第8話 ジブラルタル海峡解放作戦 其の弐
おりゃぁーーー!!
「これより、第二次ジブラルタル海峡解放作戦を開始する!作戦開始!」
「了解!!」
作戦としては、枝音と瑠璃奈が、SR―72―white customで超高高度からマッハ6で接近を試みる。
いわゆる、突撃だ。
敵要塞の対空機銃に関しては無視し、機体が爆発して使い物にならなくなるまで近づける所まで近づく。
そして、機体が使い物にならなくなれば、枝音と瑠璃奈がそれぞれ防御に専念しながら降下、あとは電撃的に敵基地主要地区を制圧していく。
たった二人で襲撃するのだから、正空戦もあまり関係ない。基地内に電撃的に侵入する。
「ねぇ瑠璃奈!?これ、ジェットコースターよりもスリル満点過ぎないいいいい!!!?」
そして、今は絶賛マッハ6で垂直に落ちて行っている所だ。
機内は無重力状態となっているが、それを楽しむ余裕なんてない。まぁ、こんな事を言えるのだから、結構余裕そうではある。
ちなみに、枝音の予想よりも敵機銃が思ったよりも当たらないので、このままだと地面に追突コースである。
まぁ、マッハ6で突っ込んでくる物体を狙いを定めて落とせるなら落としてみろという話なので、機銃があまり当たらないのは当然なのだが、枝音としてはもう少し機銃の雨が辛いものだと思っていた。
「とりあえず、敵の管制塔っぽい所にぶつけてやるわよ!適当なタイミングで飛び降りて!!」
「いいいぃいいいやぁぁぁああ!!!」
瑠璃奈と枝音が同時にコクピットの扉を蹴破って破壊し、外に飛び出る。
―――――――――夜花 ジブラルタル要塞
「何事ですか!?」
「敵の超音速・高高度戦略偵察機が突っ込んで来ました!損害は不明!管制塔からの応答がありません!」
「偵察機で突撃してきたんですか……?対空兵器を無視して……!?」
恐らく、遺物の再生能力や能力による防御で行けると踏んだのだろうが、遺物保有者にそんな使い方があるなんて思いも寄らなかった。
こんな無茶苦茶をするなんて枝音しかいないだろう。
「全く……無茶苦茶ですね。まるで閣下のような人だ。」
灰空はため息をついた後、部下達に命令を出す。
「程々に相手をしてやりましょうか。ある程度まで敵をここで引き止めてから、我々は撤退します。総員、戦闘準備!!」
「「「了解!!」」」
――――――――――ジブラルタル要塞上空。
「枝音!どんどん行くわよ!サポートは任せて!」
「りょーかいっ!ルークス!エネルギー貫通弾装填!」
瑠璃奈は炎弾を放ち、枝音はルークスとショットガンを両手に持ち、エネルギー弾を撃ちまくる。
と、そこで視界の端、右下の空間がぐにゃりと歪んだのがみえて距離を取る。
「それ以上壊されると困るので、反撃させてもらいますよっ!!」
何も無い空間から突然現れた灰空が、闇色の剣を振るい、枝音はそれに対してショットガンを上空に投げ、空いた左手で『天葵』を抜いて受け止める。だけでなく、灰空の剣をジリジリと少しつづ押し返していく。
「枝音!他の奴らは私に任せて、あんたはそいつを何とかしなさい!」
「りょーかいっ!!!」
さらに、枝音は翼の1つを形を腕に変えて、落ちてきたショットガンを受け止めて、防御ががら空きの灰空に向かってぶっ放す。
「……っ!?」
以前までとは全然違う枝音の力に驚きつつも、灰空は幻術を展開、横から枝音を切りつける。
が、枝音はそれを避けようともせずに、右腕で受け止める。
灰空はそのまま切り落とそうとするが……………枝音の目的に気づく。そして、気づいた時には、すでに遅かった。
灰空の足に鎖が巻きついていて、離れない。
「いくら幻術で姿を惑わしても、実態が消えるわけじゃない!!」
そう、いくら幻術で相手を惑わせても、実態がなくなる訳では無い。
だから、剣で攻撃すれば必ずそこにいる事がわかる。
「うりゃぁぁぁあ!!!」
鎖を引っ張って灰空を引き寄せ、首を左手で押さえつけながら猛スピードで地面へと落下していく。
ジャコッ!とショットガンを灰空の顔面に突きつけるが、灰空はバリアのような物をはって銃口を逸らそうとする。
グググ……!と小競り合いがしばらく続き、ドゴォッ!!と地面に激突すると共に思いっきりショットガンを押し込み、バリアを貫通する。
「アメアラレ、エネルギー拡散弾装填!喰らえやおらァ!!」
バゴッバゴッバゴッバゴッバゴォッ!!!!と5発、ほぼゼロ距離でエネルギー拡散弾を撃ち込む。
これで大人しくなるだろうと思ったが、煙の中から灰空の腕が伸びてきて、枝音を突き飛ばして少しだけ距離を取る。
灰空は、血塗れで、かつ傷だらけではあるものの、間近で攻撃を受けたにしてはダメージが少ない様子だ。
灰空は自分の足に巻きついている鎖を利用して、枝音を逆に振り回して体勢を崩させる。
そのまま、灰空が逆に枝音の上空をとって、ナイフを大量に投げる。
そのほとんど全てが枝音の眼前で爆発するが………。
「相変わらず、小細工が好きね!!」
2本だけ爆発しないナイフがあり、それらを指で掴み取って枝音は投げ返す。
灰空がそれを避けるが、枝音は翼の形を全て砲身のような物に変えており、その6つ全てが灰空に照準を合わせる。
「なっ!?そんな事もできるんですか!?」
「喰らえええぇええ!!」
灰空の左肩にビームが直撃し、体勢が崩れた所に鎖を思いっきり引っ張って引き寄せ、地面に押さえつける。
ガガガガガゴゴガガガッッッ!!!と、地面を削りながら灰空は脱出しようと躍起になり、枝音は無理やり押さえつけて灰空を引きずる。
そのまま建物の壁をぶち破り、粉塵を撒き散らしながら乱戦になる。
ぶち抜い壁、発砲した弾数、切り裂いた物の数、それらを数えている暇などなく、ただただ相手を沈黙させることを念頭に置いて、2人はぶつかり合う。
灰空が1番なんとかしたかったのは、今もなお自分の右足に巻きついている鎖だ。
これでは、幻術の効果が最大限に発揮できない。
いくら幻術で風景や自分の場所を誤魔化しても、鎖の感触、位置、その他もろもろで自分の居場所がバレる。
「剣はあまり得意では無いんですけどね……!」
「そう言わずに、とことん付き合いなさい!」
ガガガガッッツ!!!と何度も、何度も何度も剣を交えるが、やはり、純粋な剣技においては枝音の方に若干の分がある。
だが、灰空はその差を戦闘の経験の差でなんとか補い、渡り合う。
「まだまだ余裕そう、ねっ!!」
枝音は再び翼を形成し、それぞれを剣の形に変える。
そして、それぞれが別の生き物のようにうねうねと動きながら灰空に遅いかかる。
「ぐ、ま、ずっ!」
灰空がさらに増えた剣を幻術やフェイントを大量に入れてなんとか捌いていくが捌ききれなかった攻撃による傷がどんどん増えていく。
しかも、この6本の翼にだけ幻術やフェイントの効果がまるで見られない。
恐らく、天葵に制御を任しているのだろう。でなければ、あの数を制御しきれるはずがない。
だが、だとすれば、予想以上に厄介すぎる。
(閣下はこれ以上のものを彼女に望んでおられると言うんですか……!?だとすれば、それはもはや……っ!?)
粉塵に紛れて背後から襲いかかってきた、と思って剣を振るうが、そこに枝音の姿はない。
ただの壁が一面にあるだけだ。
(なっ、フェイク……?上か!?)
自分の頭上に気配を察知し、上空を見上げるが、そこにあったのは切り離された翼とエネルギーの塊のみ。
2重のフェイクか、と思った時には既に遅く、再び壁から気配を感じた瞬間、枝音が壁をぶち破って飛び出してくる。
灰空が苦し紛れに剣で薙ぎ払うが、容易に躱されて脇腹を切り裂かれる。
これが今の枝音の実力だ。遺物の力を100%引き出すだけでなく、応用すらきかせてくる。
決して傲慢になった訳では無いが、自分は夜花の主力の1人であり。その力量は九心王とやりやったとしても勝てはしないが負けもしない程だと思っている。
それと互角以上に渡り会う実力、だが、閣下はそれ以上のモノを枝音に望んでいたはずだ。
閣下が目指すものとは、いったい………!?
(帰ったら閣下に質問攻めですね)
と、そう考えた。
その時
周囲一体に、大きな揺れが起きた。
どうも、どこ黒ですー。8話ですー。
今回登場したSR―72―white custom とは、既に開発されていた超音速・高高度戦略偵察機を白華(瑠璃奈)がカスタマイズしたものです。
今回使用したものは、瑠璃奈がカスタマイズしたモノを天葵がさらに改造したものとなっており、速度と防御力を両立させたものとなっています。
さらに、枝音と瑠璃奈が2人で乗れるように複座式に改造しました。
武装は37mm機関砲改が2門と両翼ミサイル発射装置が2基取り付け可能だが、当然、速度は落ちる。そのため、今回は使われていない。
そして、そもそも本来の使用目的が偵察用なので戦闘には向かない。
説明は以上です。ではまた今度~。