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超訳 河口慧海「チベット旅行記」  作者: Penda
第二章 知識編
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モンラムの祭典(一)


 チベットで一番名高い祭りはモンラムだ。チベット歴1月3日から始まり、14日まで続き、25日に終りの式を挙げる。モンラムは「願いを掛ける」という意味だが、中国の皇帝の万歳を祈る大祈祷会ともいえる。

 祭りは正月の初春の祝いであり、僧侶は3日から大法会に出て読経を行う。そのため12月20日から先に正月休みをもらう。

 休みの間は酒を飲んだり博打をやったりし、子どもも遊び放題に遊ぶ。修学しない僧侶などは歌うやら相撲をとるやら。ただ、こんなに乱れても寺に女を連れ込むような人は誰もいない。例の美しい小僧は収入が多くなるようだが…。

 3日近くなると各寺から僧侶がラサに集まってくる。セラやレブン大寺からなら早朝に出れば間に合う。ガンデンなら前日だ。この時集まる僧侶は2万5千人ほどで、一般民家が僧侶に部屋を貸すのが義務になっている。ラサの住民は3万くらいなので、すし詰めになっても寝られず外で寝る羽目になる者もいる。


 地方から僧侶が出てくるようになったのは今の法王になってからで、以前はむしろラサの人間が地方に逃げ出していた。

 人が集まるなら商売でもやれば金儲けができると思うかもしれないが、以前のモンラムでは執法僧官がひどい圧制を加えたのだ。

 執法僧官はレブン大寺から2人ずつ来る。シャーゴという法律をつかさどる僧侶で、位を賜るには政府に3〜5千円の賄賂を納めなくてはならない。シャーゴに任じられればモンラムやチョエン・ジョェ(法王への大祈祷会)の執法官となる。

 モンラムの時、ラサは僧侶の道場と化し、全ての人は執法官に従わなくてはならない。執法官は賄賂の金を取り戻すために、このモンラムで、自分が一生安楽に暮らせるほどの金を儲けようとする。ちょっと掃除が行き届いていないとか、ちりがあったとかで100円、200円の罰金を取る。けんかでも起こればまた罰金だ。

 またこの時期、借金をどうしても返してくれないと願い出れば、貸した人間は半分の額が必ず返済される。その代わり借りた者は全ての財産を没収された上で、親類にまで累が及ぶことがある。市民はたまらないので、留守番を一人置いて、部屋を僧侶に貸出し、田舎へ逃げ出してしまう。

 だが人がいないからといって、執法僧官が金を取らないかというとそうではない。何かと口実を使ってたくさんの金を取り立てる。

 執法僧官はモンラムの時だけでなく、自分の寺に帰ってからも賄賂をむさぼる。まるで仏の寺の中に大強盗、大悪魔が跋扈しているようだ。


 慧海(えかい)はこんな面白い話を聞いた。

 神通力があって、地獄や極楽に行けるというラマがいた。ラサの商人がラマを訪ね、地獄がどういう場所かを聞くと、こう話した。

 「地獄には坊さんが多い。無間地獄で一番ひどい苦痛を受けているのはレブン大寺のシャーゴだ」と。


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