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異世界でちっちゃな双子の勇者の保護者になりました  作者: ななくさ ゆう
第9章 勇者と保護者

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2.闇の中をふたり

外伝ではありませんが、ショートくん不在のシーンなので、フロルちゃん視点の三人称にて。

 気がつくと、フロルは光1つ無い闇の中にいた。

 夜の闇よりもさらに暗い世界。

 何一つ見えない、視覚情報が役に立たない場所。

 そんな中、右手に掴んだアレルの手の感触だけが頼りだった。


「アレル……」


 心細く言ったフロルの言葉。

 だが、アレルは何かの確信を持っているかのように言った。


「行こう、フロル」


 そう言って、アレルは歩き出す。


「アレル、どこに行くの? ショート様やライト達は……」

「大丈夫だよ。僕には分かる。フロルには分からない?」


(分かるって何が……)


 思うフロル。だが、ふと感じる。

 アレルが進む先、何かが自分たちを待っている。

 何だかは分からない。

 見えるわけでも、匂うわけでもない。

 それでも。

 なぜかその先に、自分たちを待っている者がいると確信できた。


「分かったわ。行きましょう」


 理屈ではない何か。

 それを追ってフロルはアレルと共に闇の中を歩き始めた。


 ---------------


 何も見えない世界を歩く。

 目の前のアレルも、自分の手も、足下も。

 何も見えない。


 見えない世界をひたすら進む。

 それは思った以上に神経をすり減らす。


 本当に自分たちは進んでいるのか。

 それとも、ただ足踏みしているだけなのか。

 それすら分からなくなりそうだ。


 もちろん、この闇の場所にやってきた直後、フロルは『閃光』の魔法を使ってみた。

 だが、本来なら眩く輝くはずの魔法は、ここでは完全に無効化された。

『光』や『炎』だけでなく、あらゆる魔法が使えない。

 アレルの『光の太刀』も光源にはならないようだ。

 ただ光が差し込まないだけでなく、光そのものを封じてしまうような空間なのかも知れない。


 フロルの頼りは、ギュッと握ったアレルの手だけ。

 4年前柔らかかったアレルの手は、ずっと固くなった。

 剣術の修行と実践を繰り返していれば当たり前だが。


 それでも。

 握りしめたアレルの手はとても温かくて。

 だからフロルは闇の中を進んでいくことができた。


 ---------------


 歩き始めてどのくらい経っただろう。

 まだ半刻も経っていないといわれればその通りだと思うし、1日以上経ったと言われればそうかもしれないと思う。

 光がない世界は、時間の感覚を狂わす。

 喉の渇きや空腹具合からすれば、半日以上経ってはいないと思うが。


 やがて。


 闇の世界は唐突に終わりを告げた。


 気がついたとき、フロルとアレルは眩い世界で、()()と対峙していたのだった。


 ---------------


 光溢れる世界。

 フロル達の前には1人の女性――いや、女の子がいた。


「ご苦労だったな。今生の勇者達よ」


 偉そうにそういった彼女。

 フロルはその姿にポツリと言った。


「……子ども?」


 フロル達の目の前にいるのはどうみても幼女だ。自分たちよりも年下――そう、初めてショートと出会った頃の自分たちと同じくらいの年齢に見える。

 彼女は言う。


「ふむ。ショートから聞いておらんか。ワシは神じゃ。またの名をシルシルという」


 大いばりで言う幼女。


「神様?」


 アレルが首をひねる。


「そうじゃ」

「教会の偶像とずいぶん違うけど……」

「ふむ、本物の方が美しいかのう?」


 いや、それはない。

『かわいいか』というならば、まだ分かるが。


「まあいい。お主らは見事2つの試練を乗り越えた」

「2つ?」

「ふむ。『勇気の試練』と『真実の試練』じゃな」


 もともと、フロル達は『勇気の試練』に挑んでいた。

 1000匹を超える魔物を倒し、勇者の銅像があった部屋までやってきたのだ。


 アレルが言う。


「じゃあ、さっきの暗闇が『真実の試練』ってこと?」

「その通りじゃ。なかなか物わかりがいいのう」


 なるほど。

 それで2つの試練をクリアーってことか。


「2つの試練を乗り越えた勇者よ。これにより、そなたらは最後の試練――『祝福の試練』に挑む資格を得た。

『祝福の試練』への入り口はギルドの(おさ)が知っておろう。その試練を乗り越えたとき、そなたらは真の勇者として目覚める」


 神様を名乗った幼女――シルシルはさらに続けた。


「そして――その時、そなたらには1つの別れが訪れるであろう」


 その言葉にアレルが首をひねる。


「別れ?」

「ふむ。そなたらがさらに先に進むために必要な別れじゃ」


 アレルはよく分からないといった顔だ。

 だが、フロルは分かってしまった。

 正確には見当が付いてしまったのだ。


 だから。

 フロルはシルシルに尋ねた。


「私たちとショート様を会わせてくださったのは、あなたなんですね?」


 その言葉に、シルシルは頷く。

 それで、フロルは確信した。


(そっか。最後の試練を乗り越えれば……)


 それはとても辛いことだ。

 だけど。

 確かに必要なことなのかも知れない。


 一方、アレルは未だによく分かっていない様子だ。


「別れって、誰と誰が別れるの?」

「それは、本人から聞くが良い」


 シルシルはそう言って目をそらした。


「うーん、よくわからないけど……分かった。とにかく、最後の試練をうければいいんだね?」

「ま、そうじゃな」


 シルシルは頷く。


(アレル、分かっているの? その時、私たちはショート様と……)


 思いつつ、フロルは口に出せないのだった。


「もうひとつ教えておこう。魔王はすでに魔族を統一した。やがて魔王と魔族は南西の大陸よりこの地へと攻め上るであろう。そなたらがどのような道を歩くとしても、時はもうあまりない。最後の試練へ急ぐことじゃな」


 シルシルの話はそれで終わりだったらしい。


「では、ワシからそなたらに伝えられることは以上じゃ。地上へと送り返そう。ショート達ともそこで再会できるじゃろう」


 シルシルがそう言うと、辺りがさらに眩く輝いたのだ

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