カミュの話
スピィア星に戻ると、僕はまた
あの山岳地帯に行ってみた。
山間の広い雪渓に着くと、雪の上を
歩き回ったり、空中をグルグル旋回
したりしてみた。
しばらくすると予想通り、カミュの
乗った円盤が、次元転移システムで
突如、空中に現われた。
王様の宇宙船じゃなかったけど、
スピィア星の白くてカッコ良い
戦闘型円盤だった。
後部ハッチがスーッと開いたから、
僕は空中から円盤に乗り込んだんだ。
「翔太、やっと来てくれたか!」
カミュが操縦席を離れて僕に抱き
ついて来た。
彼と会うのは金曜日以来、
五日ぶりだった。
僕も嬉しくなって、カミュを強く
抱きしめた。
「遅くなってゴメン。僕、昨日は
バラムと戦って、ひどい目に合っ
たんだ」
「聞いたよ! 一人でバラムの船を
撃墜したらしいな。まったく凄い
ヤツだなあ君は。バラムに一矢報
いてくれてありがとう。王様も凄
く喜んでるよ。僕らは、姫の救出
作戦の後、散々だったからなあ」
そう言って、カミュはあの救出
作戦で、姫と僕が避難した後の
ことを話してくれたんだ。
「君と同じで奴は不死身だよ。
君がミュレーナ姫と避難した後
バラムは死に物狂いで反撃して
来た。奴は劇場の舞台下に大量
の武器を隠し持ってたんだ。奴
は電子マシンガンや量子ロケッ
トランチャーまで持ち出して、
攻撃して来た。僕たちも必死で
応戦したよ。ジューク塔の壁に
は穴が開くし、ヒューマノイド
兵にもかなり被害が出て大変だ
った。でも、僕らは奴をついに
塔の壁際まで追い詰めたんだ。
最後は電子バズーカ砲で奴を塔
の中腹から吹っ飛ばしてやった。
奴は千五百メートル下まで落ち
て行ったよ。だけど、奴の死体
はいくら探しても見つからなか
った。もしかすると、僕らは奴
の妖術に騙されていたのかもし
れない。その後、半日も経たな
いうちに奴は北極から本隊を呼
び寄せ、大挙してあの街を攻撃
して来たんだ」
そう言って、カミュは一息ついた。
「王様の命令で、僕たちは先ず
街の人たちを全員避難させた。
戦闘型円盤全機で応戦しながら
街の地下格納庫にあった輸送型
円盤など全てを使ってね。僕ら
の部隊は防戦一方だった。だか
ら王様は自分の船を出動させ、
自らバラムの本隊に戦いを挑ん
だんだ。僕たちは最初、かなり
巻き返したよ。王様の船に搭載
されている量子ビーム砲の破壊
力は凄まじいからね。奴らの部
隊の半数は撃墜した。だけど、
バラムは宇宙条約で禁止されて
いる暗黒エネルギー砲で反撃し
て来たんだ。翔太も昨日見ただ
ろう? 凄まじい破壊力だった。
王様の船が居たあの街の広場が
丸ごと消失したんだ。あの光線
は王様の船の特殊防御シールド
でも防ぎ切れなかった。もし、
次元転移システムの作動が一瞬
でも遅れていたら、今頃は王様
も姫もこの世に存在してないと
思うよ。僕たちは、撤退せざる
を得なかった」
そう言って、カミュは深い溜息
をついた。
「とにかくあの暗黒エネルギー
砲で攻撃して来られたら、僕ら
はなす術がない。最初このペジ
エ大陸が制圧された後、各大陸
でも急遽軍隊が組織されたんだ。
僕も今朝まで、各大陸の応援に
行ってた。我が軍は必死で戦っ
たよ。だけどルミエ大陸もムラ
ン大陸もやられた。そして昨日
ランス大陸とブロワ大陸もつい
に陥落してしまったんだ」
カミュは悔しそうだった。
「だから僕たちは今、地底都市
に身を潜めて作戦を練ってる。
あの地底都市のことは王家に伝
わる秘密で、バラムも知らない
からね」
そう言って、カミュは僕に
ウィンクしたんだ。




