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超訳 河口慧海「チベット旅行記」  作者: Penda
第二章 知識編
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チベットの財政


 チベットの財政は非常に複雑だ。会計官吏がどれだけ金を出し入れしているのか側の者にはさっぱり分らない。時によって乱高下がある。税は物品が多く、金銭に換算しにくいためだ。

 法王政府の大蔵省はラブラン・チェンボ(ラマの大いなる台所)という。法王の直轄地などから税となる品物を取り立てる。品物は麦、豆、小麦、蕎麦、バター、乾乳、珊瑚珠、宝石、布類、羅紗、絹、干しぶどうや桃、皮や宝鹿の血角などがあり、チベットの品物で大蔵省へ納まらないものはない。

 おかしいのはバターや麦などのはかりや升が大小何種類もあることだ。法王の出た地方の人や政府高官ゆかりの地方は特別待遇を受けて少ない量で済む。反対に罪人が出た村は大きな升を使うといった具合だ。品物を売り渡す時は決して大きな升を使わない。僧侶や役人に禄を与える時は普通の升を使う。

 主な支出は釈迦堂の費用で、修繕費や灯明代、僧侶の手当などだが、最も多いのは灯明に用いるバター代だろう。また大蔵省は租税だけでなく、喜捨の金品も取り扱う。法会で信者からもらえるお布施「ゲ」もいったん大蔵省に納めて配分する。

 法王の宮室費、官吏や僧侶の俸禄も支出する。俸禄の金額は少ないが官吏や僧侶は自分の荘田を持っているし、安い金利で金を借りることができる。三大寺に対しては茶とバターはもちろん僧侶に一人6円ほどの禄を与える。

 法王は税の他に財源があり、自分の荘田や牧畜場のほか、直轄の商隊を持っている。法王の台所はツェ・ラブラン(峰のラマの台所)という。法王の御殿が峰の上にあるからだ。寺としても城としても立派なものだが、欠点は法王殿の中には井戸も泉もないことだ。水は500メートルほど下の川端から毎日毎日くみ出して運ばなくてはならない。

 法王の宮殿に住む貴族僧侶は165人居て、いずれも容姿端麗のきれいぞろいで、僧侶として最上の暮らしをしている。法王の台所にはこれまでモンゴルからの収入があったが、今はほとんどなく、国民の負担が重くなっている。だから大きな升が使われるのだ。

 地方には政府に納める税金を取り立てる者が二種類いる。寺と地方官だ。地方には「ゾン」という砦があり、戦争の時以外は裁判や警察、租税の取り立ての役所となる。ゾンには知事のような立場のゾンボンが居て、小麦やバターなどを取り立てる。ゾンボンは政府から報酬をもらえないので、取り立てた税から月収を得る。政府が管轄する人民は人頭税を、華族や高等僧侶の寺に属している人民は所属先はもちろん、政府にも税を払わなくてはならないこともある。

 法王の財産は、法王が亡くなれば出身地の血族が半分以上を相続し、残りは僧侶の「ゲ」になる。普通の僧侶は5千円の遺産があれば4千円はゲや灯明代になり、残りは遺体の始末に使い、弟子は500円もあれば良い方だ。それでも弟子は借金をしてでも師匠のために灯明代をこしらえるいう良い習慣がある。


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