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【挿絵付】月本菜穂物語  作者: ㈱姫神V
9/11

高3、クラスメートの引っ越し①

「明日だっけ?引っ越し」

ふと誰かの声が聞こえた。引っ越し?誰が?

声の方を確認する。


大原くんと宮田くん…?

今の声は大原くんじゃなかったから…え?引っ越すのは、まさか大原くん?

「おぉ、もう毎日毎日、部屋のもん、段ボールに詰め飽きたよ」

笑いながら話している。


あたしはクラスメートの中でも大原くんとは結構仲がいい、と思っていた。

学校以外で会ったり遊んだりしたことはなかったけど、教室では話すし、それとなくみんなから大原くんはあたしのことを好き、みたいな話も聞かされていた。


あたしは…あたしも大原くんのことはいいな、と思っていたので、もし告白されたなら受けようと思っていた。


なのに、そのあたしに内緒で引っ越しをするの?

一緒にいられなくなるのに告白なんかして、あたしを困らせたくない、とかそういうことなのかな…


遠距離恋愛なんてマンガでありそうなことがあたしに起きるなんて…でも頻繁に会えなくたって、PHSとか買えば電話とかメールが出来るっていうし…

たまには待ち合わせて会ったり…でもどれくらい離れてるかによっては年一回とかになるのかな…


頭が混乱している。目が回る。考えがまとまらない。

友達と明るく話している大原くんを見て何がなんだかわからなくなる。


挿絵(By みてみん)


私の心と気持ちに関係なく時間は進む。

全く頭に入らなかったけど一時間目、二時間目が終わり15分休み、いつも話すというわけではないけど、話し掛ければ応えてくれる間柄。


でも今は…何をどう聞いたらいいのかわからない。なんとなく目で追うけど話し掛けには行けない…


「菜穂、どうしたの?なんか今日、調子悪い?」

あっ、いけない、顔に出ちゃってた…でも…

「うん…ちょっと…ううん。あのね、大原くん、引っ越しするって知ってる?」

「え?知らないけど…え?え?本当に?転校するの?」

やっぱり知らないんだ。


「なんか朝、宮田くんと話してるの聞いちゃって…」

「嘘!だって大原くんて…菜穂、どうするの?」

「どうしよう…」

「聞いたの?大原くんに、直接」

「なんて聞いていいかわからなくて…聞いてない」


挿絵(By みてみん)


「だって…でも…菜穂、好きだったよね、大原くんのこと」

「うん…」

「諦めるの?」

「だからどうしよう」

予令が鳴る。あっ…


「とにかく、本人に聞くまでわからないんだから、それまでは余計なことを考えないんだよ!」

でも…本当だったら…


三時間目、四時間目もあっという間に過ぎる。

相変わらず頭の中はどうしよう、という考えだけですっかり止まってしまっていた。


お昼休み、思い切って聞いてみようか…でも…

思考は堂々巡り。勇気が出せないまま、友達とご飯を食べる。味なんかしない…


大原くんは友達と笑ってご飯を食べている。

なんでそんな顔が出来るの?あたしのことなんてもうどうでもいいの?


話し掛ける勇気もないまま五時間目、六時間目も終わってしまう。

明日、引っ越しってことは明日はもう学校に来ないかも知れない。

このままお別れなんて嫌だ。


今、話さないと、もう話すことも出来ないかもしれない。あたしはようやく大原くんの所に行き、話し掛ける。

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