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井戸が出来上がったら……

 井戸掘りを始めて1週間が経過した。


「マリエラ様、お願いできますか?」


「勿論です」


 私は井戸の中に入り土の壁に手を当て崩れないように補強魔法をかけていく。


「だんだんと水音が大きくなってきてますね」


「えぇ、もうすぐ水脈に当たりますぜ」


 土も水分が多くなってきて泥みたいになっている。


「おっ、水が出てきたぞっ!」


 現場から大歓声が上がった。


「本当に水脈があったんですね……」


 ルミナは驚きながら言った。


「まぁ半信半疑になるとは思うけどね、私も実際ホッとしてるわ。 これで水が出なかったら作業してくれた職人達に申し訳無いもの」


「私の父でしたら『腕が悪い!』とか言って職人達に文句を言いそうです」


「そんな事したら人がついてこないわよ、いくら貴族でも民があってこそなんだから」


「そういう考えもあるのですね……」


 ルミナは感心する様に頷いていたけど、私のこの考えはお母様譲りの物。


『貴族たる者謙虚であれ』がお母様の教えだ。


 さて、井戸が出来上がって終わり、という訳では無い。


 次にやって来たのは教会の神父様だ。


 建物とかを作った後には必ず神に祈りを捧げる儀式を行わなければならない。


「それでは神儀に入らせていただきます」


「よろしくお願いいたします」

 神父様が井戸に向かって手を組んで目をつむり祈りの言葉を捧げる。


 私とルミナも神父様の後ろで心の中で祈りを捧げる。


「神よ、新たに作られたこの井戸に加護を与えん事を……」


 空気がほんの少しだけひんやりする様に感じた。


「マリエラ様、神は祝福されています」


「ありがとうございます」


 こうして正式に井戸は使える様になった。 

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