4.魔法使いの弱点は
フロルが無事『解毒』の魔法を覚えた後。
俺はブライアンに尋ねた。
「試しに覚えた魔法を使ってみてもいいですか?」
「『水球』ならいいわよ♪
でも、『解毒』はむりね。毒にかかった人がいないと使えないもの。あと、『火炎球』はダメよ。火事になっちゃうもん」
よし。
じゃあ、試しに使ってみよう。
俺は思念モニタを呼び出し、魔法使用を選ぶ。モニタ上をタッチしていき、『水球』の魔法を使う。
すると……
俺の目の前に、直径1メートルほどの水の固まりが現れ……そのまま床に落ちた。
……えっと……
水を自由に出せるのはすごいっちゃあすごいけど……
「これ、役に立つかな……」
思わずポツリと漏らしてしまう俺。
水を呼び出して、そのまま地面にばらまく……ガーデニングでもするなら便利そうだけど。攻撃はもちろん、消火活動に使えるかも微妙だ。
夏場なら、双子に水浴びさせるにはいいかもしれないが、MP消費を考えるとなぁ。
『水球弾』の方が良かったか?
「意外と役に立つわよ。水袋か、桶を用意しておけば飲料水には困らないし」
確かに、冒険をするときに飲み水は重要そうだ。
「『水球弾』とは使い分けね。あっちは対象に当てるから、攻撃や消火につかえるけれど、飲み水としては使いにくいもの。
あ、ちなみに魔法で出した水は沸かさなくても飲めるくらいきれいよ。そういう意味でも川や池の水よりも便利ね♪
特にショートくんの場合、『無限収納』に水袋なり水筒なりをたくさん入れておけば、かなり使える魔法だと思うわ♪」
ふむ。戦闘用としては限りなく微妙だけど、旅をするにはかなり便利な魔法ってことか。
「そうだ、ご相談があるんですけど」
「あら、何かしら♪ 夜のお誘い?」
いや、シャレにならないからそういうジョークはっ!!
「魔法を使うときって、思念モニタを何度もタッチしないといけないじゃないですか。飲み水の確保ならともかく、戦闘ではとっさに使いにくいんですけど、どうにかならないですかね?」
俺の問いにブライアンは深々と頷いた。
「そうなのよぉ。そこが魔法使いにとって一番の悩みどころよね。結論を言うと、入力回数を減らす方法はないわ」
そうなのか。
パソコンみたいにショートカットボタンを作るとかできれば便利そうだと思ったのだが。
「魔法使いにとって、入力時間は致命傷になりかねない。だから古来からいくつも対策が練られているの。代表的な対策としては3つね♪
1つ。敵の攻撃をかわしながら入力する身軽さを手に入れる。
1つ。前衛を任せられる戦士や武闘家とパーティーを組む。
1つ。入力スピードをあげる練習を積む」
ふむぅ。
正直、聞かなくても思いつく対策だ。
そして、どれも限界がありそう。
俺のそんな気持ちを察したのだろう。ブライアンは頷く。
「確かにね。身軽さを身につけるっていうけど、それができれば苦労はないって話ですしね。入力スピードを上げるのも限界はあるわ。あんまり慌ててミス入力をしても大変ですしね」
となると、やっぱり信頼できる前衛と組む必要があるわけか。
「前衛と組むのが一番現実的なんだけど……たとえば前後から挟まれたら厳しいことも多いし、ダンジョンの中にはワープの罠とかパーティーを分断させる仕掛けもあったりするし。なかなか難しいわよね」
俺達のパーティのことを考える。
アレルは戦士――つまり前衛特化で、俺とフロルは魔法使い――つまり後衛。それだけを考えれば一応バランスは取れているといえる。
いや、そもそも、アレルとフロルだけでも能力値的にはバランスの取れた、まさに『勇者』なのだろう。
それは確かに間違いないのだが。
5歳児に前衛任せるってどうなんだよ……
アレルがいくら強くても、幼児である。
信用はともかく、信頼するのは難しいよなぁ。
「ご主人様、私たちには前衛の仲間が必要なんじゃないでしょうか」
フロルは賢い。すぐに俺と同じように自分のパーティの問題点に気がついたようだ。
「うーん。まあ、アレルがどのくらい成長するかにもよるだろうし、もう少し考えようか」
そういえば、そろそろアレル達の剣術修行も終わるころだ。
様子を見に行くか。
俺はブライアンに退出する旨を伝える。
「あらん、もう帰っちゃうのぉ? ブラちゃんさびしいわぁ。また、来てね♪」
正直、そんな言い方をされると来たくなくなるのだが、しかし魔法を覚えるためにはしばらく通う必要があるだろう。
予算との兼ね合いだが、できるだけここで覚えられる魔法はマスターしておきたい。
「お世話になりました。また来ます」
俺はそう言って、フロルと共に地下道場に向かうのだった。
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俺とフロルが地下の剣術道場にたどり着くと、模擬戦開始直前だった。
向かい合っているのはアレルとライト。
ライトの仲間達は昨日の俺やフロルと同じように部屋の隅に座っている。
邪魔したら悪いかなと思ったのだが、ミリスの方が俺達に気づいて言う。
「お、ショート、魔法はちゃんと覚えられたか?」
「はい。なんとか。これから模擬戦ですか?」
「ふむ、アレルとライトの対決だ。なんなら見学していくか?」
「いいんですか?」
「特別だ。見学だけなら今日のところは無料でOKとしておこう」
「ありがとうございます」
俺とフロルはライトの仲間達の横に座る。
「アレル、がんばれよー」「アレル、負けちゃだめよ」
俺とフロルがいうと、アレルはニコッと笑う。
「うん、アレルがんばるー」
一方。
「ライト、ちびっ子に負けるなよ」「そうだそうだ」「むしろやり過ぎて泣かすなよ!」
ライトの仲間達もライトに声援を送る。だが、ライトは答えない。
彼の顔は真剣そのものだ。
昨日のアレルの模擬戦を見ているからだろう。
「それでは、始め!」
ミリスの宣言と共に、ライトがアレルに襲いかかった。




