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超訳 河口慧海「チベット旅行記」  作者: Penda
第二章 知識編
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チベット外交の将来


 チベットは英領インド、ロシア、ネパールの強国から脅かされている。この三国が連携することはないが、英国とネパールならあり得る。

 ロシアは南下してチベットに侵入しようとしている。その目的は天然の万里の長城というべきヒマラヤ山脈の地の利を得た上でインドを征服することに他ならない。つまりチベットはロシアか英国の手に落ちるかの二択になっている。

 ネパールはどちらにもつかず、チベット内部で実力を得られれば失敗にはならない。たとえチベットをロシアなり英国なりに取られても、ネパールは利益を得られるからだ。

 ロシアは腐敗したチベット政府を籠絡してチベットを脅かす力を持っている。が、国民を心服させる力は英国のほうにあり、どちらがチベットを制するかは、まだはっきりとは言えない。

 もしどちらかがチベットに侵入すれば、仏教国のチベット人は「これは前世の約束だ」などと言って諦め、自ら進んで独立しようとはしないだろう。

 海上の戦いも怖いが、ヒマラヤのような金城鉄壁で行われる戦争も恐ろしいものになるだろう。もし堅固なチベットがロシアの手に落ちたなら英領インドは征服されたに等しくなる。


 チベットはもう独立が不可能なのかというとそう断言することもできない。チベットはこれまでインドに頼り、中国に心を寄せてなんとか生き残ってきた国である。

 国民に独立心はないが、今の法王は鋭敏果断で度量も大きく、仕事も充分できる人物だ。ただ文明的な教育を受けていないだけで、そのほかは申し分ない。慧海はこの法王であれば、チベット独立も不可能でないと信じている。

 だが慧海は、大いにあきれ、悲しんだ。法王はかつて英国政府から何か接触があると、ひどく恐れて心を痛めたそうだが、今はいくぶん強くなってしまった。

 英国政府がロシアの暗躍を見かねて、チベットの領地をいくぶん多く取った時も、法王は少しもひるまず、いつでも戦争を辞さないような構えだったらしい。これはロシアと条約を結び、武器などをもらったためだ。しかし、どれだけ強い体を持っていても、独立心がなければ人の奴隷となるだけだ。

 夢のような話だが、仏教の因果の理を駆使して、チベット興隆の策を講じることができれば…あるいはチベットも独立できるかもしれない。


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