第6話 回転して突進する妖怪のような珍兵器
――――――――白華
「さて、今後の作戦だが………。」
ジブラルタル要塞、セウタ要塞同時攻略作戦は失敗に終わった。
その原因は制空権の確保の失敗等が挙げられるが、最も大きな要因は、異物保有者で編成された部隊がいるのがジブラルタル側だけでは無かったということだ。
完全な誤算だったと、空墨は思った。
特殊能力者は通常の人間とは魂の構成が若干違うので、特殊な機器に反応を示す。
セウタ要塞側にはその反応が無かった、と報告されていたはずだった。
迂闊だったのだ。反応が無かったとはいえ、なぜジブラルタル側にいてセウタ側にいないと思ったのか。
………そもそも、本当に総司令はこの可能性を考えていなかったのか?
いや、その事について考えるのは後だ。
今は、目の前の問題を片付けなければ。
「正直いって、我々能力者部隊はセウタ要塞側に部隊を割くことはできない、というのが結論です。」
「増援は?」
「…………絶望的です。あちらの方が、むしろ増援を望んでいるぐらいでしょう。連絡によれば、甚大な被害を被っているようです。」
「戦力が足りないのはどこも同じ、か。」
「最悪、セウタ要塞側だけでも落とす。両方同時攻略が無理なら、片方だけに戦力を集中させるのもアリだ。」
「だが、それではあちらの能力者部隊もセウタ要塞側に集中するという事だろう?」
皆が頭を抱えて作戦案を考えているところに、枝音が手を挙げる。
「あの、ちょっといいですか?」
「ん、なんだい?」
「ジブラルタル側は、私ひとりでやります。」
その発言に、周囲のメンバーが驚きを露わにする。
「なっ!?本気で言っているのか!!?」
「もちろん、攻略後の制圧部隊は中隊〜大隊規模はいりますが、なんとかやって見せます。」
「だが…………!」
「良いのでは?」
イギリス軍側の司令官が、枝音の意見に肯定の意を示す。
「戦力をセウタ要塞側に集中させるとはいえ、戦線維持の為の部隊はここに置いていかなければならないし、敵は大尉の事を大きく買っているようだ。ジブラルタル側の能力者の足止めぐらいは、してくれるだろう。」
イギリス軍も、ある程度は白華や夜花の事に精通しているようだ。
ちなみに、今更だが枝音は大尉に昇進している。
「しかし………。」
バンッ!と扉を勢いよくあけて部下が入ってくる。
「大変です!!」
「何事だ!?」
「超巨大な未確認物体が、こちらに接近しているとの事です!」
「………何?」
―――――――――夜花
「……閣下が面白がって作っていたコレを、まさか使う時が来るとは思いもよりませんでした。」
建物を破壊し、押し潰しながら動いている超巨大な物体。
それは一見すると、車輪だ。
だが、その大きさは馬鹿みたいにでかい。
高さ約120メートルという馬鹿げた大きさだ。
……見た目としては、某英国の妖怪を魔改造しまくった何かだ。
「誘導の方はどうなっている!?」
「問題ありません!敵さんも、こいつを見たら驚き竦む事でしょう!」
「気を抜くなよ!制御出来ない事で有名な珍獣だ!!下手をすれば噛みつかれるぞ!!」
「違いない!!」
ハッハッハッハ!と笑いながら会話をする部下達と、横の動く珍兵器を見ながら灰空は、ここに閣下がいなくて良かったと思いつつもこれがやりたかっただけなんだろうなぁ……と、呆れる。
「よし!もうすぐ敵もこちらに来きます!総員、撤退準備を!」
「了解!」
―――――――――――白華
「…………敵は俺達をおちょくってるのか?」
「まぁ、それはまず間違いないだろうが……何にせよ、アレがここに突っ込んできたらこちらは壊滅だわな。」
「ミサイルによる破壊はどうなっている!?」
「どれも失敗しています!対空機銃がハリネズミのように搭載されていて……!」
「………遺物保有部隊に機銃を潰させろ!ヤツらの遠距離攻撃なら何とかできるはずだ!」
――――――
「敵の遺物保有部隊は確認されていない?」
「あぁ。まぁ、これは嫌がらせのような手だろう。こんな巨大な兵器を面白半分で開発して使い潰すのは夜花のよくやる事だよ。」
夜花がよくやる事、と言われると荒波や灰空などの常識人達が発狂しそうだが、だいたいの物は黒音(雅音)の発想の元に、頭のネジがいくつかトんでる人達がどんどんと魔改造を重ね、開発されるのが殆どだ。
大抵の物はピーキー過ぎて誰にも扱えず、小さなものは黒音の影、巨大なものであれば夜花の本部である空中要塞にぶら下げて保管されている。
「よくやる事……ねぇ。」
黒音に振り回される灰空などの常識人達の心情を察した枝音は、心の中で同情する。
ちなみに、超巨大移動物体は側面に大きな文字で『PJ-DR』と書かれているため、こちらもそう呼ぶことににした。
「一斉攻撃、準備!撃てぇえ!!」
遠距離攻撃の手段を持っているメンバーが、一斉に攻撃を放つ。
が、攻撃がとどいたのは枝音のものだけで、それすらあまり有効打は与えられていない。
空墨達の魔術攻撃は、全て敵にあたる直前に掻き消えた。
「魔術キャンセラー……!?それに、光学兵器拡散フィールドだって!?馬鹿な、アレは実用化には程遠かったはずだ!!」
が驚愕に喘いでいると、敵の中心にある丸い空洞部分がチカッと光る。そして、そのまま沢山の光の粒が空洞の中心に集まっておおきな光の球を形成していく。
「………空墨さん、アレ、絶対ヤバい奴ですよね………?」
「っ!?総員、回避!!」
カッ!!と一際大きくそれが光った瞬間、凄まじい光と熱と衝撃波が撒き散らされる。
何とか避けることに成功したが、その一筋の光が自分の真横を通り抜けて、遠くの地面に直撃する。
「くっ、私が何とかアレに取り付いて破壊する!!援護お願い!!」
「わかった。この中で1番機動力と火力があるのは君だ。くれぐれも、気をつけろよ!」
「了解ですっ!」
凄まじい数の機銃の雨が降り注ぐが、天葵による反射神経強化、動体視力強化、未来予測、移動速度加速、思考速度加速、などをフルに使ってなんとか避けながら近づく。
「喰らえええええ!!」
ドンッ、ドンッ、ドンッ!と3発、実弾を放つが、機銃の1つを破壊するだけに留まる。
エネルギー収縮弾などの光学兵器や魔術攻撃は効果がほとんどない、だが、実弾ではどうしても火力が不足する。
そうこうしているうちに、突然中央部の一部が開き、機械のようなものが展開され、その中から発射装置のようなもの………いや、紛れもない対能力者ミサイルの発射装置が展開され、枝音をロックオンする。
対能力者ミサイル、とは遺物などの特殊能力を持つ人間のエネルギー反応を捉えて、自動追尾するものだ。
普通の対空ミサイル等を多少改造するだけで済むので、量産は意外と容易だが、能力者ならば敵味方問わずに反応を感知して追いかけるので、戦場ではあまり使われる機会は少ない。
「…………っ!!?」
枝音をロックオンしたミサイルが発射され、自動追尾機能を発揮しながら枝音を追いかける。
「ぐううぅ!」
ロケットエンジンばりの出力で枝音は空を駆け、ミサイルを振り切ろうとする。
それでもなおミサイルは枝音をロックオンし続け、執拗に追いかけ回す。
まぁ、多少改造されているとはいえ、本来はAAM(空対空ミサイル)や戦闘機を撃墜するためのものなのだ。ちょっとやそっとの事では振り切ることは出来ない。
「執拗いっ!!」
枝音が急激にスピードを落とし上に避ける、すれ違いざまに冷凍弾頭を食らわせ、ミサイルを凍らせることで爆発を防ぐ。
「ハァ、ハァ………っ!?」
ガシャン、ガシャン、ガシャン…………と更に次々と発射装置で展開、合計16個のミサイルが枝音に照準を合わせる。
流石に、この数となると無傷とは行かない。
枝音はダメージを受けることを覚悟しながらも、『朝焼けの空』で防御体勢にはいる。
『朝焼けの空』は正面からの攻撃ならば必ずと言っていいほどどんな攻撃でも防げるが、側面や背後など、カバーしきれない箇所への攻撃は当然対処できない。
そして、ミサイルはそれが分かっているかのように、側面や後ろ側から回り込んで迫り来る。
選択をミスった、と枝音は思いながらそれでも、直撃するミサイルの数を減らそうと、ルークスをミサイルのひとつに向け、迎撃する。
3つほど撃ち落とせたが、他はもう間に合わない。
そう感じたその時、
どこからともなく飛来してきた別のミサイルが直撃し、枝音に直撃せんとしていたミサイルが迎撃される。
そして、それは一つだけにとどまらず、他のミサイルも全て撃ち落とされる………ばかりか、さらにどこからともなく飛来してきた弾丸が、敵の機銃や、防御装置を意に介さず、ミサイル発射装置も次々と破壊していく。
一体どこから………?と枝音は弾丸が飛来してきた方向を見る。
そこには居たのは、
「……………瑠、璃奈………?」
炎の翼を生やして空に浮かんでいる、背中や足、腕などに銃火器を大量に装備した、瑠璃奈だった。
その顔は以前とは違い、明るいものとなっている。
「ただいま。枝音。」
はい、おはよーからこんばんわー!えーっと……どこ黒です、はい。
自分のハンネが一瞬分からなくなる今日この頃ですが、6話です。
ちょいと、ネタっぽい感じになってしまってますが、瑠璃奈を登場させるにはここら辺かな、と思いいろいろぶっこみました。
まぁ、ストーリー的には瑠璃奈さん帰ってきたよ、程度の回なので、ええ。
んじゃま、また次の回で会いましょー




