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超訳 河口慧海「チベット旅行記」  作者: Penda
第三章 チベット脱出
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無事四関門を通過す


 兵隊の街で昼食を注文すると、米があるからと炊いてくれ、菜漬の大変うまいのをくれた。

 城は強固で、両脇の山に沿って大きな石塀が建てられている。門は毎日、朝夕6時にきっかり開閉するそうだ。

 街からしばらく先に進んだチュンビー橋の東側に、門がある。そこの兵士に旅券を渡すが、少しでも怪しかったり賄賂を渡したりしなければ送り返されるらしい。

 慧海(えかい)も兵士にどこへ行くのかとしつこく聞かれたが、テンバが旅券を見せるとすぐに門を通してくれた。旅券に、「この人を怪しむ言動をしてはならぬ。もしそうすれば後からひどい目に遭うから早速通せ」と命令があるためだ。こうして難なく二つ目の関所を通過した。


 川沿いに南へ下ると第三のピンビタンの兵営に着き、兵舎を借りて泊まった。明日は取り調べを受けずにすぐに第四のトモ・リンチェンガンに行き、長官から書類をもらって最後にニャートン城門を通過して守関長の取調べを受け、書類をもらってまたここに引き返してこなくてはならない。

 ところがピンビタンでは午前11時から30分間しか旅券を渡してくれないらしい。これでは1日で片付きそうにない。慧海が思案していると、その夜に、ピンビタンの城を守って居る中国人の長官の女房が診察してほしいとやってきた。彼女はチベット人で、長く患っているらしい。かなりの美人で、ヒステリーのような病気だった。

 少しの薬を与えて、症状を見ていくつか助言すると、それがよほど的中していたようで、何かお礼をしたいという。

 何もいらないと言うと家から何かを包んで持ってきたが、それを押し返して「私はあすニャートンで書類をもらってここに引き返してこなければならない。そのとき、長官に手間をかけることになるだろうけれども、すぐに旅券を渡してくれるように取り計らってもらえないか」と願うと、「そんな事は訳はない」と引き受けてくれた。聞けばこの婦人は家で、無限の権力を持っているそうだ。


 翌6月14日、トモ・リンチェンガンの関所に着いた。見張りの者に書類をいただきたいと言ったが、ぐずぐず応じかねていたところ、テンバが「この人はセラのアムチーです」と口走った。「それじゃああなたが法王の侍従医の方ですか」と聞くので「侍従医にはなっていないが、とにかく急用を帯びているので早くいかねばならないのだ」とチベット紳士流にぼんやりと答えると、すぐに信用して書類を書いてくれた。

 ここから4キロほど登り、山あいの太い川に沿って登っていき、そこから4キロほど行くと、城があった。ここの兵士町は200メートルほどの長屋になっていて、やはり商売をして暮らしている。

 町を抜けると門があり、見張りの兵士に書類を見せるとすぐに通してもらえた。その先にニャートン駅があるが、ここは慧海にとって、とても危険な場所だ。


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