2.闇の中をふたり
外伝ではありませんが、ショートくん不在のシーンなので、フロルちゃん視点の三人称にて。
気がつくと、フロルは光1つ無い闇の中にいた。
夜の闇よりもさらに暗い世界。
何一つ見えない、視覚情報が役に立たない場所。
そんな中、右手に掴んだアレルの手の感触だけが頼りだった。
「アレル……」
心細く言ったフロルの言葉。
だが、アレルは何かの確信を持っているかのように言った。
「行こう、フロル」
そう言って、アレルは歩き出す。
「アレル、どこに行くの? ショート様やライト達は……」
「大丈夫だよ。僕には分かる。フロルには分からない?」
(分かるって何が……)
思うフロル。だが、ふと感じる。
アレルが進む先、何かが自分たちを待っている。
何だかは分からない。
見えるわけでも、匂うわけでもない。
それでも。
なぜかその先に、自分たちを待っている者がいると確信できた。
「分かったわ。行きましょう」
理屈ではない何か。
それを追ってフロルはアレルと共に闇の中を歩き始めた。
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何も見えない世界を歩く。
目の前のアレルも、自分の手も、足下も。
何も見えない。
見えない世界をひたすら進む。
それは思った以上に神経をすり減らす。
本当に自分たちは進んでいるのか。
それとも、ただ足踏みしているだけなのか。
それすら分からなくなりそうだ。
もちろん、この闇の場所にやってきた直後、フロルは『閃光』の魔法を使ってみた。
だが、本来なら眩く輝くはずの魔法は、ここでは完全に無効化された。
『光』や『炎』だけでなく、あらゆる魔法が使えない。
アレルの『光の太刀』も光源にはならないようだ。
ただ光が差し込まないだけでなく、光そのものを封じてしまうような空間なのかも知れない。
フロルの頼りは、ギュッと握ったアレルの手だけ。
4年前柔らかかったアレルの手は、ずっと固くなった。
剣術の修行と実践を繰り返していれば当たり前だが。
それでも。
握りしめたアレルの手はとても温かくて。
だからフロルは闇の中を進んでいくことができた。
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歩き始めてどのくらい経っただろう。
まだ半刻も経っていないといわれればその通りだと思うし、1日以上経ったと言われればそうかもしれないと思う。
光がない世界は、時間の感覚を狂わす。
喉の渇きや空腹具合からすれば、半日以上経ってはいないと思うが。
やがて。
闇の世界は唐突に終わりを告げた。
気がついたとき、フロルとアレルは眩い世界で、彼女と対峙していたのだった。
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光溢れる世界。
フロル達の前には1人の女性――いや、女の子がいた。
「ご苦労だったな。今生の勇者達よ」
偉そうにそういった彼女。
フロルはその姿にポツリと言った。
「……子ども?」
フロル達の目の前にいるのはどうみても幼女だ。自分たちよりも年下――そう、初めてショートと出会った頃の自分たちと同じくらいの年齢に見える。
彼女は言う。
「ふむ。ショートから聞いておらんか。ワシは神じゃ。またの名をシルシルという」
大いばりで言う幼女。
「神様?」
アレルが首をひねる。
「そうじゃ」
「教会の偶像とずいぶん違うけど……」
「ふむ、本物の方が美しいかのう?」
いや、それはない。
『かわいいか』というならば、まだ分かるが。
「まあいい。お主らは見事2つの試練を乗り越えた」
「2つ?」
「ふむ。『勇気の試練』と『真実の試練』じゃな」
もともと、フロル達は『勇気の試練』に挑んでいた。
1000匹を超える魔物を倒し、勇者の銅像があった部屋までやってきたのだ。
アレルが言う。
「じゃあ、さっきの暗闇が『真実の試練』ってこと?」
「その通りじゃ。なかなか物わかりがいいのう」
なるほど。
それで2つの試練をクリアーってことか。
「2つの試練を乗り越えた勇者よ。これにより、そなたらは最後の試練――『祝福の試練』に挑む資格を得た。
『祝福の試練』への入り口はギルドの長が知っておろう。その試練を乗り越えたとき、そなたらは真の勇者として目覚める」
神様を名乗った幼女――シルシルはさらに続けた。
「そして――その時、そなたらには1つの別れが訪れるであろう」
その言葉にアレルが首をひねる。
「別れ?」
「ふむ。そなたらがさらに先に進むために必要な別れじゃ」
アレルはよく分からないといった顔だ。
だが、フロルは分かってしまった。
正確には見当が付いてしまったのだ。
だから。
フロルはシルシルに尋ねた。
「私たちとショート様を会わせてくださったのは、あなたなんですね?」
その言葉に、シルシルは頷く。
それで、フロルは確信した。
(そっか。最後の試練を乗り越えれば……)
それはとても辛いことだ。
だけど。
確かに必要なことなのかも知れない。
一方、アレルは未だによく分かっていない様子だ。
「別れって、誰と誰が別れるの?」
「それは、本人から聞くが良い」
シルシルはそう言って目をそらした。
「うーん、よくわからないけど……分かった。とにかく、最後の試練をうければいいんだね?」
「ま、そうじゃな」
シルシルは頷く。
(アレル、分かっているの? その時、私たちはショート様と……)
思いつつ、フロルは口に出せないのだった。
「もうひとつ教えておこう。魔王はすでに魔族を統一した。やがて魔王と魔族は南西の大陸よりこの地へと攻め上るであろう。そなたらがどのような道を歩くとしても、時はもうあまりない。最後の試練へ急ぐことじゃな」
シルシルの話はそれで終わりだったらしい。
「では、ワシからそなたらに伝えられることは以上じゃ。地上へと送り返そう。ショート達ともそこで再会できるじゃろう」
シルシルがそう言うと、辺りがさらに眩く輝いたのだ




