第二十一話 翼人さんいらっしゃ~い
今回もちょっと長めです。
【そこもとが医師のリーナどのか?お初におめにかかるでござる】
………あの、どちら様?
【拙者、天界の創造神でござる】
はぁ……テンカイノソウゾウシン?
銀狼……銀色の髪、銀色の耳、銀色の尻尾に銀色の翼の男の人。
………服装が中近東あたりのズルズルなのがミスマッチかと思いきや、綺麗なお兄さんは何着ても似合うのね………。
でも某有名アニメの忍者のような口調がやたらと浮いている。
……もしかしてこのヒトも和神の知り合いの神様?
【さよう。拙者、翼人の祖。生まれながらにして背に翼を持ったが為に、地上を追われた身】
そっか。羽が生えていたから異種扱い受けられたのか……。
【宙の神の意思を賜り、天空にて世界を築き、子孫を増やし、今に至るでござる】
なるほど。向こうで言うところのラ〇ュタを作った訳ね。
で、そのソウゾウシン様が私に何か?
【どうか天界を追われし者をお救い下され】
え?テンカイヲオワレシ……って、天界から追い出されそうって事?
【御意】
しかも『医者』の私に頼むんだから、怪我が病気を患っている…と?
【御意】
それじゃ、患者さんを連れて……って!私まだ起きてないじゃん!!
普段着に着替えて和神を待ってたんだけど、ちっとも現れなくてさ。
丁度昼時ってのもあって、トラジロウ…もとい!……マルカに作って貰ったお昼ご飯……チャーハンと餃子と中華スープが美味しくてお腹いっぱいに食べたら睡魔が襲って来たんだっけ……。(ママンや王子様とゆかいな仲間達はあのあとすぐ帰った)
やる事も無いしって事で、お昼寝をしてたのよね。
だって私まだ3歳だもん!お昼寝は幼児期の成長にはとても重要なんですよ。
パチ
「へんげ!じゅーいになぁりぇ!」
ボン
「よし!変身完了!さて…と……変化!診察室!」
ボン
和神に教えて貰った通り、頭にかつての診察室を映し出し、変化の呪文を唱えると……はい!準備完了!
さ、いつでも患者さんいらっしゃ~い♪
ッス…
「☆△☆〇☆□☆◇~!!」
「☆☆☆」
「☆☆…」
あらら……言葉が通じないみたい。
私と同じウサギの耳をつけた…推定年齢15歳くらいの少年と、妹らしき少女と弟らしき幼児が今回の患者らしい。
困ったな。これじゃ問診が出来ないぞ?
『リーナは翻訳のスキルを取得した』
おお!何というタイミングで!
これで患者さん達とお話しできるじゃん!
「こんにちは。ここは獣人界で私は獣医のカチェリーナ。リーナと呼んでね?」
「え?うわっ!言葉が通じる……ジュウジンカイ?ってもしかして………」
「……兄貴、あたしらやっぱ“落ちた”んだよ」
「しょうれしゅ!しょのうえ、いのちまでたしゅかりまちたでしゅ」
あたふたする長兄に、やけに冷静な長女、そして言葉が丁寧な次男……でもさ、この子達って………。
「話は創造神(?)から聞いてるわ。さて、お兄ちゃんから診せて貰おうかな」
「ぼっ…ぼぼぼぼ僕、又八って言います!あのっ……創造神様に会ったんですか?」
「ん……まぁ、ちょっと…ね。で、マタハチくんのその手首や足首の“痕”や背中のひっかき傷や火傷が無性に気になるんですけど?」
「ああ!神様ありがとうございますっ!僕らの願いを聞き届けてくれたんですね!貴方のお導きに従い“嘆きの塔”から飛び降りて良かった!!
菖蒲!平太!僕らは…僕らは……」
恍惚とした表情を浮かべ胸の前に手を組んで、天井を見上げるポーズって……お前は一昔前の少女漫画の主人公かっ!!
ってか、今キミの眼中に私はいってないよね?
トントン
「ん?」
「あの…兄はちょっと性格がアレでして……出来ればあまり気にしないで下さい。何しろさっきまで監禁されていたんで…」
「しょうれしゅ。くしゃりにちゅながれてたんれしゅ。くびとおててとあし」
「は?」
「皇太子様の愛人として囲われてたんです。で、ソレがお后様にバレまして……」
「な……なるほどね。そりゃあ神様にも縋りたくなるわ。貴方達の世界にも嫁姑戦争ってあるのね……」
「いいえ!誤解の無いように付け加えますが、決して、同意ではありませんっ!!!向こうの一方的ではた迷惑な片思いですっ!!
「しょうれしゅっ!!いのちがけれだっしょおちたんれしゅ!」
力拳を作ってそう力説するのは冷静な次女……確かアヤメ…さんだっけ?…と、言葉が丁寧な次男…ヘイタくん
要するにマタハチくんは、独占欲旺盛で、Sっ気が入っていて、執着質な皇太子様に惚れられてしまった…と。
とりあえず治療ね……。さて、どうするか……
トン
……ぐぅ。Zzz
「先生、これで良いですか?」
「ちりょお、おねまいしましゅ」
「………り、了解」
あーだこーだと未だのたまってる兄の首筋目掛けて手刀を下ろしたのは………妹さんに抱っこされた弟くんだった。
その紅葉の御手手は目標に見事命中し、しかもベッドの上におねんねさせてくれたのだ。
……やけに慣れてるね?
「再生。治癒」
これで“痕”とひっかき傷……うん。どうやらまだ“無事”だったみたい。
「治療は終わったわよ。“傷モノ”にならないウチに“こっち”に来れて良かったわね」
「……はぁ~~~っ!本当だよっ!」
「またにい、おむこしゃんになれるんでしゅね」
ホッとした表情で兄を見つめる妹と弟。
ベッドの上でぐーすか寝ている兄はどう見ても………
「ふつーの学生さんだよね……」
コスプレしたどこにでもいそうな中学生にしか見えないのだ。
しいて言えば……
「顔が小さくて腕と脚がちょっと長いくらい…かな。手も足も小さいし……?あ、でもBLでは平々凡々な主人公がイケメン鬼畜攻めの餌食になるってのが王道パターンだし……」
「びーえりゅ?」
「……あの、皇太子様は『我よりも年上なのに幼きところが気に入った』…と」
ほぉ……って事は童顔なのか…。
ってか、この患者の実際年齢は?
………怖くて聞けないのは何故だろう。
「あとれしゅね、こうたいちしゃまは『げんかくななかにときおりはっとするひょうじょうをうかべるのが、これまたたまらぬ』…ともおっちゃってましゅ」
えっと…ゲンカクって厳しい方の厳格だよね?幻じゃなくて。
って事は皇太子さんは普段厳しいのに時々ハッとなる表情を浮かべるマタハチくんにギャップ萌えしてるってか?
普段厳しいねぇ………。このへにょっとした寝顔からは想像もつかないんだけど…
「またにいは“おにのじょうしょばん”といわれてまちて……」
オニ……鬼?ジョウショバン?
「……兄の仕事はお城の蔵書を扱う事なんですが…」
「かちだちきかんおしゅぎりゅと、またにいにものしゅごくおこらいるんでちゅ」
「蔵書を貸し出したり整理したり、修理するのが主な仕事なんですが、蔵書には貸出期間があり、それをちょっとでも過ぎると…ですね、兄の気が済むまで蔵書の貴重さや貸出期間の意味について相手が納得しようがしまいが一方的に語りつくされるんです。
途中で寝てしまう方もいらっしゃるんですが、兄は、その、水系の魔術が得意でして……びしょ濡れにされるか凍らされるか…なんですけど、中断されたら最初から兄の説教を聞かなければならないんですよ」
「し…仕事に厳しいお兄さんなんだ。ところで、貴方達は天界から逃げて来たんだよね?地上に来たはいいけど行くあてはあるの?」
ここで雇ってあげてもいいけど……パパンに“お願い”すれば大丈夫そうだし。
ガバッ
うわっ!行き成り起き上がったよ。
ん?あれ?アヤメちゃんとヘイタくんが苦笑している……って事はコレもいつもの事?
「おお!よくぞ聞いて下さいましたっ!!(ガシッ)」
「へ?あ!ちょっ…」
「創造神様の御友人の方にワガミ様という方がいらっしゃるので、僕らの事はその方に託されてるとの事!
創造神様はワガミ様は弱きモノの御味方であり、叡智溢れ慈愛に満ちた女神様であらせられると……。
麗しき御姿に耳を震わせるような美声、そしてときおりこちらが想像もつかないようなお言葉などは大変愛嬌があり…………」
っげ!また始まった。
…どうしようかな。このイタイお兄さん。
「兄貴……」
ッス
「………失礼。で、ワガミ様はいつお出でに?」
「っ……!!!」
メガネを装着した途端、風紀委員長キャラになったよ。
もしかして王子様が惚れちゃった要素にギャップ眼鏡萌えってヤツもあるんですかぁっ!?
ご愛読頂きありがとうございました。




