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異世界でちっちゃな双子の勇者の保護者になりました  作者: ななくさ ゆう
第8章 旅立ちの時

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8.ドラゴン現る!?

 夜の暗闇の中。

 森の中にソフィネが1人、横たわっている。


「なんでこうなるのよ?」


 ソフィネが不満たらたらいう。

 俺達4人も実はソフィネのそばで横になっている。ただし、黒い布を被って簡単には見つからないようにしている。よく見ればバレバレだろうが、月明かり星明かりしかない夜の森ではこれでも十分隠れられる。


「しょうがないだろ、ドラゴンが現れるのって生贄を差し出す時だけらしいから」


 ライトが答える。


「だから、なんで私が生贄なのよ!?」

「生贄は若い女にかぎるっていうんだから……」

「どんな色ぼけドラゴンよ!?」


 まあ、こんな風に言い合っていては俺達が隠れている意味もあまりなさそうなのだが。


 とはいえ、ソフィネが文句を言いたくなる気持ちも分かる。

 睡眠薬を盛られて生贄にされそうになり、身勝手すぎる村人達からドラゴンを倒してほしいなどと頼まれた。当然『ふざけんな、ボケ』と断ろうとしたのだが他の集落への影響を考えてしかたなくドラゴン退治に乗り出した俺達。


 で、詳しく話を聞いてみれば、ドラゴンを実際に目撃したのは3年前の1回きり。

 その後は毎月若い娘を生贄に出すことで村が襲われることはなくなったとのこと。

 今回も生贄を差し出せばドラゴンが来るだろうというわけで、こうしてソフィネを生贄に出すふりをして、俺達はドラゴンがやってくるのを待っているわけだ。


 フロルが俺に言う。


「ですが、ショート様、私も色々とおかしい気もします」

「確かになぁ」


 どうにも、村人の言い分は変なところが多い。


「ドラゴンが本当にいるなら、1ヶ月に1回生贄を出しても普通に襲ってくると思うんです。それに、他の集落も当然襲われているはずです」


 他の集落に聞き込みをしたわけではないが、数日前通った村ではドラゴンのことなんて全く話題にも出なかった。

 それに、ドラゴンだって生きているのだ。1ヶ月に1回人間を喰えたから、後は大人しくしているなんてことがあるのだろうか。


「そもそも、ドラゴンはモンスターでしょう。魔の森や魔の空、あるいはダンジョン以外で生息できるんでしょうか?」


 確かに。どういう理屈だかよく分からないが、この世界のモンスターは基本的に魔の森、魔の空、それとダンジョンにしかいない。

 ドラゴンが獣ではなくモンスターだというならば、魔の森ではないこんなところにいるのがそもそもおかしい。


 フロルの言うとおり、この事件はどうにも違和感がある。

 そもそも、3年間誰もドラゴンを見ていないというのが根本的に怪しすぎる。


「やっぱり、あの村のヤツらに欺されているんじゃねーか?」


 ライトがそう言いたくなるのもわかる。

 そんな状況なのに、生贄役をやらされて、ソフィネが不満たらたらなのも当然だ。


「アレルはどう思う?」


 一応、聞いてみる。


「うんにゃ? アレル、眠い……」


 いや、おい、寝るな。

 まあ、時刻は日本で言うところの丑三つ時。ちびっ子は眠る時間だ。しかもずっと横たわっているので、アレルがおねむになってしまうのも無理はないが。


 これがドラゴンではなくもっと弱いモンスターならばアレルを眠らせてあげたいのだが、彼はこう見えてもこのパーティー最高戦力である。


 ドラゴンの強さは個体によってマチマチらしいが、セルアレニよりも強いことが往々にしてあるらしい。本当にドラゴンが現れるならば、アレルの力も必要だろう。


 と。


「何か来るぞ」


 ライトが警告の声を上げる。


「ドラゴン?」


 俺が尋ねるが、ライトは首を横に振る。


「いや、これはむしろ……」

「人間だよ。それも3人くらい」


 さっきまでおねむだったアレルが目をぱっちり開けて言う。

『気配察知』のスキル持ちの2人がそう言うならば間違いないだろう。


 しかし、人間?

 どういうことだ?

 偶然誰かが通りかかるような場所とも思えないのだが。

 村人のいずれかか、それとも……


 はたして、やってきたのは男3人だった。

 内訳は筋肉モリモリ男、青白い顔の男、ノッポの男。以後、それぞれ、筋肉男、青白男、ノッポと呼称する。


 彼らはソフィネに近づく。筋肉男がソフィネの顔を見て言う。


「ほう、今回は結構な上玉じゃねぇか」


 青白男とノッポも同意する。


「あの村のヤツら、まだこんなかわいい娘を隠していたんだな」

「ああ、こりゃあ高く売れるぜ」


 おいおい。どういう展開だ、これは。


「どうやら、ドラゴンではなかったようですね」


 フロルが言う。


「どうなっているんだ、これ?」

「つまり、ドラゴンがいるふりをして、女性を攫っているバカどもがいたってことです」


 言いながら、フロルは立ち上がる。


 なるほど。

 ドラゴンの正体は人間の誘拐犯だったってことか。それならば若い女性を指定した理由も分かる。

 ゴボダラも言っていたではないか。奴隷にして売るならば、若い女性が一番金になるのだ。


 いずれにせよ、もはや隠れている意味は無い。

 俺達4人――いや、ソフィネも含めて5人は立ち上がり臨戦態勢。


「な、なんだ、お前らは!?」


 叫ぶノッポに、俺が答える。


「まったく、ドラゴン退治に来てみれば正体が誘拐犯だとは思わなかったよ。アレル、ライト、こいつら捕まえるぞ。殺さない程度にやってくれ」


 俺やフロルの魔法では、彼らを殺してしまいいかねない。ソフィネの弓はこういう戦いには不向きだ。

 まあ、普通にアレルとライトだけで倒せるだろうけど。


 青白男が言う。


「なんだかわからねぇが、ハメられたっぽいな」


 よくいう。村人をハメていたのはお前達だろうに。


「ならば、こいつを見て驚くがいい!」


 叫んで青白男は思念モニタを操る。

 しまった、コイツ魔法使いか!?


「アレル、ライト!」


 俺が叫ぶまでもなく、2人は青白男に迫る。だが。

 青白男の入力が早い。


 次の瞬間。


 彼らと俺達の間に、全長20メートルはあろうかという赤いドラゴンが鎮座したのだった。

 まさか、魔法でドラゴンを召喚したっていうのか!?


「どうだぁぁぁぁ、このドラゴンに喰われたくなければ、娘をおいて立ち去れ!」


 青白男の叫び声が夜の森に響くのだった。

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