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1日を2度体験出来る男の人生譚  作者: うんも


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22/22

真・来夢無双

前回のあらすじ

事務所で来夢の歌やダンスを確認しようとしたが近所迷惑になるのでスタジオ移動。

 次の日、冒頭でわかるように2週目はしていない。

 来夢の学校が終わるタイミングを目掛けて神崎の事務所へ突撃した。

 俺が最後のようで既に3人が揃っていた。


 「それじゃ、昨日言った通り今からスタジオ行くわよ」


 神崎の一声で皆が事務所を後にした。

 スタジオは事務所からそれ程離れておらず、徒歩5分程で到着した。


 「さて、ここなら騒音問題も出ないし一旦通しで見てみましょ。来夢はそれでいい?」


 「はい!!」


 スタジオに来たのは初めてだが思っていたより設備が充実している。

 アンプにマイクスタンド、それにドラムやキーボード、はたまたエレキギターやベースまである。

 そのマイクスタンドに差さっていたマイクを手に取った来夢は、昨日のように雰囲気ががらりと変わった。


 「おいおいおい! お前ら昨日みたいに私を止めるんじゃねーぞ!! 最後まで私の歌を聞きやがれ!」


 そして鳴り響く地ならし。

 スピーカーから流れるハイテンポでメタリックな音楽。

 流れる様な振り付けではなく、一挙一動はっきりとキレのある動き、そして何よりその歌声。

 マイクと合わさって耳を塞ぎたくなる金切り声の筈だが、不思議と心地よく感じる。


 歌とダンスが進んで行き、来夢がキーボードへ移動して演奏しだした。勿論マイクを持って歌ったままだ。

 キーボードを弾いている右手は流れる様な動作だが、それ以外は先程まで同様にキレのある動きを継続している。


 一通りキーボードで遊んだ? 来夢はキーボードと繋がっていたアンプを勢い良く引っこ抜き、エレキギターをアンプに接続した。


 そしてエレキギターを上下逆さまに持ったまま、右手で弦を押さえ、左手の親指、薬指、小指でマイクを持ち、残り2本で弦を弾いた。

 両手は塞がっているが、足は常に動かし俺達を魅了している。


 暫くしてエレキギターの演奏に満足したのか、ドラムスティックを1つ手に取り、スティック無双しながらドラムの位置まで移動した。

 曲の始まりでは踵でビートを刻んでいたが、そのビートをドラムのフットペダルを経由して奏でている。

 勿論フットペダルを経由している分、音は大きい。その音に負けないくらいに右手に持ったドラムスティックでドラムとシンバルを叩き回している。


 曲も終盤なのか、ドラムスティックを手放し最後の1つであるベースの方へ移動した。

 先程と同様にエレキギターに差さっていたアンプをベースに繋ぎ替えた。

 この動作も振り付けの1部では無いかと錯覚する程に洗礼されている。

 ベースもエレキギターの様に上下逆さまに持ったが、こちらは弾くのが目的では無いのか、右手全体でベースの弦を押さえる部分を持ち、振り回している。

 いや、剣やん。


 その剣を天高く持ち上げ、そして斜めに振り抜く。ここで曲が終わった。


 室内にはピリピリとした空気が支配した。

 その緊張の糸を切ったのは、来夢が左手に持っていたマイクだった。

 来夢の左手から滑り落ちたマイクはその落下音を拾い、スピーカーを通して俺達の意識を現実に戻した。


 「えーー、その……来夢思ったより凄いわね」


 「来夢ちゃん、イメージとちょっとだけ違ったけど全然ありだと思うよ」


 「ほっ本当ですか? 良かったです!!」


 来夢が落としたマイクを再び拾おうとしたが、来夢が拾うより前に天瀬さんが先に回収した。

 ナイスだ。天瀬さん。


 「来夢ちゃんちょっと疲れてるみたいだし、少し休憩しましょ。聞きたいこともあるし」


 天瀬さんの言葉に納得したのか、水を受け取り椅子に腰を据えた。

 そして一息ついたタイミングで質問タイムが始まった。


 「まず初めに皆が気になってると思うから最初に聞くわね。来夢ちゃんってマイクを持つと性格変わるの?」


 「性格が変わる……と言うかあっちが取り繕いの無い素の自分だと思います。こっちの自分は人の顔色を伺ったり、人が不快に感じない言葉を探りながら喋ったりして自分を隠してますし。マイクを持ったら何て言うんでしょうね? 自分が嫌な事、嫌いな言葉、本心や悪口を言ってもそれを悪とは捉えられずに、1つの歌詞と取ってくれるんですよ。だから性格が変わっているのは今ですね」


 んーー、深い。悩める高校生って感じだがコメントに困るから無視だ。


 「そうだったんですね。私達と話す時は本心でいいからね。すぐには難しいと思うけど。それで質問の続きだけど、楽器ってある程度弾けるの? 全部弾けてる様に見えたけど」


 「んーー、ここの置いてあった楽器は弾けます。あっでも、プロとかよりは全然弾けないですよ。あと触れるのはDJコントローラーぐらいですかね」


 うん、非常に偏ってる。音楽のレーダーチャートがあった場合、グラフは針みたいに尖りそうだな。

 俺のストレスレーダーチャートと同じだ。俺もこっちではコントロール度に極振りしている。


――閑話休題――


 今回聞いた感じ歌、ダンス、パフォーマンス全てに置いて問題が無いように感じられる。

 前にも言ったが、アイドルのイメージとはかけ離れているが、こんなアイドルが居ても良いとは思う。既に居るかも知れないが。

 初めて会った時から予想するに、来夢は何処かの事務所を何度か受けているとは思う。落ちたっぽいが。

 これだけのパフォーマンスが出来たら何処かの事務所は目を付けると思うけどな…………俺が目を付けたのか。


 「来夢、1つ俺から質問なんだが他の事務所はなんで落ちたんだ? 今見た感じそれ程問題無さそうだが」


 俺の質問に来夢少し考え、そして口を開いた。


 「み、みんな……私のために集まって頂いてありがとうございます。一生懸命歌うので聞いてください!!」


 そして何だか分からないワカメみたいなダンスを踊り出した。


 「うん、わかったからもういいぞ」


 「こんな感じだったんです……でも全部が全部こんなんじゃなかったんです。ちゃんとマイクを持たせてくれる所もあったんです。でも……そこはイメージと合わないって理由で断られてしまいました……」


 「でもまぁ、これで今週末のステージは問題無さそうね。皆は他に聞きたいことある?」


 神崎の言葉に天瀬さんは首を横に振る。

 俺は最後に1つだけ来夢に告げた。


 「最後に1つだけ。来夢。何があっても必ず俺を頼れ。俺が何とかしてやるからこれだけは忘れるな。後は好きにしていいから」


 柄にも無いことを言ってしまった。

 でも偶(たま)にはいいか、真面目に考えるのも。

お読み頂きありがとうございます!(´▽`)

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