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未勝利戦まで

初のレースから半月。暑さが続く中俺はレースの3日後に放牧に出され、また宇治セイントフィールドに帰って調教を日々強度を上げながら積んでいる。


俺の上にはさかぐち君が乗って調教を付けてくれるので、のびのびと走れて気持ちがいい。


今日も満足そうな顔で俺から下りたさかぐち君が馬装を解きながら口を開く。


「いやーこの乗り味でタイムオーバー食らっちゃうって競馬じゃよく分からんな。6秒もインペリアルロードに付けられるとは思わなかったよ」


ごめんなー、俺も最初はやる気あったんだけどありゃ心折れるって。


「仕方ないだろって顔すんなよ…まあきっと勝てるよ」


「でもお前乗ってる中だったらダントツでそいついいだろ」


横から熊みたいなおっさんが話に割り込んできた。


「やっぱり狭間さんもこいついいと思いますよね。走り方がもう気持ちがいいっすよ」


「まあな。坂口も上手くなってるから走り方教えてやれてるんだろうよ」


「マジすか?あざす!」


「まあそんなのどうでもいいけど、そいつマシンに入れたらこっち来てくれ」


そうやって忙しなく日々がすぎていく。


あっという間1週間が過ぎて火曜日。輸送の日になった。


この3週間保科の顔見ないで済んだからストレスが抜けまくっている。


うん、調子は前よりもいいと俺でも思う。乗る人も上手くなってるからいい仕上げになってるでしょ。


さかぐち君も輸送用バンテージを巻いてレザーシーンをかけている時に「うーんこのビカビカの馬体たまんねーな。今回の仕上げ完璧だし外厩として文句言われんでしょ」と絶賛だ。


まあ保科以外の人のために次は真面目に走ってくるわ


「頑張れよ」最後にさかぐち君の声が聞こえて馬運車のドアが閉められた。


やってやりますか。


しばらくするといつも通りトレセンに帰ってきた。


レンがまた馬運車から俺を降ろしてくれる。


「よっ、今保科さんはフランス行ってるから居ないぞ。その間仕上げて帰ってくる前に勝っちゃおうぜ」


お、保科居ないのかそれは最高かもしれない。


「ちなみにレースは来週の日曜日の阪神芝1800になったぞ」


またすぐ使うんかい…まあ仕上がってるからいいけどさ。


ちょっと距離延びるしゆっくり走ろう。


「今回は輸送の時間も前より短いし良い状態キープして走れそうだよね」


まあ確かに愛知と兵庫だったら兵庫の方が近いもんな。


そうしてすぐに調教は始まる。2日後には1週前追い切りをしてその次の週の最終追い切りの日になった。


「いやー今日は暑いなぁ」


レンが馬装をしながら言う。


今日はチラッと聞こえた話では坂路で俺と同じ2歳馬と一緒に走るみたいだ。併せ馬と言うらしいな。


「蓮、馬装終わったら曳いておいてくれ」


「あ、はいわかりました」


たくさんの馬が居る馬場で曳馬をする。


しばらくすると調教係のさやまがやってきた。


「ひっさびさに乗るなこいつ。仕上げてあるしサラッとでいいな」


そうして小さな走路コースで他の馬と一緒に準備運動をする。


速歩で体を解しつつストライドを伸ばしていく。


準備運動が終わりいよいよ坂路へと繋がる小道を通る。ちなみにこの小道も地味に傾斜がついている。


調教では左が速い馬右が遅い馬で走る場所を変えている。


「じゃあ佐山さん、少し先に行ってます。」


併せ相手のチョコミントアイスって変な名前の馬に乗っている中澤が話しかけてくる。


「おっけー、多分こいつ速いけど追ってでも付いてくれればいいから」


曲がり角を曲がり長く続く直線坂路へと向いた瞬間走る。


「うお、こいつ今日めっちゃ動くわ」


10馬身以上前にいたチョコミントアイスに緩やかな右カーブの所ですぐに追いつく。


追い出すと流石に一筋縄では行かないがそれでもじわじわ差が広がっていって最終的には4馬身ほど離してゴールした。


厩舎へと帰る森の道を通っている時中澤に「タイムオーバーする馬じゃないって」と笑いながら言われた。


まああれは全部偶然重なっただけだから仕方ないでしょ。


「こいつ次絶対勝つから見といてや」


「そうしますわ」


そんな会話をしながら厩舎へと帰る。


帰るとレンが迎えに来ていた。


「蓮くんこいつめっちゃ動くわ、怖いくらいよ」


「やっぱ僕の担当馬ですからね!でもやっぱりリアン凄いんですね」


「こりゃクラッシック行かなきゃ行けん馬よ」


任せとけ。とりま次勝って大っきいとこ行ったるから。そう心に決めた。

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