死は広いようで狭い
おはようございます!
元気よく行ってみよー
天瀬さんが神咲占音に電話をかけようとしたが、その必要は無くなった。
「昨日の電話が気になって来てみたら占い当たってるじゃない」
俺と天瀬さんは目を見合わせた。
いやいや、何が占い当たってるじゃんない! だ。んな事よりなんでこいつがここに居るんだ? 気になって来てみた! ってただのストーカーだろ。
「あの……神咲さん。なんで僕達の場所がわかるんですか?」
「そんなの決まってるじゃない。あんた達を占ってここを通るの知ったからじゃない。そんな事より天瀬さん。私の占い外れてるように見えないですけど」
いやいや、何がそんなの決まってるじゃない。だ。何にも決まってない。そんなのが罷り通ったら、世の中GPSなんて要らないんだよ。
俺の自問自答を他所に2人の話は進んでいく。
「神咲さん! あなたの占い外れてますよ! 現に皆月さん死にそうだったんですから!」
「死にそう? でも死んで無いんでしょ? そこでピンピンしてるし。それなら当たってるじゃない」
「それは結果論でしょ!? 過程では絶対死んでたのよ!」
「占い何てそもそも結果論じゃない。過程がどうであれ結果が全てよ」
「あなたって人は……!!」
天瀬さんがこちらを見ている。つられて神咲さんも俺を見ている。所謂俺のターンって事だ。
発言する前に状況の整理をしよう。
まず先程の会話から考察するに、天瀬さんが占った内容は俺が死ぬか死なないかだろう。
何を占ってくれてるんだ天瀬さんは。
いや待てよ。俺は死ぬの定義を狭めてないか? 最近では死ぬの定義が広い。
例えば、学校で水泳の授業があったとしよう。最近では水着を忘れただけで『死んだ』と言うらしい。
飲み会でもそうだ。酔って寝てたら『あいつ死んだ』と言われる。
俺にも経験がある。実家暮らしの時、お風呂場で……何て言うんだ? その……所謂大人の玩具的なのを使い終わってスッキリサッパリした状態で髪を乾かしていたんだ。本来なら使い終わった物をズボンのゴムで腹に固定し、輸送する予定だった。
しかし俺はその物を……物の事を完全に忘れてしまったのだ。
物はまだ少し水の張ったケロリンの中でその肉厚な割れ目を俺に披露しようと扉側に見せつけている。俺のお迎えを信じて。
しかし現実はそう甘くない。
俺が戻ろうにも既に妹は身に纏っていた鎧を脱ぎ捨てており、その右手は未だ見ぬゲートを開こうとしていた。
『死んだ……』ってのがある。
このエピソードの中では確実に俺は死んだと思った。この様に『死んだ』の定義は広いし、人によってその定義が変わる。天瀬さんも神咲さんもその定義の相違が今回の問題に繋がったのだろう。
恐らく占い師の神咲さんは『死んだ』の解釈を生命の途絶と捉えただろう。マジモンの占い師としたらそんな曖昧な『死んだ』を占わないと思うしな。
逆に天瀬さんは『死んだ』をさっきの例の通り、お酒での死であろう。あの日、俺結構飲んでたしね。家まで送る事を考えると占っていても不思議じゃない。
でも天瀬さんは過程で絶対に死んでたって言ってたしそんな事あったかな? 飲み過ぎててあんまり覚えてないや。それよりこの険悪な空気を何とかしないと。当初の予定通り俺もなんか占って貰ってそれで判断しよう。
そう思い、俺は神咲さんに話しかけた。
「まぁまぁ2人とも落ち着いて。神咲さん、占いが当たるか当たらないか俺は占って貰ってないので判断出来ません。そこで、俺を占ってそこで判断すると言うのはどうでしょうか?」
神咲さんは顎に手を当て数秒考えた後、口を開いた。
「そうね。このまま当たってるのに当たってないって言われるのも気分悪いしその提案乗るわ! ただ、曖昧な占いはあまり得意じゃないの。今回みたいにね。知っての通り、私は起業が成功する、しないとか、どっちの方針が良いかとかそんな占いが得意なのよ。早速あなたが成功しそうな事業を占って見るわ」
神咲さんがそう言い俺を真剣に見つめ出した。
まぁ、曖昧な占いが得意じゃないって発言は本物だから故に言える言葉だろう。偽物の占い師なんて曖昧に逃げてナンボだ。
で、問題は成功する事業を占うって言ってる事だ。
本物、偽物の判断にどんだけ時間かかるんだよ。実際に起業して、事業起こさんとダメなんだろ? なんで俺がそんなめんどくさい事しないといけないんだよ。
やっぱりこいつ新手の占い詐欺だろ?
俺がそんな事を思っていると、神咲さんが占い終わったのか満面の笑みで俺に話しかけてきた。
「占い終わったわよ。何個か占ったけどあんた凄いね。どんな事業をしても成功するんじゃない? 少なくとも今占った事業は全部成功するわ。農業、林業、漁業、それに建築業も。サービス業で言うとホテル経営や劇団公演、映画製作も。なんだったらアイドル事務所なんてのも成功するわね」
俺は天瀬さんと目で通じ合った。話さなくても分かる。こいつやっぱり詐欺師や……そんな事業がポンポン成功する訳が無い。どう言う手口かは分からないが話を聞くだけで分かる。こいつには関わったらいけないと。
「あの……神咲さん。流石に事業で占いの成否を確かめるのは時間が……」
そこまで言って俺達の会話に第3勢力が待たをかけた。
「あっ! あの!! アイドル事務所やるなら私をアイドルにしてください!」
こんなん詐欺のテンプレートやな。
俺は全力で走って逃げた。
お読み頂きありがとうございます。
( *°∀°* )




