ミュレーナ姫との再会
僕があの惑星に行ったのは、
その金曜日の午後だった。
美緒ちゃんの家のポストに手紙を入れ
て帰った後、僕はシャワーを浴びた。
散歩の時着てたチノパンとポロシャツ
が汗で濡れて気持ちが悪かったんだ。
シャワーを浴びて昼食をとると、
僕は眠くなってきた。
昨夜は寝たのが二時過ぎだったから。
僕はTシャツと短パンに着替えて、
ベッドに横になった。
ベッドに入ると、僕は直ぐに眠った
みたい。
例の金縛と体の震えが来た時は、
まだ窓の外が明るかったから。
あの星に行く時のパターンが、
いつもと違ってた。
普段は体外離脱した後、僕は霊体
で少し家の外を飛び回るんだけど
今回はいきなり部屋の中に光の柱
が突き立って、僕は強制的に上の
方に引き上げられた。
その光の柱は、空から落ちて来て
都営住宅の建物の屋上と僕の部屋
の天井を貫き、直接僕の体の上に
突き立ったんだ。
柱が突き立つと同時に、ブルブル
震えてた僕の霊体はスルッと肉体
から抜け出して天井も建物の屋上
も突き抜けて、物凄い速さでグン
グン上昇して行った。
いつもと違って、僕は気絶しな
かった。
眩しい光の中を上昇して行く途中
ふと気がつくと、僕の直ぐ上を、
天使の様な白い服を着た人が飛ん
でた。
その人は僕を振り返ってニッコリ
笑ったんだ。
栗色の髪をした綺麗な人だった
けど、短髪だったから、男にも
女にも見えた。
瞳の色はグリーンで、艶やかな
小麦色の肌をしてた。
初めて見る人だったけど
その人の笑顔を見ると、
僕はなぜかとても安らか
な気持ちになったんだ。
[あなたは、誰ですか?]
って、僕は心の中で訊いた。
[私の存在にやっと気がつきまし
たね。私は梵天に使える者です。
あなたをスピィア星に導くのが、
私の仕事]
って、その人はテレパシーで答えた。
だんだん上昇スピードが速くなっ
て来て、体中の細胞が振動し始め
意識が吹っ飛びそうになった頃、
僕は突然ミュレーナ姫がいる塔の
前に出た。
僕はミュレーナ姫と再会したんだ。
天使のような人の姿は、もうどこにも
見あたらなかった。
◇◇
窓の外からミュレーナ姫が見えた。
彼女は窓辺の椅子に座ってうつむい
てた。
今日は淡いブルーのドレスを着てる。
僕はチノパンに紺のポロシャツ姿、
黒のスニーカーを履いてた。
僕が空中に佇んで見てると、
彼女がふと顔を上げたんだ。
彼女は僕に気づくと、
凄く驚いた顔をした。
「・・・翔太、あなたなの?」
彼女は駆け寄って来て、
窓に手を当てた。
「ミュレーナ姫、久しぶり。
ビックリさせてゴメン。僕、
この星では不死身みたいな
んだ」
僕もミュレーナ姫のそばまで行って、
窓に手を当てた。
近くで見ると、やっぱり美緒ちゃん
にそっくりだと思った。
「翔太、あなた本当に生きてる
のね? 私、あなたが死んでし
まったと思って、ずっと泣いて
たのよ。無事で良かった、ああ
神様ありがとうございます!」
と言って、彼女は窓に手を当てた
まま肩を震わせてしばらく泣いた
んだ。
僕のためにこんなに泣いてくれるなん
て思いもしなかったから、僕も嬉しく
て涙が出そうになった。
美緒ちゃんには振られたけど、
僕はこの人を絶対に守ろうと
思った。
でも、今はまだ無理だった。
一人で助け出す自信もなかったし、
カミュたちが作戦を立ててるから、
勝手な行動は出来ないと思ったんだ。
ボヤボヤしてる暇はなかった。
またアーリン星人の奴らが攻撃して
来るに違いないんだ。
僕はとりあえず用件だけ伝えて、
この場はひとまず逃げることに
した。
僕が念力を使ってミュレーナ姫の
涙をそっと拭うと、彼女は驚いた
ように顔を上げた。
「ミュレーナ姫、僕のことを心配し
てくれてありがとう。いずれまた、
あなたを助けに来るよ。今カミュ達
と作戦を立ててるんだ。だから今日
はこれで失礼するね、この間みたい
になるといけないから」
つて、僕は言ったんだ。
「ええ、分かったわ。翔太、
ありがとう。早く逃げて!」
って、彼女は言った。
直後に奴らが僕の背後に現れた。
僕は慌ててシールドを張り、
ミュレーナ姫に軽く手を振
ると、山岳地帯の方へ向か
って全速力で逃げ出した。
僕の飛行速度は音速を超えて
るんだ。
音速の壁を超える時は、いつも
体中に物凄い衝撃波を感じる。
僕には聞こえないけど、音速を
超える時の轟音も凄いらしい。
ミュレーナ姫には、僕が一瞬で
その場から消えたように見えた
んじゃないかな。
奴らも追っては来なかった。
僕みたいな不規則な飛び方だと、
予測が難しく、次元転移システム
を使っても、追跡は不可能らしい。
しかも僕のシールドは非物質だから、
あらゆる種類のレーダーを使っても、
補足出来ないってカミュが言ってた。
◇◇
王様のお城には十分くらいで
着いた。
二千キロを十分だから、
僕はマッハ十くらいで飛
んでたことになる。
本気で頑張れば、もっと
スピードは出せそうだ。
だって前に、大気圏を突き抜けそう
になった時は、スペースシャトルと
同じマッハ二十以上は出てたはずだ
から。
お城の前の空中で、どうしたものかと
考えてると、スーッと入り口の空間が
現れた。
向こうが先に気づいたみたい。
僕がお城に入ると、ミュエル王と
カミュが出迎えてくれた。
二人は凄く喜んでた。
「翔太、やっと来てくれたか!
会いたかったよ!」
と言って、王様は僕をハグして
くれた。
「翔太、僕らはこの一週間、訓練を
積みながらずっと君を待ってたんだ。
来てくれてありがとう!」
と言って、カミュも僕をハグした。
僕がまた消えるといけないから、
二人は急いでるみたいだった。
だから、僕も二人にこう聞いたんだ。
「王様、カミュ、僕も今回いつまで
ここに居られるか分からない。もし
準備OKなら、直ぐに姫を助けに行
きたいんだけど、大丈夫かな?」
「もちろんOKだ。君が来たら直ぐに
作戦を開始しようと思って、 僕らは
準備万端整えて待ってたんだ。君が
大丈夫ならいつでも出発できるよ!」
ってカミュが言ったから、僕たちは
直ぐに作戦を実行に移すことにした
んだ。




