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死霊術師のスローライフ  作者: おぼろくらげ
――二人の選ぶ道――
28/28

余話:ある高位司教の呟き。

本日更新二回目。

読んでいてキツいかも知れません。

合わない方もおられると思いますがご容赦ください。

 私は()()に出会うまで、自分の役目を知らなかった。

 誰よりも深く深く神学を学んだのに、人を、世界を見ていないとして北方の神殿へと左遷されて、こんなはずではないと世界に対して鬱屈した感情を抱えていた。


 自分はこんな場所で終わるはずなどないんだと。

 だから孤児院の運営を任された時も、私の能力に見合わない、大したことのない仕事だと思っていた。


 でも、それは間違いだった。

 そこにこそ神の意志はあり、私の運命もそこにあったのだから。



 ――その子を見出した時、これこそが神の意志だと思った。



 生みの親を亡くし、私のいた孤児院に引き取られてきた少女。

 褐色の肌と紫水晶の瞳を持つその娘は、魔族の血を引くとされ、周囲から忌避された末に、私の所へと流れついた。

 同じ人間であるというのに、人が人を忌避し差別するというのは、神の教えには反している。


 しかし、魔族は人間の敵。

 その血を引くのなら、拒絶するのは当然。


 汚らわしい存在なのだから、より深く身を慎み、より厳しく罰を受けるのは当然のこと。


 ……そう。

 それは、定められていること。


 だから私も、彼女には厳しく接した。

 厳しく躾を行い、神の御心に沿うようにと育てた。

 鞭をもってその身に教えを刻み込むのは、彼女自身の為なのだから。


 その身に流れているのが穢れた血だと、痛みをで教えることも。

 その穢れを薄めるためには、神の教えに従うしかないことも。


 これが間違っているとは思わない。

 だって……


 ああ、ああ!


 あの子は、あんなに輝かしい、信仰の光を手に入れたのだもの!


 物覚えが悪いと折檻をした後で、反省室に閉じ込めた時に、その傷を癒すために、彼女が発した光。

 誰より深く神と繋がった、あの光。

 息を吸って吐くのと同じように、加護の力を引き出す、あの……!


 あれを初めて見た時の、魂の芯から震えるほどの感動は、今なお薄れていない。


 ――だって、だって!


 私が、間違ってはいないということだもの!


 泥の中に人を落とし、そこから這い上がるものにこそ神は恩寵を与える。

 私という試練を与えるものと、彼女という穢れたものが出会ったということは、それを満天下に示すための運命。

 そして私こそが、神の教えを正しく理解しているということ!


 私はすぐさま、彼女とともに王都の神殿に上がった。

 いかにして神の加護を引き出せば良いのか、それを最も正しく知るのは、私なのだから。

 彼女を見出し、導くことは、神殿の誰もが認める正しい行いだった。


 とは言え彼女ほどの()()は王都にすらいなかったけれど、王都にも彼女のような子供たちはいた。

 だからその子たちを彼女の様に教育し、鍛え、力を持たせた。


 その時の大地の神殿は、あの忌まわしい邪竜と戦った結果、戦力が摩耗していた。

 それこそ神殿という組織の維持も難しいほどに。


 そんな折に、私の提唱した道は強い戦力を得られると、教団内部で高い支持を得るに至った。

 あの頑迷な前聖騎士長のように反対した者もいるにはいたけれど、彼女が出した実績の前には口を閉ざし、私に道を譲るしかなかったのは、内心で喝采すら叫んだほどのことだった。


 まだ最年少ということもあり、彼女はまだ正式に聖騎士の位を授かってはいないし、そこまでは私の力でも出来はしなかった。

 これもあの非主流派の抵抗かと思うと悔しくもあるが、それも彼女が私の()()として完成するまでの事。


 彼女は――私の最高傑作は、聖騎士などというところで終わるようなものではない。

 あらゆる魔物を、それこそあの邪竜すら打ち倒せるだけの力が、あの子にはある。


 それだけの力を神が……いや、私が与えたのだから。


 命を削って戦うことこそが、あの子の存在意義。

 その力をもってすれば、聖騎士以上のものになれる。

 そう……正しきもの、神の使い、魔を祓うもの。



 ……勇者に。



 それも命を懸けてすら邪竜を倒せなかった太陽神の勇者のような、出来損ないの勇者ではない。

 そのニセモノの栄光を盾に栄華を誇る太陽の神殿や、それに追随しているだけの海洋の神殿など、過去の遺物に出来る……本物の勇者。


 その時、私は勇者を産み育てたものとして、最高の地位に登る事が出来る。

 本来私があるべき場所。


 大地の神殿の……いや、この国全ての信仰の頂点に立つ教皇。

 ……あるいは、聖母にだって。


 あの子は神の子だもの。

 それくらいのことは当然に出来る。そうなるように私が育てたのだから。


 ああ、ああ。

 その日が待ち遠しい。


 ユーミ。

 ユーミ・アルティール。


 私の愛しい仔。

 早くこの世界を、光で照らすのです――。




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