1.アレルくん9歳
何匹もの強力な魔物が、俺達に襲いかかる。
レッドドラゴン、ブルードラゴン、スカイドラゴンといったドラゴン種たち、ファリケラトプス、エブリングザウルス、トリケプラゴズといった恐竜種たち。
そして、その手足のごとく無限に溢れてくるセルアレニ、ゲルケロス、バルクモンキといったモンスター達。
「なめるなぁぁぁぁ!」
ライトが叫び、セルアレニの一体を一刀両断。
「悪いけど、吹き飛ばさせてもらうわよ!」
フロルが『超流星』の魔法で恐竜種達を吹き飛ばす。
「ごめんね、ここで負けるわけにはいかないんだ」
アレルが言って、空高く跳び上がり、スカイドラゴンを斬り捨てた。
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「ったく、一体いつまでわきでてくるんだよ、こいつらはっ!」
ライトが憎々しげに言う。
気持ちは分かる。
すでに1000体はモンスターを倒している。
さすがのアレルやライトも息が上がっている様子だ。
フロルの魔力も足らず、何度も魔石で回復している。魔石は十分あるが、だとしてもキリがない。
ここは勇者の試練の1つ、『勇気の試練』である。
ギルド総本山にやってきてから2年余り。9歳になった双子や、ライト、ソフィネと共に俺達は1つめの勇者の試練に挑んでいた。
ひたすらだだっ広い洞窟型のダンジョンで、次から次にこの世界最強クラスのモンスターが現れる。
次の階層に進むためのオーブは見当たらない。
その時点でどうしたらいいのやらといったかんじだが、実は俺はシルシルにこのダンジョンのクリアー方法を聞いている。
すなわち、一定数のモンスターを倒せばオーブが現れるらしい。
問題は。
シルシルもどのくらいのモンスターを倒せばいいのかわからないとか宣っていたことだ。全く頼りにならない神様である。
実際のところ、今のアレルやフロルにとって、この世界最強のモンスター達ですら相手ではない。
レッドドラゴンですらアレルの『閃光の太刀』で一撃である。
俺とソフィネが足手まといなのを差し引いても、ライトを含めた3人の実力はかなりのものだ。
だが、それにしても数が多すぎる。というか、終わりが見えなさすぎる。
ゴールが見えていれば42.195キロ走れるマラソン選手でも、ゴールがどこにあるのかわからず何十キロも走り続けるのは辛い。
戦い初めてどのくらい時間が経ったか。
時計もないのでわからないが、すでに1日以上モンスターを倒し続けていると思う。
その間、気を抜くこともできず、もちろん睡眠も食事もできない。トイレ休憩すらむりだ。一応、すきをみて水を飲むくらいはしているが。
「くそ、いいかげんにっ!」
ライトが叫んだときだった。
「あそこっ! オーブが出たわ」
ソフィネが部屋の隅を指し示し言う。
どうやら、ようやくオーブ出現に必要な数のモンスターを倒したらしい。
「わかった! 道を開く!」
アレルが叫び、剣を振るう。竜巻のような風が荒れ狂い、モンスターを薙ぎ倒す。『暴風の太刀』だ。
オーブまでの道ができあがり、俺達はひたすら駆けた。
そして、次の階層に俺達は立ち入ったのだった。
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その階層には、モンスターはいなかった。罠も宝箱もなく、仕掛けもない。オーブも見当たらない。
ただ、大きな石像があった。
「これ……」
俺はその石像がかたどる人型に見覚えがあった。
「ショート、どうしたんだ?」
「たぶん、これ勇者だ」
そう。その石像は。
かつて俺とミリスの前に現れ、セルアレニを倒した光の戦士。双子が合体したと思われる勇者の姿にうり二つだった。
「どういうこと?」
たずねるソフィネに……というか、4人にあらためてセルアレニを倒した光の戦士のことを説明する。
ライトがアレルとフロルに視線を送る。
「その戦士って、やっぱりアレルとフロルなんだよな?」
ライトの問いに、アレルとフロルは困惑顔。
「うーん、アレルはよく覚えていないんだけど……」
「私も、あの時のことは記憶がなくて」
困惑気味の2人。
これまで何度か尋ねてみたのだが、やはりあの時のことは2人ともよくわからないらしい。
一方、ソフィネが俺に尋ねる。
「4年前のことよりさぁ、これからどうしたらいいの? ショートは神様から何か聞いていない?」
俺が神様――シルシルとやりとりをしていることは、すでに4人とも知っている。
だが、シルシルもこの先のことは何も言っていなかった。
「さあなぁ……オーブもないみたいだし、どうしたものか……」
俺が考え込んでいると、アレルが「うーん」と悩みつつ、勇者の石像に近づいた。
おそらく、深い考えが合っての行動ではないだろう。
アレルはなんとなく、石像に近づき触ってみただけだ。
だが。
次の瞬間だった。
石像が金色に光る。
「アレル!?」
叫び、フロルがアレルの手を握る。
次の瞬間。
目を開けていることすら辛い閃光。
そして、俺達の前から双子が姿を消したのだった。




