君だ。俺は下の名前がゆうきだと聞いてからゆっきーと呼んでいる
こいつ男版あかねちゃんみたいな感じで毎朝厩舎に来ては話しかけて来る。休憩時間も俺の馬房の前で飯を食ったり、テレビ置いて一緒に見たりもしている。
個人的にはかなり好きな人間の部類だ。
「うちの隠し玉だからね。今年の芝路線こいつで総ナメしていくよ」
「鞍上はもちろん…僕ですよね?」
ゆっきー図々しいぞ。お前去年5勝なの知ってるからな。
「どうかな…私は嫌かも〜」と笑いながら言うのは俺の担当厩務員のみなちゃんだ。なんで馬やってるんだと思うくらい超可愛い黒髪で三つ編みの女の子だ。
「なんで!美奈ちゃんは俺の味方だと思ってたのに」
「何言ってるんだ昨年デビューしてすぐ落馬事故したやつに任せられるか!こいつにはリーディングの辻君がお似合いだよ」そう笑いながらじいちゃんは言う。
まあ落馬事故で殆どの期間休んでるらしいから5勝でも仕方ないんだけどね。
「じゃあ乗れるようにたくさん勝ちます!」
「たくさん勝つためには、まず調教タイムを俺無しで完璧にしてくれないと困るけどな?」
隣にいる馬に乗っている調教補佐というそこそこ上の役職であるねづさんが、ニヤニヤと話してくる。
「ね、根津さん…それは…まだ練習中なので頑張ってます…」
「早く1人前になってくれないといい馬取られちまうから頼むぜ」
厩舎について馬装を外して馬房へと返されるとふかふかの藁で寝てしまう。
なんやかんやこの厩舎の雰囲気は好きだ。みんな暖かくていい空間に居られる現状が嬉しい。
そうして日は着々と進んでいき、能力検査の日になった。
まあまず不合格はないだろうと確信している。
厩舎を出て装鞍所で鞍を付けて準備は出来た。
「よし、頑張ろ。まあリアンは普通に走れば余裕で合格でしょ〜」とみなちゃんが言う。
能力検査ではパドックは歩かないみたいでそのまま本馬場へと向かう。
俺以外は3頭みたいだ。古馬のようだ。
返し馬をするとダートだけど走りやすい。タイムは出やすそうだよな。
ちなみにコースは左回りなのだが、なかなかトリッキーなコースで力がいる。
「よーし、未来のリーディングジョッキーの俺と未来のJBC勝ち馬のお前とのコンビお披露目だ」
とりあえず勝ってからにしろよゆっきー。
ゲートに入り少ししてスタートする。
スタートダッシュはいい方なのかぐんぐんと引き離していく。
3コーナーに入ると一気に下りになるので、スピードを上げすぎないようにする。
そうして以前大きな差を保ったまま4コーナーを曲がる。
直線には中山競馬場のような急坂があり最後の所で少しキツくなるが余裕だな。
追ったりされることなく余裕の圧勝だ。
「速え!速すぎるってお前!」
馬上でゆっきーが大笑いしている。テンションがめちゃくちゃ上がってるな…
帰るとじいちゃんもニコニコだった。
「よし、それでいい。裕貴、お前で6月最後にあるサファイア賞行くか!」
「え、サファイア賞って芝重賞じゃないですか、重賞乗せてもらえるんですか!?お願いします!」
どうやら次走はサファイア賞って芝のレースに決まったみたいだ。
「裕貴に経験積ませるためだ、リアンも頼むよ」
任しとけ今日みたいにぶっちぎりで勝つから。
「でも2400リアン走れそうだよな」
「問題ないです、多分3000くらいなら行けるんじゃないですか」
2400もあるのかよ辛いな、多分坂2回走ることになっちゃうよ。
「よし、お前と俺で天下取るぞ!」
仕方ないのでゆっきーのために2400走ることにしよう。




