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侯爵様に愛をささやかれるだけの、とっても簡単なお仕事です。  作者: 朝姫 夢
第四章 今日も愛をささやかれています。

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12.今日もまた

 ここまで彼の本気を言葉と姿で示されておきながら、自分だけがいつまでも迷っているわけにはいかない。まだわずかに残っている冷静な部分でソフィアはそう結論付けるが、実際には身に余る光栄と喜びに今にも涙がこぼれそうになりながら、それでもしっかりと差し出されていたピンクの花束を受け取ると。


「はい。私もフェルナン様のことをお慕いしております。どうかずっと、お側に置いてください」


 ようやく素直に、自分の言葉で想いを伝えることができたのだった。

 だがソフィアのその言葉に、今度はフェルナンが驚いたように固まってしまって。


「……え? いや、え……本当に……? ソフィアが、私を……?」


 まるで、信じられないとでもいうように何度も確かめながらそう問いかけるその両手は、どこか所在なさげに宙に浮いたままだった。

 そんなフェルナンの姿に愛おしさを感じつつも、同時におかしくなってしまったソフィアは満面の笑みを浮かべると。


「もちろんです! フェルナン様、大好きです!」


 真っ直ぐに想いを伝える言葉を紡ぐ。少々子供っぽい気もしたが、混乱している時には分かりやすい言葉が一番響きやすいと考えたからだ。

 ソフィアの予想は、まさしく的中する。飾らない素直な言葉の意味をフェルナンが理解した瞬間、ソフィアにはほんの一瞬だけ彼の泣きそうな表情が見えたのだが、すぐさまその腕の中に優しく囚われてしまい。


「ソフィアっ……! あぁ、夢みたいだっ……!」


 花束を抱えたままのソフィアが潰れないような力加減で、けれどしっかりと抱きしめながら、フェルナンは万感の思いを込めた声色で言葉を紡ぐ。


「ありがとう、ソフィア。大切にするよ。そして、約束する。私が必ず君のことも、君が大切にしているものも、全て守ってみせるよ」


 それに応えるように、そっとフェルナンの広い背中に片手を回したソフィアは、ゆっくりと頷く。その瞬間、鮮やかなエメラルドグリーンの瞳を覆い隠した目蓋の下から、一筋の涙の雫がこぼれ落ちて。ソフィアの白い頬を、優しく濡らしていったのだった。


 こうして無事ソフィア本人からも結婚の承諾を得たフェルナンは、長い長い紅茶の準備を終え戻ってきたブランシェ伯爵へとその旨を伝えたのだが。その際ソフィアはあまりの恥ずかしさに、下を向いたまま一度も言葉を発することができなかった。というのも、彼女は気付いてしまったのだ。父親が戻ってこなかったのは、最初から二人きりでこの話をさせるためだったのだということに。

 だが、そのことを恥ずかしいと思っているのはソフィア一人だけで、フェルナンはもちろんのこと父親であるブランシェ伯爵も話がまとまったことに大層喜んでいて。また依頼も未達成だということを知り、フェルナンにとって必要なことならばソフィアをこのまま王都に連れて行ってもいいとまで言い出してしまったので、逆にフェルナンから今後の領内の予定もあるだろうし急いでいないので、日程の調整はこれからゆっくりしていかないかと提案されるほどだった。


 実はソフィアはあとから知ったのだが、彼女の両親であるブランシェ伯爵夫妻は娘が領地のために自らの結婚すら諦めていることを心から悔やむと同時に、とても申し訳なく思っていたのだそうだ。

 せっかくこんなにも美しく育ってくれたというのに、ソフィアが幼い頃に領地が貧乏だという理由ですでにどこからも嫁入りを断られてしまっていたので、これ以上自分たちの力ではどうすることもできないことは理解していて、さらには頼みの綱であった学園でも相手を見つけるために時間を割くことなく、領地のために図書室にばかり通って知識を得ていたのだと知り、もはや打つ手はないものだと諦めるしかないと考えていたのだと、ソフィアはその時初めて聞かされたのだった。

 そんな中、突然舞い込んできたアマドゥール公爵家の嫡男からの依頼。そして唐突に娘が戻ってきたかと思えば、色々と手違いがあったと急いで馬車を走らせて領地まで求婚に来てくれたのが、その嫡男本人だったとなれば。ブランシェ伯爵の浮かれ具合も、理解できるというものだろう。


 そうして結局この日、フェルナンはブランシェ伯爵邸には泊まらず、すぐに婚約の準備を整えたいからと書類にブランシェ伯爵とソフィアのサインだけを最後に貰うと、またすぐに迎えに来るからとソフィアに言い残して王都へと帰っていったのだった。

 そうして異例の速さで整えられた婚約は、発表と同時にソフィアが正式にフェルナンの婚約者としてアマドゥール公爵邸へと招き入れられ、嫁入りのための準備を王都で整えるためという名目で再び同じ屋敷の中で過ごすことになったのだが――。


「ところでフェルナン様」

「なんだい、ソフィア」

「ユゲット様の魔法は、いつになったら解けるのでしょうか?」


 今もまだ、フェルナンが魔女ユゲットにかけられてしまった魔法は解けぬまま、ソフィアは以前と同じような毎日を送っていた。


「どうだろうね。ユゲットが言うには、ソフィアが私を受け入れてくれればくれるほど、言動が素直に現れるようになっていくと言っていたけれど……」

「え!? そんな判断基準があったのですか!?」

「そうだよ。だから少しずつソフィアに触れる時間が長くなるごとに、私は嬉しくなっていたんだ」

「~~~~っ」


 愛おしさ全開の笑顔を向けられて、ソフィアは思わず恥ずかしさに顔ごと視線を逸らしてしまう。まさかそんな仕組みになっていたのだとは思いもよらなかったが、だからあの日ユゲットはどこか満足そうな笑みを浮かべていたのかと、今さらになって初めて会った日の彼女の表情の意味に気付いてしまったソフィアは、ただただ顔を赤く染めることしかできず。


「恥ずかしがっている姿もとても可愛いよ、ソフィア」

「~~っ!!」


 そんなソフィアの様子を見て、耳元で色っぽくささやきながら優しく頬をなでるフェルナンの表情は、常に緩んだままで。そうして今日もまた、ソフィアはフェルナンに愛をささやかれるのだった。



 今確認をしてみたら、ブックマーク数が100件を超えていました!Σ(゜Д゜)

 そして評価してくださった方も、いつの間にか28人にまで増えていて…!

 登録してくださった102名の方、評価してくださった28名の方、本当にありがとうございます!m(>_<*m))

 そしてリアクションも毎回ありがとうございます!本当に本当に嬉しいです!


 さて、本編はこれにて終了です。

 ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!(>ω<*)


 ですが、まだ終わりませんよ!

 明日からは、フェルナン視点を更新する予定です(・`ω・)b

 そちらもお時間のある方は、ぜひ!



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