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清国とチベット
チベットは中国の属国として保護をうけているので、税金を納めなくてはならない。だがこの頃は納めていない。なぜなら中国皇帝の大祈祷会の費用が中国から納められないからだ。納税金を大祈祷会の費用にあてている。
中国人の勢力は日清戦争以後、かなり落ちた。チベット政府は自分に好都合の命令しか聞かない。
中国政府の皇帝の勅語が、ラサ府の釈迦堂の隣家の壁に貼ってあった。内容は、中国は外国と和合したので人民や外国人が来たら、害を加えず、通過させるように、というものだ。
しかしチベット人は「中国の皇帝が勝手に言い出したことを聞く訳はない」と平気なものだ。あるいは「皇帝のそばの悪人が、外国から金をもらってああいうことを言わせたのだ」「中国の皇帝は文殊菩薩の化身だから、チベットに外国人を入れるはずがない」などと言う人がたくさんいる。
チベットで中国皇帝の詔は、遊女の手紙ほどの効き目もないのである。