3.魔法を覚えよう その2
「えーっと、じゃあ、俺は『火炎連弾』と『水球』と……」
言いかけた俺を、ブライアンが制する。
「うんもう、欲張っちゃダメダメっ、魔法の契約は1人1日ひとつまで。精霊様とのお・や・く・そ・く♪」
よくわからないが、1日に複数の契約をしようとすると、精霊の怒りをかってしまうらしい。その場合、契約が無効になるどころか、その精霊の魔法は2度と覚えられなくなるとか。
ふむ、となるとこれは本気で考えないとな。
悩む俺に、ブライアンがアドバイスする。
「ショートちゃんには『水球』か『水球弾』をオススメするわ♪」
「理由は?」
「だって、ショートちゃんは『火炎球』をつかえるんでしょう? でも、火炎球って危ないのよ。ちょっと間違うと、すぐに火事とかおきちゃうじゃない?」
ふむ。
確かに思念モニタにも火災に注意みたいなことが書かれていたな。
「だからぁ、水の魔法を覚えておいて、いざという時に備えた方がいいわよ。ブラちゃんのぉ、オ・ス・ス・メ♪」
言い方はともかくとして、確かに理にかなっているかもしれない。
「じゃあ、『水球』をお願いします」
迷うところだが、値段的にも一番簡単な魔法から選んだ方がいいだろう。
「フロルちゃんはぁ、そうねぇ。まずは『解毒』かしら」
「なんでよ。攻撃魔法じゃだめなの?」
ちょっと不満げに言うフロル。
「うーん、あんまり小さな子に攻撃魔法はオススメできないわ。危ないし」
昨日、ミリスがアレルの『風の太刀』のことを心配していたのと同じような理由だろう。
もっとも、フロルは賢いので無茶なことはしない……と思いたいが。
「それにぃ、ショートちゃんが『怪我回復』と『体力回復』を使えるわけじゃない。だったら、同じパーティー内で『解毒』があれば、いざという時に立て直しが効くパーティーになるわよ」
なるほど。確かにそうだ。
「フロル、まずはブライアン先生の言うとおりにしてみよう」
「わかりました」
フロルはまだちょっと不満げではあるが、頷いてくれた。
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料金を支払い、俺とフロルはブライアンに案内され魔法修練所に入る。
そこは地下の剣術道場と同じくらいの広さがあった。目立つのは床の模様。円上に絵や魔法が描かれている。
「これは魔法円。魔法の契約は魔法円の中央で行なうのよ」
精霊との契約には、魔法円の中央で瞑想をする必要があるらしい。
ブライアンの能力の問題もあり、ここでの契約は1人ずつになる。
「そういえば、今日は他に魔法習得をされる方はいないんですか?」
1日に1つという縛りもあることだし、もっと他にも魔法を習得したい人がいてもおかしくない気がするのだが。
「うーん、そもそも魔法を使える人ってぇ、とっても貴重なの。ほとんどの人はMP0なのよ。魔法が使えるってだけで、貴重な人材といえるわね♪ まして、ショートちゃんみたいに神様と契約できたり、フロルちゃんみたいに3桁近いMPを持つ子はめったにいないのよ。
もちろん、エルフとかMPの多い亜人種もいるけど、エルフは自分たちの里で精霊と契約できるから、ギルドで契約なんてしないわ♪」
っていうか、この世界、エルフいるのか。
「……それにしても、ショートちゃんて不思議ね」
「何がでしょう?」
「だってぇ、すでに魔法を覚えているってことは、契約したことがあるはずでしょう? それなのに、基本的なことを知らないんだもの。なんだか、とってもミ・ス・テ・リ・ア・ス♪」
しまった。確かに色々と不自然だった。
どうする? また記憶喪失ってことにするか?
だが、ブライアンはミリスと違ってそれ以上追求してこなかった。
「ともあれ、始めましょう。まずはどちらから契約する?」
「じゃあ、俺からお願いします」
「オッケー♪ そしたら、魔法円の中央にすわってね。特に難しいことはないけど、1刻くらい動いちゃだめよ。言葉を発してもダメ。目を開けてもダメダメっ♪ あ、お手洗いは事前に済ませておいてね♪」
ちなみに、この世界の1刻とは元の世界の1時間半くらいである。これはアレルを連れてこなくてよかったかも。あの子には1時間半ジッとしているなんて無理だろう。
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俺は魔法円の中央に座る。
特に座り方は指示されていなかったので胡座。
目を瞑り肩の力を抜く。
「それじゃあ、始めるわ。ここから先は動いちゃダメよ♪」
そういうと、ブライアンはなにやら呪文のようなものを唱え始めるのだった。
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儀式が始まってから、ずっとブライアンの呪文だけが室内に響く。
目を瞑って座っていると、だんだんと眠くなってくる。
たぶん、動いたらダメということは、寝てもダメだろう。
でも、なんだか眠いなぁ……
だんだんと時間の感覚も分からなくなってくる。
もう、1時間くらいは経ったのだろうか。それともまだ20分も経っていないのだろうか。
頭の中がぼーっとしてくる。
うーん、頑張ろう。
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それは突然だった。
ぼーっとしていた頭の中に、突如静電気のようなものがピリッと走った。
そして。
「はい。契約の儀式は終了よ。もう動いてもいいわ♪」
ブライアンがそう言った。
「ご主人様、魔法は覚えられましたか?」
どうなんだろう?
さっきのピリッとしたのが魔法を覚えたってことなのだろうか?
「冒険者カードで確認するといいわ。たぶん、今の感じなら大丈夫だと思うけど♪」
俺は自分の冒険者カードを取り出す。
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氏名:ショート・アカドリ
職業:冒険者(レベル0)
HP:32/32 MP:75/75 力:20 素早さ:10
装備:旅人の服
魔法:無限収納、地域察知、体力回復、怪我回復、火炎球、水球
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おお。ちゃんと覚えられている!
しかも、最大MPが増えて、現在MPも回復しているじゃないか。
「魔法の取得に成功すると、最大MPが少し増えて、ちょっとだけ回復もするの。お得よね♪」
それはラッキー。
魔石の値段を考えると、ギルドの魔法習得は確かにお得なのかも知れない。
「じゃあ、次はフロルちゃんの番よ」
「はい。頑張ります」
そして1刻後、フロルも無事『解毒』の魔法を習得したのだった。




