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黒白の心。  作者: どこかの黒猫
第3章 白夜花散戦争
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第5話 原初の鬼。

雅音は、鬼化した水姫の力に感嘆していた。

水姫は、まるで別人のような強さを発揮し、雅音と互角とも言えるほどの戦いを繰り広げている。


「ははっ!それが原鬼姫(げんきき)の一角、水鬼姫の力か!この我とここまで渡り合えるとはな!」


原鬼姫、今の世に蔓延る鬼たちの頂点、そして、この世で1番初めに現れた原初の鬼である。


水鬼姫(すいきき)炎鬼姫(えんきき)雷鬼姫(らいきき)葉鬼姫(ようきき)土鬼姫(どきき)と言った、5つの鬼。

それぞれが名前の通り、炎や水などの能力に特化しており、凄まじい力を有する。

それは、鬼の中でも鬼神とよばれる者達を(相性にもよるが)一方的に嬲り殺せるほどだと言われている。

そして、今の鬼たちはこの原初の5匹の鬼から分岐したと言われている。


水姫は、書き換えられないように雅音の死角となるヶ所から水を遠隔操作して攻撃する。


「ははは、やるじゃあないか。じゃあ、こういうのはどうだ?」


水を蒸発させる勢いの炎を大量に生み出し、水姫に向かって放つ。そして、水姫が盾として作った水の壁にぶち当たり、水蒸気爆発が巻き起こる。

その爆発の威力を浴びてどうなったか様子を伺っていると、


「むっ?」


大量の水が雅音の周辺を囲む。

何が起きるのか、と雅音が警戒(きたい)していると、突如、その全ての水が大爆発を引き起こす。


どうやら、お返しとばかりに水蒸気爆発を起こしたようだ。

水ということに関してほぼ万能の力を持っている水姫だからこそできる芸当。

水の包囲網からなんとか切り抜けるが、ほぼ何の予備動作も無く雅音の付近で次々と小さな爆発が引き起こる。

なぜ爆発が起きるのか理解出来ずに困惑している所をついて、水姫が水でできた剣で攻撃を仕掛けてくる。

それに対処使用として大鎌を振り下ろそうとすると、右腕が爆発して吹き飛ばされる。

そこに来て、やっと雅音は爆発の原因に気づく。


「ぐっ、そうか、体に付着した少量の水分…………!」


水姫との戦闘でどうしても付着してしまう水分。それが爆発の原因となっている。

が、気づいたところで対処法は少ない。

確かに、雅音ならば自分の能力で体に付着した水分を書き換えて違うものに変える事が可能だが、能力のリソースがその分だけそちらに割かれる事になる。


「なかなか楽しませてくれる!やはり戦いとはこうでなくてはな!では、お返しだ!」


雅音が大量の水を書き換え、操作しながら水姫にぶつける。

凄まじい水圧で放たれた水が、水姫の肉体を破壊し尽くさんとばかりに襲いかかる。

直撃した瞬間、水は全て弾け飛び、ザァーっと周囲に降り注ぐ。

水姫は、傷一つないどころか濡れてすらいない。


「………ふむ。水を用いた攻撃に対する完璧な耐性、か?」


雅音は大鎌を構え直し、鎖を周囲に侍らせる。

そして、対峙する水姫は氷の剣を両手に構え、大量の水の柱を侍らせている。


ドガガガガガガッッ!!!っと2人は凄まじい応酬を繰り広げる。水姫が若干劣勢だが、雅音には時間制限がある。

永遠に続くかのような戦いは、だが、唐突に終わる。


「ぐっ、ごフッ」


雅音が血反吐をぶちまけ、攻撃が止まる。

その姿を水姫は息を荒くしながら見下ろす。


「はぁ、はぁ……これで終わり。私は足止めさえ出来ればそれでいい。すぐに親衛隊が援軍を率いてここにくる。」


白華親衛隊、白華の中で最上位に君臨する7人の精鋭達。

白華の主力は表向きは307特殊部隊とされているが、実はそうではない。


1人1人が九心王と互角に渡り合える力を有するとすら言われている程の実力者たちだ。

まぁ、九心王達の真価は戦闘能力ではなく、それぞれが持っている特権にあるのだが、それぞれが高位に属する戦闘能力を持っている事も確かだ。


それらと互角の実力を持つもの達が7人。


「あなたの能力の封印解除に時間制限とデメリットがある事はわかってる。」


そう、雅音の状態は、能力をフル稼働させて1時間、セーブして使っても2時間ちょっと、というのが今の現状だ。

そして、タイムリミットが過ぎると、反動として1時間は再生能力以外の全能力の使用が不可能となる。

唯一残る再生能力ですらも普段のような超再生ではなく、血管や内蔵を少しだけ修復する、と言ったような微々たるものだ。


雅音が能力を使用してからもう50分近くが経過している。


「だが、それはここに来れたらの話だよな?」


未だ余裕のある雰囲気を醸し出している雅音を見て、水姫は怪訝な表情になる。


「……一体何を………?」


「すぐに分かるさ。すぐにな。」



――――――――――クリミア半島沿岸


「充填率30%、核融合炉4基ともに安定してます。」


「出力をもっと上げろ!悠長にエネルギーが貯まるのを待っている暇はないんだ!多少は無茶しとけ!」


「重力誤差修正ブログラム、狙撃補正演算機器、どれも正常に稼働しています。」


「エネルギー充填率、45%、まだ少し遅いですね。」


部下からの報告を聞き、モニターに映る雷狐に向かって荒波は指示を出す。

雷狐は片手で陽電子砲のエネルギー伝達制御装置を弄りながらもう片方の手でスマホを弄っている。


「雷狐、エネルギー効率をもっと上げろ。」


「わぁってるっつーの!これでも頑張ってんの!」


「じゃあ、まずはその手に持ってるスマホをしまえ!真面目にやれ!真面目に!!」


「あぁん!?おっま、周回の方が大事じゃボケェ!」


「……………お前のスマホ、今すぐ破壊するぞ。」


殺意を全開にした荒波がそう言うと、前にも1度携帯を破壊されたことのある雷狐は、焦ったようにスマホをポケットに片付けて作業に集中する。


「エネルギー充填率、60%!」


「よし、そのまま継続しろ!最悪、一基くらいは潰してしまっても構わん。」


部下達が忙しそうに動き、次々と上がってくる報告を聞きながら指示をだす。


「それにしても、閣下も無茶なものを考える………。」


荒波はため息を吐きながら、モニターに映る超巨大な陽電子砲を見る。


今、彼らが行っているのは、核融合炉を4基使用し、さらに雷狐が各エネルギー・電力を制御することで莫大な威力と射程を持った陽電子砲によるボスポラス海峡沿岸要塞の狙撃である。

これによって敵要塞にいる戦力を殲滅するのと、敵の援軍を足止めする。


あわよくば敵の増援もこれで殺られてくれれば助かるが、そう上手くは行かないだろう。なにせ、白華の頂点に並ぶと言われているのだ、この程度で死んでしまっては拍子抜けだろう。


だが、海を切り裂いて、突然莫大なエネルギーの塊が知覚範囲外から襲いかかって来るのだ、自分の身くらいは守れても、それ以外に対応のしようがあるまい。


つまり、足は止まる。

そして、その間に雅音は能力による体力の大幅な減少や、1時間は再生能力以外の全能力が使用出来なくなるというデメリットを、その間に回復する。


「エネルギー充填率、80%を超えました!」


「了解。エネルギー伝達回路、陽電子砲に接続開始。」


「安全装置を解除しろ。」


「了解!安全装置、解除します。」「エネルギー充填率は90%、カウントダウン開始します。」「核融合炉、出力限界!」「陽電子砲銃身固定完了。」「最終確認完了、オールクリア。」「エネルギー充填率98%!」


「3」


「2」


「1!!」


「よし、撃てぇぇ!!」



―――――――――――ボスポラス海峡沿岸要塞。



「……!高エネルギー反応!!これは………!!」


「なんだと!?何が起き――――――――――



全てを飲み込み、消し去る光。


建物が、人が、武器が、何もかもがその光に飲み込まれ、消えていく。





―――――――――――――




その攻撃による凄まじい衝撃は、数十㎞以上離れているこちらまで轟くほどだった。

カタカタカタ……と地面は揺れ、遠くの方では太陽がもうひとつあるのではないか?と思うほどの光が生まれている。


「いったい何が………!」


『ザ……、ザザ……ザ、水姫大佐、今すぐこちらに戻れ!』


「………何が……!?」


『ボスポラス海峡沿岸要塞が消滅した!詳細は追って伝える!ただちに撤退せよ!』


通話の奥からさらに怒号がかわせられ、通信がブツっと切れる。

水姫が呆然としていると、袖で血を拭いながら雅音がニヤリと笑う。


「な?わかっただろ?」


「………貴様……!!」


「まぁ、今回は痛み分けだ。ここらでお互いに引こうじゃないか。」


ピリピリとした状態がしばらく続く。

水姫は雅音を睨み続け、雅音は余裕の表情で水姫を見返す。


「隊長……。」


「………撤退。」


感情の起伏が乏しい水姫にしては珍しく、怒りと悔しさを露わにしながら言う。


「総員、作戦中止!!撤退……!!」



こうして、第1次黒音討伐作戦は失敗に終わったのだった――――――



ちちちちちーっす!どこ黒でぇす!


最近、灰空と空墨の名前を間違える事が多発してて困ってます。

どうにかならないっすかねぇ………。




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