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飛光少年A(17)  作者: つなかん
独り虫の興奮性蛾
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1997年 誘蛾灯(1)

 正式な改名の手続きで転校が遅れ、十月になって初めて、ぼくは自由になった。考えてみれば、二年以上もあそこにいたのだ。

 父さんと二人で暮らすことになったが、相変わらず仕事が忙しく、家にいない。

 1997年。もうすぐ人類は終わるのに、試験勉強なんて意味がない。二年後にはもう人類は滅んでいるらしいのに、学校という場所は、やはり変わらない。

 ピッチ、とかいうものが出回っていたり、探偵!ナイトスクープがやってなかったりというカルチャーショックを受けながらも、ぼくは新しい中学校に慣れようと必死だった。

「えーと、木島透です。埼玉から来ました。卓球とか好きです。よろしくお願いします」

 凄く緊張する。転校生になったことなんて今まで一度もなかったので、僕は酷く混乱していた。鞄を持つ手がジワリと熱くなるのは、九月に残る残暑の所為だと思い込む。

「えーと、木島透です。埼玉から来ました。卓球とか好きです。よろしくお願いします」

 凄く緊張する。転校生になったことなんて今まで一度もなかったのもあって、僕は酷く混乱していた。鞄を持つ手がジワリと熱くなるのは、九月に残る残暑の所為だと思い込む。

 人当たりの良い顔をつくって教室を見渡すと、空いている席が二つほどあった。一つは隅のロッカーの前、もう一つはその隣だ。

「じゃあ、あの空いてる席で」

 温厚そうな容姿をした教師は、ロッカーの前の席を指差した。僕はずっしりと重い鞄を強く掴み、できるだけ早足で机を目指す。クラス全員に見られているような被害者意識を頭から払拭し、なんとか席につくことができた。

 担任の教師が何かしゃべっているのが聞こえたが、内容は頭に残らない。椅子に座っているというのに、ふわふわと浮いている気分に頭が痛くなる。

 たしか一限目は数学だ。とにかくイジメられないように頑張らないと。

 隣の空席を気にしながら鞄から教科書を取り出すと、丁度チャイムが鳴って担任が教室を出ていった。静けさを保っていた空間が嘘のように騒音を纏った。

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