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(2)

「しゅんすけ、どうなったの?」


 翌日学校に来ると、僕はけんたに尋ねた。


「いや、それがさ……」


 すると、けんはその表情を複雑そうに歪めた。


「来なかったんだよ」

「え? どういう事?」

「二号公園ににって約束したのにさ。あいつ、約束やぶるような奴じゃないしさ。不思議だなって思いながら、結局そのまま帰ったんだ。でも俺気になってさ、あいつの家に電話したんだ。そしたら……」

「そしたら?」


 なんだか、すごく嫌な感じがした。良くない事が、けんたの口から告げられる。間違いなく。


「あいつの母さんが出て、『え、一緒に遊んでるんじゃないの? ちょっと前に公園に行くって言って出て行ったわよ』って」

「え、でも……」

「そうなんだよな……」


 しゅんすけは来ていない。


「あいつ、ちゃんと家帰ったのかな」


 チャイムが鳴った。大きなしこりが残ったまま、僕達は席に着いた。

 しゅんすけはどこに行ったのか。

 しかも二号公園。それは僕がいた公園の方だ。

 しゅんすけはどこに行ったのか。

 

 その答えはすぐに分かった。

 容赦なく残酷に踏み潰される形で。


「しゅんすけが、亡くなったそうだ」


 先生の口から、しゅんすけの死が告げられた。

 僕は後ろの方に席に座っているけんたの方を振り向いた。

 けんたの視線は、どこも見ていなかった。




 これだけでも十分すぎる悲劇だった。級友の死というこれ以上ない悲劇。

 でもそれだけでは、しゅんすけの死は終わらなかった。


「どういう事だよ」


 けんたも、当日けんた達と一緒にいた友達も、そしてその場にいなかった僕も、けんたの言葉通りの感想だった。

 どういう事だろう。


「なんで……しゅんすけがあそこに……」


 しゅんすけが死んだ数日後、しゅんすけが見つかった。

 しゅんすけは、二号公園の落とし穴から見つかった。けんた達が掘った穴だそうだ。

 冷たくなって白くなって、まるでお母さんのお腹の中にいるかのようにちぢこまりながら死んでいたそうだ。

 僕はまだその場にいなかった。しかし実際落とし穴を掘ったけんた達はより奇妙で不可解だろう。落とそうと思ったしゅんすけは当日現れなかった。なのにしゅんすけはその中にいた。死体となって。


「殺人事件じゃないかって。そう言ってた」


 現実的に考えればそうなるだろう。

 警察からけんた達は色々聞かれて、怖さや不安を感じながらも正直に答えた。

 おそらく家を出て間もなく、しゅんすけは何者かに連れ去られた。そして、どこかで殺された。しゅんすけの死体の処理に困った犯人が、たまたま見つけた落とし穴にしゅんすけを埋めた。警察はそう考えているらしい。


「俺達、犯人の手助けしちゃったのかよ」


 けんたの横にいたみねがせわしなく顔を手でなでる。その度にかけた眼鏡に手が当たり、ぐんとずれた眼鏡をかけ直す。


「おい、みねそれやめろって!」


 案の定みねがけんたに怒られる。みねのこの癖は自分の身によくない事が起きていると必ず始まる。それが今起きている事が本当によくない事であるという事を際立たせ、周りを更に不安にさせいらつかせる。


「だって……」


 気持ちは分かる。本人達の意思とは無関係に犯人に手を貸してしまったのかもしれない。

 みねは泣いていた。他の皆も涙まで流さずとも、涙目になっている。その中にいてけんただけはしっかりしているように見えたが、それでも視線は泳ぎ気味で普段のがんとした態度はなく、落ち着きがない。


 しゅんすけが死んだ。

 けんた達の落とし穴で眠るように。

 あまりに唐突な悲劇は、僕らの胸にこびりついて剝がれなかった。


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